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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

ロングスリーブ

流行りだと解っていても、長袖を着るつもりはなかった。

しかし、暑い夏の日差しには有効だと気付いてから、
ライディングの時は着るようになった。

今年は、長袖の上に半袖のTシャツを着る形をよく見るが、
本来汗っかきの自分には到底できないファッションだと思っている。

なのに、少し着慣れると、これも悪くないな・・・と思うから面白い。

インディアンモーターサイクルのTシャツは、
HA81がプロデュースする物をモチーフにした物が多く、
そのレタリングのアメリカっぽさが好きで半分ジョークで着る事が多い。

そして出会ったのが、Infernal Angel'sとロゴの入った長袖だった。


「ちょっとばかり派手だよ、それ」

「やっぱりそう思う?
  でも、なんとなく好きなんだよね。
  それに派手過ぎる背中はクラブTシャツか某若Tシャツを上に羽織れば
  今風のカッコでちょうどよさげだし・・・・」

「どうせ暑いって脱ぐくせに」

「そうなんだよね・・・
  腕に何かがまとわりつくのが嫌いでさ。
  それが汗だったらもう・・・」

「でも、着てる・・・と」

「そう、不思議なんだよね。
  意外に平気なんだ」

「歳・・だな」

「・・・」


そういう括り方は無いだろう・・・と文句を言いたくなったが、
100マイルの風に晒しても平気だった腕は、確かに長袖を欲したのだからそうなのだろう。

いずれにしろ、ごついレタリングの入った長袖の上に
カットオフを羽織るのは少しだけ楽しいのだから仕方ない。


「・・・最近、冷たいね」

「忙しいんだ」

「でも、今、そばに居て欲しい事もあるんだ」

「どうしたの?」

「何でもない。
  ただ、そんな気分」

「じゃ、起きてて」

「来ても入れないよ」

「ついたら電話する」

「寝てるよ」


突然入ったSOS。

ヘルメットを掴み、長袖Tシャツの上に革のベストとカットオフを重ねる。
こんな夜には腕を剥いたまま走るのが気持良いのだが、
飛ばす時にそれをやるとろくな事が無い・・・と経験が叫ぶ。

今日は、色々なヤツと話をするな・・・と独り言。

ヘルメットの中で共鳴する爆音を楽しみながら、独り首都高でダンスを踊っていた。


「もしもし・・・ 俺だけど」

「来たんだ」

「来たかったのさ。
  会いたくなければ帰るけど。」

「どこ?」

「君の家から見えるはずさ。」


夜空に響くほどの空吹かしをする。
と、目指す窓が少しだけ開き、見慣れた顔が少しだけ覗いた。


「来ないと思った。」

「どうして?」

「疲れてるって・・・」

「疲れてるよ」

「でも・・・」

「会いたかったのさ」

「今日は帰って」

「どうして?」

「見せられない顔してる」

「気にしないよ」

「来たかったのは貴方でしょ?」

「そうだけど」

「ありがとう・・・来てくれて。
  でも、帰って。」



深夜の50マイルランは、身体を火照らせる。
そして、心は少しだけ青ざめた。

 
 
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