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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

ムーヴ

車いすのメーカーに話を聞いた。

特殊な形状のアルミパイプ、と言うより2本のパイプを繋げて1本にしてしまったような
ちょっと見ると厚い板にも見えるようなフレームを持ち、圧力を分散するメッシュシートでできた座席があり、
なによりもカッコイイ。

http://www.move-inc.jp/

代表の廣川氏は「尊厳を乗せるイスとしてこの車いすを開発した」と言っていたが、
座ってみて驚いたのは、恐ろしく快適で、軽く動く事。

空気圧が5キロも入った車輪のせいなのか、重心に近い位置に車軸があるせいなのか、
車体が軽いせいなのかわからないが、とにかく軽く動くのだ。

だが、タイヤの空気圧が5キロ・・と告げられても、最初は信じられなかった。

と言うのは、座った瞬間、なんか沈み込むような柔らかい感じがしたからで、
ちょっと空気が抜け気味の車輪を装備する普通の車いすをイメージしてもらえば、
私の感じた感触が想像できるだろう。

そう感じたのにはワケがある。

実はこの車いす、4輪にサスペンションが組まれていた。
そして座面も、適度な反発力を持ってサポートしているから、そう錯覚してしまったワケだ。


「何故、車いすを作ろうと思ったのですか?」

「何故だろう・・・・。
  多分、何かの時に車イスを見て、
  人間の座るものじゃないって思ったから・・だと思う。」

「もともとはデザイナーですよね?」

「色々な物をデザインしたけど、自分の中に車いすが残っていて、
  どうしてもかっこよくて機能が素晴らしくて、誰もが振り返るような・・・
  そんな車いすを作ってみたかったんだ。」


廣川氏はそう言って笑った。


私はある時、車いすを作る仕事をしてみたい・・と思った事がある。

それは、友人の車いすを押している時、漠然と感じた事だったのだが、
もうちょっと座る事が楽しい、機能性に富んだ物が作れるという実感があったからだ。

「平らな面を持つフレームには、好きなステッカーを貼ってみたい」と言いながら笑う廣川氏を見て、
人間が求める様々な望みを具現化する力を彼に感じながらも、どこかで「やられた」と思った。

格好良くて機能性が高くて、誰かに見せびらかしたい=積極的に乗って出たい、そんな車いすが
まさしく目の前に実際の形になって有ったからだ。


最近の世の中は、優しさに欠けている。

弱者を見捨てるような法案が通ろうとしたり、
当事者の心情を想像できない動きが見えたりする。

だが、
「人間が乗る」という当たり前な事実を形にした車いすは、
そんな優しさを忘れた人間達を差別する事は、無い。

 
 
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