取材をする、という事は、それだけたくさんの人々に出会う事。
そしてそれは完璧なアウトサイダーである事から、
日々喋りにくい他人事を聞き出せるチャンスが多くある事も意味する。
先週は徹夜で定置網漁を取材し、今週は料理店での取材をする。
そんなジェットコースター的毎日に少しずつ慣れつつ楽しめるようになってきたのは、
昨日までまったくの他人だった人に「どうやって生きてきましたか?」と
取材できる面白さがあるからだと感じているからだろう。
「どうして、料理人になったのですか?」
「何故この仕事に就いたのですか?」
「今の仕事には満足してないですよね?
本当は現場にいたい・・・って顔してますけど??」
「単調な仕事で、間違えてはいけない仕事をしていると、
どうやってそのテンションと保つのですか?」
考えてみれば図々しい質問の数々。
でも、こちらにしてみれば、取材する対象の人間性を探るための手法。
そしてその対象の背負っている物をどこかに振りまいて番組に生かすと、
不思議にリアリティが漂ってくる物なのだ。
「へぇ・・・神奈川区にお住いですか。
実は私もボランティア活動でそっちの方へよく行くんです。」
え?
ボランティア??
固い仕事に就き、日々部下を管理する事に明け暮れるその人からは、
そんな活動をしている空気は感じられないから驚いた。
「どんな、ボランティアを?」
「老人介護・・・と言えばいいですかね」
「大変そうなボランティアですね」
「元々は、母が倒れて面倒を見た事がキッカケだったんですけど・・・」
たまたま、私が住んでいる場所の話をした時、
取材先の管理職から飛び出た話は、こんなにも個人的な話題だったりする。
特に意識して聞き出した訳では無いのに、こんな話が始まる事が実は楽しい。
そしてその話を聞いている事によってその人の顔が変わって見え、
語っている人の表情もまたどんどん活き活きしてくるのもわかる。
厳しい毎日の中、知り合いには絶対喋りそうにない誰かの言葉を聞く。
それが、恐ろしく魅力的で有りながら、どこか哀しくも感じるのは何故だろう。
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