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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

シリウス

「この前はゴメンね。
  せっかく来てくれたのに。」

「いいさ、気にしてない。
  深夜、意味も無く走るより楽しいよ。
  風で冷え切った身体には『ロングアイランドアイスティー』が美味しかったよ」

「今日も突然だね。」

「そういう気分なんだろ?」

「でも、貴方はどれくらいこの店で飲んでるの? 
  普通こういう場所って、酒を出すのはバータイムになってからでしょ?」

「ボトル入れてると、自分の酒だけ出してくれるのさ。
  こうやって明るいうちに海を眺めながらモルトを嘗めるのは、また格別さ」


横浜ロイヤルパークホテルの70階にあるラウンジ「シリウス」で、
ティータイムに堂々とカウンターを独占して酒を飲む事は、難しくない。

バータイムには2000円も取るチャージも無料にできるそのワザとは、
単にボトルを入れるだけの事。(勿論、顔を覚えてもらう程度に通う必要はあるが)

そして目の前が窓のバーカウンターに座れば・・・・

「ボトルをお持ちしましょうか?」と店の方から声をかけてくれるようになるのだ。


「でもさ、偶然こんな時間に余裕があったからいいけど、
  俺にしたって午後の3時から時間が取れるのは希有な事さ。」

「私は、運がいいのよ」

「ふ・・・うん」

「こういう事だけ・・・ね」


少しだけ神経質なところが強い彼女には、
適度に抜けている私との話がちょうど良い息抜きになるらしい。

少な目の言葉は時と共に奔流となり、
澄んで通るその声は閑散としたロビーに響くほど大きくなった。


「誰かのために嘘をつき、自分のために嘘をついて、
  誰も傷つかずに過ごせればいい・・と思っても
  気がつくと自分の心が擦り傷だらけで痛いのよ」

「そういう場合は、
  自分のために笑顔を作るのさ。」

「やってる」

「違うよ。
  笑顔を振りまいてるだけなんだよ」

「どう違う?」

「自分の為に作る笑顔と、
  他人を和ませるために作る嘘臭い笑顔じゃ、全然違う」

「わかりません」

「他人のために笑うと、その反動が心に出る。
  自分のために笑うと、心も一緒に和むんだよ。」

「そんなものかしら?」

「そうだよ。
  だから俺は、腹が立った時は極力笑うようにしている。
  怒ると、心への刺さり方は余計きつくなるから、
  自分のために笑って、怒りの度合いが増すほどに笑顔を大きくするようにしてる」

「器用ね。」

「自分が可愛いだけさ」


遠慮する・・と言っていた彼女も、笑いながら美味しそうに飲んでいる姿に負けて、
バーテンダーが出勤する前でも飲めるシェリーをオーダーした。


「いつか、言ったよね」

「なんだっけ?」

「困ったら助けるって」

「あぁ、何時でもそうしてきたろ?」

「そうだったかしら・・・」

「あれあれ?
  そうだった・・かな?」

「実は・・・・」


長い夜になりそうだ・・・・(^_^;)

 
 
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