「絶対に回れません。
取材日をもう1日増やしましょう」
「あのさ、回れるかどうかの判断を聞いてんじゃなくて、
1日で回る事を前提にスケジュール調整して、って言ってるんだよ?」
「無理ですよ」
「無理じゃないよ。
大丈夫だから、とにかく調整してくれ」
「物理的に・・・」
「心配しなくていいから」
1日で8個所、それも川崎から小田原へ・・と移動もあって、
さすがの私もそれだけ数多い取材先を1日で回る事は初めてだった。
が、過去、似たような取材は山ほどやってきた。
と言うか、短時間に集中して取材する事は、どっちかと言えば得意な方なのだ。
勿論、移動距離という問題と、取材先のスケジュールに問題があって、
恐ろしい勢いで取材対象まで限定しないと無理な事はわかっている。
だがそれも、どうにかする・・という意志を持って、割り切って頑張れば、
どうにかなる計算は立っていた。
1個所30分の所要時間を設定し、取材対象も限定して現場に行くと、
何故か魅力的な物が山ほど待っていたりする。
で、それを可能な限り取材しつつ、タイムスケジュールに則って、
使わない物を切り捨てていくと・・・・
これがまさに不可能を可能にするパワーとなって、アシスタントが無理だと言った
スケジュール通りに取材は進行した。
これだけそつなく取材が進んだのは、アシスタントが考え抜いて立てたスケジュールが
実に巧妙にセッティングされていたおかげではある。
が、一発どこかでトラぶったり、道が渋滞したらそれでアウト・・・・
な事もまた、事実だった。
「ありがとう、無事、予定通り取材できたよ」
「マジですか?
最初から徐々に押すと思ってたんですけど・・・」
「わかってないなぁ」
「何がですか?」
「俺って諦めが早いんだよ」
「うっそ・・・」
取材は緻密にしつこく、しかも対象の本性を引きずり出す事がコツなのだが、
時間が無い時は、事前に調べこんでおいて、現場では必要な物以外捨てるのもまた、コツなのだ。
そして、不可能だ・・と言われると俄然力が出る私にとっては、
「どうだ!」と言える結果を導き出す事が、快感にも繋がってしまう。
ただ1つ、アシスタントが言った通りの現実は起きてしまった。
そう・・・
食事をとる時間が一切無かったのだ。
ごめんよ、スタッフの皆さん。
これだけは私の本意じゃない。
メシも食わないで外仕事をするのは、
絶対したくない人なんだ・・・とわかって欲しい。
ほんと、
絶対・・という言葉は存在しないもんだねぇ(・_・、)
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