「それなんですか?」
「ちょっと派手な色だろ?」
「オレンジの・・・・」
「葉巻だよ」
ちょうどその時わたしはAVO XOを楽しんでいた。
この店のヒュミドールはなかなか素晴らしく、
ラッパーが割れるような失態を見る事はまずない。
この日のロブストも、カッターで切った時の音と感触が、
すばらしい時間を約束してくれる・・と一瞬で表現してくれていた。
同じAVOか・・・・しかも持ち込み・・・・
珍しく好きなヤツが来たらしい、とこちらも少し嬉しくなる。
カッコつける客の多くはトップブランドのシガーを持ち込むくせに、
ボロボロの吸い方で半分も吸わずに消えていく事が多い。
一流品のセカンドブランドやサードクラスとなるシガーを、
気楽にきっちり吸う方が見ていて気持ち良いと私は思うので、
AVOやPS(プライベートストック)といったダビドフ製品を
好んで吸っているのだ。
その客はコッチをジロッと一瞥し、山崎のロックを注文する。
勿論こっちは下品な壁を前には置かず、
ゆっくりと質素に時間を楽しんでいたのだが、
その視線にちょっとだけ不快感を覚えたのは事実だった。
私がAVOじゃ可笑しいですか?
と尋ねたくなる気持ちを抑えつつ、彼の仕草を観察する事にする。
「あの・・、切ってくれますか?」
と、チューブからシガーを出した彼が、バーテンに言う。
カッターもシガー用マッチもアッシュトレイも揃えてあるのに、
わざわざバーテンダーに切らすのか?と不思議に思いながら観察を続ける。
パリパリパリ・・・と乾いたラッパーの音が響き、状態の悪さが想像できる。
どんなシガーだ?とよく見るとバンドはついていず、チューブも凹んでいる。
もしかすると、何か仕込んできたのかな・・・とは思ったが、
自宅にヒュミドールを置くようなマニアは、こういった場所にシガーを持参する場合、
ちゃんとしたシガーケースに入れてくるはずだから、それも考えにくい。
それよりなにより、パリパリに乾いたようなシガーを片手に、
シガーに対する蘊蓄を述べそうな彼に、さらに興味が涌いてしまった。
長い柄を持つシガー用のマッチをすって、ゆっくり着火する・・・・・
と思ったら、いきなりスパスパと吸いながら着火。
面倒くさいのか、知らないのか・・・
ま、人それぞれの趣味の物なので、その吸い方を観察すると・・・
しっかり着火しきってない状態なのに、一々灰を落とそうとする。
しかも・・・・
せっかく葉巻を水平に保てる灰皿を持ってきているのに、
普通にタバコを置くように灰皿の角に火元が押し込まれるように
斜めにシガーが放置された。
消えちゃう・・・ぜ?
と思ったら案の定、着火して5ミリしか吸ってないシガーが消えている。
で、その客はまた、マッチでスパスパと火を点けたが・・・・・
またもやすぐに火は消えてしまった。
で、結局都合5回、再着火されたシガーは全体の1/5も吸ってもらえないで
無惨に灰皿の飾りと化した。
趣味の物なんだから、それなりに面白がってハマって欲しい・・・
そして、格好良いシガー愛好者になって欲しいと思うのだが、
何故か格好良くシガーを嗜む先達に出会えた事が無いのは・・・何故だろうね(^_^;)
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