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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

最後の日

継続は力なり、とはよく言ったモノ。

単純明快なルールのみが存在するだけの毎晩の行為が、
とうとう終了する・・という事で、久々にバイクで出かけた。


忙しくなって精神的な余裕が無くなると、
私の場合、自然にバイクから遠ざかる。

そう、ここ数ヶ月、ちゃんとバイクに乗っていない状態が続いているのだ。
が、今夜だけは絶対バイクでなくてはならない・・・と思っていた。


仕事を終え、バイクを取りに帰る。

その時既に私の心は妙に弾み、平常心を失っていたのだが、
そんな事に気付く余裕はどこにも存在しなかった。

久々に目覚めたエンジンはぐずる事もなく快調に回り、
派手な吸排気音に蒸し暑い空気が少しだけたじろいだように見えた。


時計を見ると、イベント開始時刻が迫っている。

どうせすんなりと始まらない事は想像できたが、
どうしても遅刻はしたくない。

で、いつものように・・・いや、いつもより少しだけスピードを控える覚悟で、
旧ショップ前を目指して走り出した。


高島町のガードを潜り、3車線の直線道路に踊り出ると、
無意識にアクセルは全開になる。

まだ、感覚が慣れてないから、がまんがまん・・・と自分に言い聞かせるが、
メーターは90マイルに達しようとしていた。


紅葉坂の交差点に差し掛かろうとする時、私は一番左の車線を走っていた。

真ん中の車線にも右側の車線にも、動くパイロンとしか見えない乗用車がいるだけ。
だから、無造作にそのまま追い抜こうと・・と考えていた。

と、突然、真ん中の車線にいた車がテールを少し持ちあげながらブレーキを踏む。

何か強引に横断している・・・

そう思った瞬間、目の前に信じられない光景が広がった。

青信号の交差点に進入しながら急ブレーキをかけている車の向こうから、
赤信号を強引に突破したような形で車両が一台コッチの進行方向を塞ぐ形で飛び出してきたのだ。

「バカヤロ〜!」

と叫んでいるヒマもなく、こっちも全制動に入る。
後輪がロックするようにグリップを失い、左前に出て来ようとした。

さっき見た時、対向車線の車は交差点に差し掛かっていて、信号無視して突入する車両は見えなかった。
ちゃんとその状況は確認して、動くパイロンをやり過ごそうとしたから、どう考えても信号無視の車両じゃない。

じゃ、どこからこの車は出てきたんだろう・・・・・


右にカウンターを切りながら、左に向きすぎた態勢を補正しようと少しリアブレーキをリリースする。
進路妨害をしている車両の速度を予測しながら、前に失敗したように逆に振られないよう修正舵をあたえる。

あれ・・・
この車、やけにスピードが遅いぞ??

何故なんだ?
どうやってあのスピードで道を横切ったのだ??

そんな疑問を感じながらも、慣性に抗えないマシンは進路妨害車に近寄っていくのだ。


あ・・・そうか・・・
あの車、一番右の車線に居て、強引に左折をかました大ボケなんだ・・・

じゃ、左にいた車は見えてても、俺のマシンには気付いてないな・・・

と、言う事は、ヤバイじゃん・・・


こんな時、物事の動くスピードを見て、どこまでリカバリーができるか想像がつく。

凄く物事の動きが遅ければ、かなりヤバイ。
普通に物事が動いていくのなら、かなりの確立で問題なく対処できる・・・

そんな原則に、今の自分をあてはめてみると、
物事のスピードは遅いとは感じるが、あまりにヤバイ領域ではない・・と気付けた。


「止まれ!馬鹿者!!
  俺の行く道を塞ぐんじゃね〜!」


とメットの中で叫びながら、強引にハンドルを右に一瞬切って横滑りを押さえつつ、
願わくは気付け・・とばかり運転手にヘッドライトをむけてみた。

が、ノロノロと交差点を横切ろうとする運転に変わりは無かった。

このまま行けば、間違いなく土手っ腹にドスンだ。
完璧に進行方向は塞がれ、しかも動きはノロイまま・・・


こんなとこで事故ったら、洒落になんないじゃん・・・
と、嘆いても状況は変わらない。

もう一度通れる場所を探すんだ・・・・と辺りを見回すと、
そこに一つだけ道があった。

延々と続くガードレールが交差点のために切れ、
東急の高架下の歩道にアプローチできる隙間が空いているのだ。


そう気付いた瞬間フロントとリアのブレーキを開放し、
スッと立ち上がったバイクを歩道に向けてから加速した。

そうしないと、歩道の縁石を安全に越えられないような気がしたからだ。


ダンッ・・・・
と音がしてバイクが大きく飛び跳ねた。

次の瞬間・・・

私は何事も無かったように歩道を走っていたのだ。


慢心は怖い。
自分の腕の過信は、もっと怖い。


一日のウチで一階位、道交法をきちっと守って走ってみよう。
その中から己の未熟さを見出したり、交通社会の矛盾を見つけたり、
集団で走る事の恐さを理解しよう・・・と始まったその行為を行うために走った私は、
参加する前から、己の未熟さをタップリと味わってしまったワケだ。


ここのところ、少し浮かれすぎだったかな・・・・

 
 
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