「ねぇ、本当にそんな店があるわけ?」
「そう思うよねぇ。
去年来た時に、俺もそう思った。」
「どう見ても、ありがちな・・・」
「いいから、慌てないで待とうよ。
店の中に入ったら、『ここはどこ?』って思うから」
群馬伊勢崎市昭和町に、私達は居た。
そう、単に兄弟と酒を飲むだけのために、
仕事が終わった途端に横浜を飛び出し、
まだ陽の有るうちにここに着いていたのだ。
「まずは店が開くまでの間、ビールでも飲んでようよ」
「いいねぇ」
新幹線の中から缶ビールを飲んでいたのだが、
暑さのために酔うヒマも無いらしい。
ホテルのレストランへ飛び込み、ウェイターに「生!」叫ぶ。
そう、ドリンクマラソンは既に始まっているのだ(^_^;)
小振りのジョッキに注がれたビールは、気持ち良いペースで無くなっていく。
廻りの風景を気にしていた友人も、夕闇と酔いによって不安を取り除かれたか、
気持ちよさだけを確認するように馴染んでいく。
「久しぶりです」
「お〜(^_^)」
兄弟の人なつこい笑顔が、横浜との距離や離れていた時間を埋めてくれる。
そしてここに、単なるモルト馬鹿トリオが出来上がった。
ANAGURA
0270-22-2378
群馬県伊勢崎市昭和町49-1 今村ビル内
「え・・・・?」
「な?
いいだろう??」
「本当、ちょっと想像できないほど、
カッコイイ店だね」
「ここで飲んでると、場所を忘れるよ」
「ここまでとは思わなかったよ」
そう、私も初めて来た時には、そう思った。
東京と言うよりは、どこか横浜っぽい感じがある店の造りは、
2回目だと言う事すら意識させてくれそうにない。
この居心地の良さを知ってしまったから、
懲りもせずにここまで来たのだ・・・・・
「どうも(^_^)」
「あれ、少し痩せました?」
「いいえ・・・
どっちかと言うと太ったような・・・・(^_^;)」
「相変わらず飲まれているようですね?」
「最近は忙しくて、そんなに飲んで無いですよ」
「1968マッカランを買われた・・とか?」(しっかり読まれてる>モルト馬鹿)
「えぇ(^_^)
しかしモルト増えましたねぇ・・・
レアモルトシリーズなんて何処で手に入れました?」
「仕入れたはいいけど、あまり売れないで残っている店を知っていまして」
「有るところには・・有るんだねぇ」
UD社のレアモルトシリーズは、高価だが上質でレアなモルトをリリースする
プロが好むラインなのだが、最近はあまり見る事ができなくなりつつあるので、
そのボトルを見るだけで嬉しくなってしまうのは仕方ない。
ミルバーン25年1975 61.9%
グレンユーリー・ロイヤル29年1970 57.0%
どっちも、ある意味幻に近い酒ではある。
普段だと気軽にオーダーするのは難しいプライスだから・・・
と遠慮するボトルであったりするが、一期一会のオールドモルトだ。
飲まないワケにはいかない・・・(^_^;)
ストレート用に用意されたグラスは、
ウィスキー専用のテイスティンググラス。
足が短いチューリップ型のグラスで、
香りを味わうには申し分が無い。
スキャパやストラスミルなどレアなオールドモルトを
兄弟から盗み飲みしつつ、じっくり70年代モルトを味わっていく。
60%を超えるウィスキーなのにとげとげしいアタックは殆ど無く、
麦のやさしい香りと甘さに加えて独特の酸味が乗った味わいが、
気持ちよさと安らぎを同時に感じさせるように限りなく開いていくようだ。
ミルバーンの優しさに比べるとスパイシーなグレンユーリー・ロイヤルは、
香りの中にシガーような顔色を見せながらも、味わいはスコッチらしい切れを感じさせた。
「美味すぎる・・・」
と思わず呟いてしまうのは、最近飲む酒とは明らかに違う感触があるからだろう。
とにかく、形容する言葉を失う位に気持ち良いのだ。
つまみにハギスが用意されるなど、フードも揃っている。
美味い酒を出す店は美味いフードを出す・・・という法則は、
ここにも生きていたらしい。
インバーリーブン26年1977 57.0%
グレンアルビン1965 53.7%
そして横浜から土産として持ち込んだゴッセのマールを飲みながら・・・
距離や時間を超えるつき合いは難しいと思っていたが、
こうやって飲んで語らっていると、「あり」だな・・・と思える。
そしてそんなつき合いができる仲間が多くいる事で、
日々の厳しい状況を笑い飛ばしていられのだろう。
さて・・・
次は何処に行こう?・・・かな(/--)/
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