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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

マナー

昼下がり、二人の男が蕎麦屋に居た。

年の頃は70位。

銀色の髪はオールバックになでつけられ、
渋いアロハを羽織っている。

腕にはロレックスのデイトナ。

もう一人の男も
大きめの翡翠の数珠を腕に巻いている。

私はその横の席に1人で陣取った。


「お久しぶり。
  最近来ないわねぇ。
  外国でも行ってた?」

「忙しいだけだよ」

「そう。
  どうしたかねぇ・・・って心配してたのよ。」


馴染みの店員が満面の笑顔で、ビールを持ってきた。

飲むって言ってないじゃん・・・
と思いつつ、この店では必ずビールを飲んでいる自分なので、
それもまた良し・・とする(^_^;)

板わさをツマミにビールを楽しんでいると、
彼らの視線に気が付いた。

その目の険しさが、
「いい若いモンが昼間から」と語っている。


そうだね。
確かにそう見えるわな。

でも俺は、
今日は休み(夜中に取材があるが(^_^;))なんだ!

そしてこの店は、
俺にとってビールを飲む店なんだよ!

という目線をさりげなく返してみると・・・

二人申し合わせたかのようにタバコを取り出し、
火をつけた。


紫煙が目の前を横切る。
ビールを煽る手が、一瞬止まる。

運悪く、エアコンの風下に座っていたようだ。


「おぅ、今どこだぁ?
  神田??
  こっちは今横浜なんだよぉ。
  ちょっとすぐには行けねぇなぁ」


チャラチャラした着信音の携帯で、突然喋り出した男。
そのちょっと下卑た会話は、狭い店内に響き渡る。

もう1人の男は、少しだらしなくふんぞり返ると、
勢いよくタバコをふかしてみせた。


何故だか、格好良く見えない。

年齢にしてはお洒落だ・・と思ったが、
小さな蕎麦屋で偉そうにする彼らは、ある意味下衆に見えた。

しかし・・・
蕎麦を食う前によくタバコを吸う気になるな・・(^_^;)

口の中が気持ち悪くならないんだろうか・・・

と、そこに彼らがオーダーした「鴨せいろ」が到着する。
熱汁の中に焼いた鴨とネギが浮いた、この店自慢の一品だ。

吸いかけのタバコを灰皿で消し、そのまま彼らは蕎麦を啜りだす。
(さすがに吸いながら蕎麦を啜る事はしないらしい)

これでコッチも落ち着いて蕎麦を楽しめる・・・と思いながらビールを飲んでいると、
こちらがオーダーした「おおもり」がやってきた。

町の蕎麦屋でありながら、電動の石臼で蕎麦粉を挽いて打つこの店の蕎麦は、
下手な高級っぽい蕎麦屋など足下にも及ばないほど美味しいのだ。
(しかも安い・・ときた(^_^;))


これこれ。
この蕎麦が食いたかったんだよね(^_^)

汁を半分位つけて啜り込むと、蕎麦の香りが心地よいのだ。


うん!?
え??

なんだよ・・・、もう食っちゃったのかよ(-_-メ)

困った二人組は、またもやタバコに火を点けて、
狭い店内でぷかぷかと始める。

勿論この店は禁煙じゃない。
だから、文句を言う筋合いでもない。

だけど、蕎麦は啜って食べる物だから、
タバコ好きの人達もそれなりに遠慮する。

事実20人も入ったらキツキツのこの店では、
彼ら以外にタバコを吸っている人は居なかったのだ。


食後の一服は美味いよねぇ・・・・

だけど、風下の私は二人分の煙を
モロに喰らうんですけどねぇ(▼▼メ)

仕方なしに、蕎麦は啜らずに箸で口に押し込むようにした。


電話ばかりしていた方が、突然席を立つ。
と、もう一人の男は、吸いかけのタバコを灰皿に押しつけた。

あわてて出るかの如く、彼らが店から消えた後には、
消えていないタバコから紫煙が立ち上っている。

気分悪いから消そうか・・とも思ったが、
手がタバコ臭くなったらもっと嫌なので躊躇していたら、
店員がすっとその灰皿を片付けた。

店内には少しだけ安堵の空気が流れ、
今まで黙っていた人達が会話を始める。


タバコが嫌いなワケじゃない。
嫌いなのは、タバコ吸う人達のマナーの悪さだ。

自分以外の人が居ても平気でタバコに火を点ける、
その場所が喫煙できるかどうかを確認しない、
吸い殻を所構わず投げ捨てる、
文句を言えば「うるせぇよ」とばかりに威嚇する・・・・。

日本は確かに喫煙天国で、タバコの価格も安い国だ。

上位からのご褒美にタバコが出される歴史(恩賜の煙草、等)もあって、
ひょっとしたら、タバコに対する嫌悪感は凄く薄いのかも知れない。

でも、世の中は禁煙社会にシフトしている。
健康増進法という法律までできて、公共の場では吸えない事になっている。

吸わない人にとっては「暴力」にしかならない物を楽しんでいる・・・という自覚があって、
喫煙者が気をつかう事が当たり前の社会であったらどうだろう。

法律で規制する・・・なんて事が必要なかったように感じるのは、私だけだろうか?

 
 
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