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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

試作品

ブーツが届いた。
右足だけ。

何故か・・・って?
それはまさにサンプルだから・・・だ。

グッドイヤーウェルトで作られたエンジニアブーツ風オリジナルブーツは、
まったく新しい物だから試作が必要だったのだ。

胴の部分を限りなくストレートにして、でも細く仕上げると
履いた場合にふくらはぎが当たる可能性があったし、
実際、「ロウ引き」の革がどんな状態なのかも見たかった。

また、ライニングにヌメ革を使ったら、どんな感触になるかも確かめたかった。


「来たよ〜」

「まぁ見てよ。」

「どれどれ・・・」


あの?
白いブーツを頼んだんじゃないんですけど?

とまではいかないものの、明るい灰色のような革でできたブーツは
とにかく格好だけは素晴らしく見えた。


「履かなきゃわからないっしょ」

「そうだね」


するっと入っていく感触が、カシミアのセーターに袖を通すようだ。
靴の内部全ての上質な革の内張がある事が、その感触で解る。

しかし、ちょっとサイズが大きい・・・か。
7を頼んだは失敗だったらしい。

私の足は24.5〜25センチ。
ウェスタンブーツだと7〜7.5がジャストサイズで
エンジニアブーツだと6〜6.5がちょうど良い。

紳士靴の木型だったので、7にしてみたのだが、これだから靴は解らない。
だが、それ以上に大きな問題が一つあった。


「あのさ・・・
  ブーツのトップがふくらはぎにぶつかって押されちゃんだけど」

「あらら。」

「これじゃ、絶対内側擦れて痛いよ」

「この革で擦れるって事はないけど・・・」

「なんだよ?」

「最近の子ってさ、俺達みたいな年代のような足じゃないんだよ。」

「へ?」

「足が細いのさ」


そ・・か
細いだけじゃなくて長いしな・・・


「でもさ。
  これだけ押されちゃうと、俺には辛いよ。」

「じゃ、フォルムを変えないように直径で1センチ位増やすか」


1センチ上げた位じゃ・・・どうだろ?

だが、それ以外は間違いなくオーバークオリティだ。

アクセントとなるベルトの裏まで、キレイにヌメ革が合わせてあるし、
ベルトのバックルも普通の金具より質が高い。
ビブラムソールを固定するステッチもキレイに2重にされている。
外側と内側の合わせ方を90度ずらしてあるので、型くずれも少ないはずだ。
爪先に無骨なカップを入れなかったため、すっきりとしたデザインになった。


「でさ。
  何で片足なわけ?」

「いや、こんな面白い事やるなら、
  実際に商品にしない?って冗談が通っちゃって、
  ラインを作ろうかな・・・・って、靴屋と話してたのさ」

「え?
  こんな靴、俺以外に欲しがるヤツ、いるのかな?」

「ここに、もう一人居るぜ?」

「って言うか〜
  他に誰も持ってないってのが良いんじゃん」

「良い物は分かち合いなさい」

「やだね」


こんな冗談が飛び交う程、
出来上がったサンプルは素晴らしかった。

胴の形を少し直し、サイズを6.5に下げて、
本製作に入る事にする。

だけどさ・・・
こんなブーツ、欲しいって思う奴、居るのかな??

 
 
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