江戸前の歴史を残すと言われる紀文寿司に年末行ってきた。
「紀文寿司」
東京都台東区浅草1−17−10
03−3841−0984
水曜定休
営業時間(平日)12時〜14時 17時〜21時
(休日)12時〜19時半
浅草は年の瀬もあって,牛肉を買い求める列があったりと
普段の観光地とは違う空気も持っていたが,その分普通に食事を
するには都合が良い感じもする。
予約を取ったのは17時半。
寿司を食うには少し早い時刻にも感じたが,
飲むのは神谷バーで電気ブランと考えていたから,
まぁそんな感じで良い・・・と。
創業明治36年と言われるこの店,
店構えは確かにそんな趣を持っている。
暖簾をくぐって店に入ると,白髪の主人と短髪の若い板前が,
カウンターの中で会釈した。
想像以上に広い店内。
コの字型のカウンターの内部はかなり広い調理場。
中央には蛇口が3つ(水道水・温水・井戸水だとか)付いた流しがあり,
店の奥にはテーブル席が並ぶ一角もあった。
「お飲物は・・・」
と蚊の泣くような声で注文を聞く主人。
最初のイメージとしては,線の細い感じを見せながらも,歴史が刻み込まれた風貌と
実力に裏付けられた堂々とした立ち方で,ある意味強面だな・・と感じていたのだが。
店内には3人組の客と2人組の客が居るだけ。
彼らの飲んでいる物を見るとビールと酒。
ならば・・とまずはビールをオーダーした。
「初めてですので,お任せしてよろしいですか?
1カンずつたくさん食べられるように」
「はい。
何か嫌いな物はありますか?」
ネタケースにある物は,店内の暗めの白熱灯には
少しばかり色気を欠いて見えていたが,
ちゃんとカウンターで食べる一見さんとしては
まずは出された物を食べてから・・。
酒の当てには,ナマコ。
そして最初の2カンは・・・
赤身と大トロだった。
どちらもかなり大きい切り方。
しゃりも大きめでちょっと固めに炊かれたもの。
そしてどちらにも煮切り醤油が塗られている。
自分のルールに則って一口でいってみる。
赤身は普通の美味しい寿司。
トロは・・・上質のトロだが,脂の旨さでは築地の寿司屋には劣る・・か。
しかしそこはそれ。
大げさに「美味しい」と意思表示をしながら主人をのせていく。
店も,予約した客のために
ちゃんと主人の前の席(つけ前)を用意してくれているのだ。
ヒラメ
カンパチ
アジ
墨イカ
平貝
ウニ
鯖
鰯
穴子
煮イカ
玉子
江戸前の仕事だな・・と感じたのは,煮イカ。
ツメを塗ったそれは,適度な柔らかさとイカの旨さが絶妙で素晴らしい。
青魚はすべてが生臭く無く,仕込みの巧さが伝わってきた。
「あと何かありましたら,言ってください」
と主人に言われた頃は,すでにこっちとの呼吸も合って打ち解けた頃。
言葉少ない彼が若い板前と見せる息の合った仕事ぶりや,
腹が空いているうちの出し方と後半でみせた絶妙な間合いの気持ち良さは,
わざわざここに集う意味を裏付ける。
では・・・とオーダーしたのは
コハダ
車エビ
ウニ
鉄火巻き(中落ち)
コハダは想像通り,生臭さもなく酸っぱ過ぎずの優れ物。
車エビは,生のエビをその場調理するスタイルだが,
踊りに見られる身が固い物ではなく甘みと柔らかさが全面に出る,
ちょっとだけ表面処理された物のようだ。
もちろん頭は焼いて出してくれる。
「あの・・・もう一本車エビを食べたいのですが」
「ごめんなさい。
今のが最後です。」
「え?
じゃ,ボイルした物はありますか?」
「ごめんなさい。
うちはその場で茹でるので」
マジかよ?
時計を見たらまだ6時を過ぎた位じゃないか。
こんな早い時間にネタが消えていくなんて・・・・
久々に,甘さが際だつ車エビの生を食べた私としてはとても心残りではあったが,
この店のスタイルがわかったからそれで良しとしなくちゃいけないようだ。
酒を一人頭1合とビールで,一人あたりのコストは1万円弱。
また来たいと思う店ではあるが,「よこはま次郎」のような
上質な仕事を追求する寿司屋ではなく,
そのコストが微妙なラインの上に乗ってる・・と感じた。
しかし・・・
東京まで行かないといけないのは・・ねぇ
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