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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

飲み過ぎ

「あまり期待されると困るんだけど、リーズナブルな寿司屋があるんで行かない?」

「いいよん、回転じゃなければ。」

「回転を馬鹿にしてはいけませんなぁ」

「馬鹿にしてないけど、なんか飼育されてるような気分になるんで、嫌いなのさ」

「大丈夫、回転じゃないよ」


久々に来週に余裕ができたので、友人の誘いにのって寿司屋へ突入した。


「あまり期待しないでね」

「そんなに不味いんかい?」

「そうじゃないけど」

「俺はコストパフォーマンスの人だから、コンビニの寿司でも喜んで食べるんだぜ」

「知ってるから連れてきた。
  絶対安いから文句でないって・・・な」

「・・・・なるほど」


店はカウンターとテーブル席に加えて小上がりもあって、
30人位は余裕で入れそうな感じがあるが、寿司屋と言うよりは居酒屋に近く、
客は家族連れからサラリーマンまで、とにかく寿司屋で飲むんだ・・・という気分に溢れていた。

寿司屋へ行ったらカウンターという私は、有無を言わさずカウンターに座ったが、
この店のカウンターは板前が普通より高い位置に立っているように感じる。

違和感を覚えつつも、初めての店なので、まずは探り合い・・かな・・と構えてみ


「最初に刺身盛り合わせでも頼んで飲みますか」

「そうだねぇ」

「どうなの?」(寿司屋の刺身盛り合わせって、高いぜ?と目線をむけると)

「まぁまぁさ。
  3人でつまむにはちょうど良いかも」


とメニューを見せられる。


「え?
  2人前で1500円?」

「だから安いって言ったじゃん」

「この店は中トロが美味しいんだよ」

「ごめん、今日は中トロなくてコレになっちゃうんだ」


会話に割り込んできた板前は、自慢げにトロのサクを見せてくれた。


「凄い・・・」と思わず声が出るほどの脂。
腹の方の脂が多い大トロが、さぁ食ってくれ!という輝きで微笑んだ。


生ビールと刺身で会話を楽しみつつ、壁に貼ってあるお品書きを見ると、
「大ぼたん海老」とか「活鯛」とか気になるネタが目についてしまう。

刺身は値段なりの味だったので、気になる大トロをまずは1カン食べてみた。

あれ?・・・
見た目ほど脂っこくない。
で、美味い(^_^)


「まぁまぁっしょ」

「うん。
  美味い」


シャリは酢がきつめで大きい方。
その握り方で、この店がたくさん食べてもらう事を
大事にしているのがわかった。


「すいません、1カンずつもらっていいですか?」

「はい、どうぞ。
  何にします?」

「ぼたん海老と、こはだ」

「え・・・」


え?じゃないだろ??
江戸前の基本、「こはだ」を食わしてくれ!


「ごめんなさい、今日、コハダが終わっちゃって」

「そうですか・・・じゃ、アジを」


そんなに遅い時間じゃないのに、コハダが無いなんて・・・と思いつつ、
光り物で無難なアジを頼んでみたのだが、海老より先にそのアジが出てきた。

いつも通り、出たらすっと掴んでするっと食べる。

それが握りの一番美味い食べ方だって自分では思ってるし、
板前にしても出したらすぐ食べる客の方に気を遣わざるを得ないから、
結局美味しい寿司を食べるコツみたいなものだと、思ってもいる。

アサツキを散らして煮切りを塗ったアジはそれなりの仕事が見える寿司で、
料金が安めの寿司屋にしては頑張っている事がよくわかった。

ボタン海老は、大というわりには小振りだったが、
まぁまぁ許せる味で思わず「美味い」とつぶやいてしまう。


「次はどうしましょう?」

「カレイはありますか?」

「え・・と、ごめんなさい、ヒラメになっちゃう」

「じゃぁヒラメと・・・サヨリはありますか?」

「サヨリも・・・・ちょっと」

「じゃぁ、白身繋がりで鯛を」


意地悪するつもりじゃなくてカウンターに座ったら、
この時期有りそうな魚を頼むのは当たり前の事。

運悪く座った席の冷蔵ケースには高そうなネタが並んでなかったので、
今日食べたい物を思いつくままに頼んだのだが・・・

ふっと見ると、板前の顔つきが変わっているのに気がついた。


「ヒラメです。
  塩とレモンかけてあるんで、そのまま食べてください」


出されたヒラメは小振りなシャリの上に、綺麗にのっていた。
どうやら、探り合いが始まったらしい(^_^;)


「美味そうだな、俺もそれちょうだい」

「はいよ」


寿司屋はこうでなくっちゃいけない。
カウンターを挟んでやりとりがあって、美味しくなるわけで・・・

大振りだったシャリは高級店のようなサイズに替わり、
握りもかっちりとした上質な物になっていく。

どうやら板前魂に火をつけてしまったらしい(^_^;)


「ここ、こんなに美味かったかなぁ・・」

「美味しいじゃん」

「浦霞もう一本ね」


居酒屋のような商売で頑張ってても、ちゃんとした寿司が握れるから
客が一杯になっているんだ・・・と理解しつつ、一通り食べた後、最後の試練を与えてみた。


「すいません、そろそろお腹いっぱいなので、
  最後にコレは食べてくれってネタを、お願いします」

「え・・・と、イワシは食べられます?」

「もちろん」

「じゃ、握ります」


今やイワシは高級魚。
それでも最後のネタに持ってくるのは・・・?

と考えているうちに、脂がのったイワシが出てきた。


「美味い」


マジに今日一番の美味さ。
これだから寿司屋のカウンターは面白い。


「さぁ・・て、酒もしっかり飲んだし、
  次はマニアックな酒がある店に行くぞ!」


え、皆様、まだ飲むんですか??

 
 
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