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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

ANAGURA

くそ暑い日に仕事場から飛び出し、
新幹線に飛び乗った時、すでに時計は3時近かった。

がらがらの車内でビールを飲みながら、非日常へ向けて加速する。
(しかし、新幹線内で飲む缶ビールが美味いのは何故なんだろう・・(^_^;))

素朴な風景の中、どう考えてもお洒落なバーなんてないんじゃないか?
という疑問を持ちながら入った「bar ANAGURA」は見事に別世界を具現化していて、
今回の遠征が失敗で無かった事を瞬時に理解させてくれた。


「最後の一杯になるんですけど、これが飲ませたかった一杯です」


と招待主が勧めてくれたのは
ヴァルベニービンテージカスク1967 49.7%

オフィシャル物のビンテージカスクは珍しい。
しかも60年代の酒・・ときたら、何が何でも飲んでみたい酒となる。

飲みやすい酒として有名なバルヴェニーは、グレンフィディックの隣の蒸留所で作られる、
フィディックとは兄弟のような酒でありながらそのキャラクターは随分違う。

格が違う・・と言っても言い過ぎで無いくらい、バルヴェニーの方が美味しく感じてしまうのが面白い。


はたして60年代のバルヴェニーはどうだろう・・と飲んでみると・・・

え?
と思う位、バーボン樽らしいバニラ香が立っている。

柔らかく、適度にオイリーで、バルヴェニーらしい甘さと奥行きがあるが
25年と同様に少し枯れてボディが痩せてきている感じは否めない。


「すいません、そこにあるバルヴェニーはシングルバレルですか?」

「はい、ポートもアイラもありますが」

「シングルバレルを下さい。」


友人と二人で話しているからか、マスターは会話に加わろうとはしなかったが、
押しつけがましくない受け答えに、必要以上に気を遣ってくれている事がわかる。

出されたボトルを見て驚いた。

1978蒸留と書き込まれている。

という事は、これもある意味レアなボトル・・と言ってもいいかもしれない。


70年代の酒が急速に減っている中、60年代と比べる物差しとして飲むには
贅沢が過ぎるかな・・と思いつつ飲んでみると、
懐かしささえ感じるバランスの良いバルヴェニーの味がした。

二つを飲み比べると面白い。

やんちゃに感じるのはビンテージの方で、豊かな香りと芯の強い姿が美しい。

そしてあらためてシングルバレルのバランスの良さと優しさが、スペイサイドモルトらしい味を高級で上質な物として昇華させている事がわかった。


「美味すぎるね・・・」

「とっといた甲斐がありました」

「しかし、凄い数のボトルだね」

「私も入るまではこんな店だとは知りませんでした」

「随分とワガママがきくようだけど?」

「結構、通ってます」


ここが群馬の伊勢崎だ・・という感覚はとうに無いのだが、
それにしてもお洒落な・・というか本格的・・というべきか、
見事なまでの別世界ぶりが恐ろしく心地よい。


「こんな美味い酒がある・・という事は、
  まだまだ色々ある・・・んだよね?」

「あの上の方にあるボトルは結構いいですよ」

「どれどれ・・・・」


アドベックベリーオールド
マッカラン30年
マッカラン1977ダグラスレイン
シグナトリーやキングスバリー、ソサエティボトルまで・・と
とにかく品揃えが半端じゃない。


「じゃ、次は珍しいマッカランシリーズでいってみようかな(^_^;)」

「結構レアもの・・ありますよ(^_^)」
マッカランのボトラーズバージョンに多い物、
それはシェリー樽以外の樽で仕上げた代物だ。

ダグラスレインOMCの1977マッカランは、
まさにそんなモルトだった。

実は1976のダグラスレインをオーダーしていて、
思いっきりふられていたから、そのボトルを見た時はもう・・・
気になって仕方なかったのだ。

だから、素晴らしいバルヴェニーの競演の後に、
そのマッカランをオーダーしたのは当然の方向性だったのだが・・・


すいません・・・
これ、本当にマッカランですか??

なんだか、ちょっと辛い、だけどそれなりに芯のある・・・
スペイサイドの割に固い酒なんですけど??


絶対ブラインドで出されたら、マッカランと言えない。

若いリベット?

いや・・・もっとトゲがある・・・
なんて言ってしまいそうな味なのだ。


勿論、不味いってわけじゃない。
でもマッカランだと思うと、信じられない気持ちが先行する。


「すいません、この店にオフィシャル18年物で、
  古いのってありませんか?」

「たぶん、まだ残ってます」


ひどい事してるって理解してる。

60年代のオフィシャル18年が残ってるって知ってて、そう言ってる。

そしてそいつで、このダグラスレインを計ろうとしている・・・のだ。


マッカラン18年(ジオベネッティ)1967


かなり瓶底ではあったが、60年代18年物はそうそうあるもんじゃない。

喜び勇んで飲んでみると・・・・

コレだろ、マッカランは(^_^;)

という独特のあの味と、ちょっと口の中にまとわりつくような感触と、
そしてすこし嫌いな匂いの混じった樽香が・・・・


美味・・・・・(^_^)

でも、やっぱり枯れてる。

そしてそいつを飲んだ後にダグラスレインを飲んでみると・・・

笑った
めちゃくちゃ笑った。

確かにお前はマッカランだよ。
独特な味は、やっぱりマッカランなんだよ。

でも、一切シェリーの無い味は、似てもにつかない味わいを与える・・・


凄く心配になってきた・・・

実は、家に一本だけ、リフィルカスク使用のケイデンヘッズ社製
オールドマッカラン(ゴールドシール・シリーズ)があるのだ。

ケイデンヘッズのくせに、頑丈な木箱に入ってソレは、
リフィルカスクだ・・としっかり明記してあって、
それを平気な顔して買ってしまったのだが、その頃はこんなに
シェリー樽以外の樽で作ったマッカランが違うとは思ってなかったのだよ・・・・

ま、いいか・・・
今となっては、それも貴重な酒の一本だ。


それにしても、今宵の酒は美味すぎるねぇ・・・(^_^;)

 
 
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