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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

オーダーメイド

好きな物はどこにある?

こんな物ならアソコにあるだろう・・・
いや、こういう連中が集まっているから、きっとココらへんにあるはずだ・・・

しかし何故だかわからないが、そうやって探した物は大概が偽物だ。

勿論、コピー品と言うわけじゃない。
求めている品質を持っていない・・・という意味で、
形だけの偽物、という
それを探す事に疲れた私は、いつの間にか探す事を諦めてしまったらしい。


「実際、一番贅沢なのはさ・・・
  靴のオーダーだよな」

「そうだね。
  本来、一番贅沢させてやらなきゃいけない物なのに、
  これが一番ないがしろにされているかもしれないね。」

「身につける物は全てオーダーが最高だろ?
  なのに、何故靴のオーダーが流行らないかわかるか?」

「わからないね。
  ただ、職人が少ない事と、高く売りにくいからって事はわかるか。」

「何十万とか言われたら普通は退く・・・よな。
  でも靴ってちゃんと作ったら高いものなのさ。
  そしてそんな靴はちゃんと修理ができて、10年以上は保つものなのさ。
  ただ・・・」

「靴を作る靴屋がない・・と」


そう・・・
実際に靴を作れる職人は、現在横浜では片手でも足りないほど。

そして一番安い靴でも3万位からする・・となると、
その人数の少なさにも合点がいってしまう。


「フルオーダーじゃなくてさ、
  既製品なんだけど自分の好みで作ってくれるところがあったらいいよな・・・」

「無くはないぜ」

「うそ? マジ??」

「知り合いが請け負ってくれるはず。」


ちょっと待てよ。
そんな美味しい話って本当にあるのか?


「じゃ・・さ、普通じゃ手に入らないような革でさ、
  エンジニアブーツとか作ってくれるかな?」

「大丈夫だよ・・たぶん」


そんな会話をしてから数日経って、ヤツは革見本を持ってきた。


「ロウ引きの革って知ってる?」

「・・・えっと、ロウを革に塗ってある・・とか?」

「馬具に使う上質な革なんだけどさ、
  防水の為に革に特殊なロウがかかってるのさ。
  一見真っ白に見えるけど、だんだんこのロウが落ちると中の本当に色が出てくる・・」


どう表現したらいいだろう・・・

黒い革の上に白いロウが引かれ、こすれてロウが少し剥げた部分は灰色になっていくのだが
その落ち方が妙に美しく、そして妙に輝いて見えるのだ。


「こんな革で作っても、保つものかな?」

「どうせ作るなら、ちゃんとした物を作るよ。
  コイツを表面に使って、もう一枚ヌメ革を裏に張る二枚仕立てにするよ。
  そうすれば型くずれもしないし、柔らかくて丈夫なものになるはずさ」

「高くつかないか?」

「木型は紳士用の短靴の木型をアレンジできるから、
  たぶんレッドウィングより安くできるはず・・・だってさ。
  もちろん底はビブラムを使ってね」


おいおい、ちょっと待てよ。
レッドウィング(42000円)より安いエンジニアブーツが、
セミオーダーでできてしまう・・・だと?


「作る?」

「作る!」

「じゃ・・さ、形はどうする?」

「ただのエンジニアブーツじゃつまらないし、
  ペコスみたいな胴を付けて、サイドには引っ張るために耳を付けて・・・」

「グッドイヤー方式で作るよな?」

「勿論。 エンジニアブーツはそうでしょ?」

「そうだけどさ、ステッチを二重にしないか?」

「底から貫通で2重ステッチ。
  できればエンジニアブーツみたいにベルトをつけて、バックルは洋銀とかで。」

「洋銀はどうかわからないけど、つま先のカップを硬質プラスチックにしないか?」

「鉄じゃなくて?」

「鉄のカップ入れるとボテッとするから、
  紳士靴の木型には合わないように思うのさ。
  スマートに見えて、実はエンジニア。
  でもペコスの様に楽に履けて・・・」


こんな馬鹿な靴の作り方ってあるだろうか?

でも、友達との雑談から生まれたこのアイデアは、
急速に現実味を帯びて膨れあがってしまった。

どうやら、後には退けそうにない。
そして二人は、黒と茶のブーツを一本ずつオーダーした。

 
 
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