「なんでアイツは言うことを聞かないんだろう・・・」
と部下に対して不平を言う奴がいた。
よくよく聞いてみると、ヤツの言い分はもっともに聞こえる。
言わなければ動かない。
気が利かない。
命令した事を理由をつけて拒否する。
そんなありがちな不満は、状況説明によってなるほど・・と納得させられがちで、
結局「今時の若者は・・・」というグチに終始したりするのだが・・・
でも、そんな話を聞くと、当事者はどう感じているかもきいてみたくなるのが私の悪い癖。
で、何かのタイミングをみて、それとなく探ってみたりする。
「言ってる事が一貫してなくて、無駄な事が多いんです。」
「はぁ・・・なるほど。
でもな、無駄と思えても無駄じゃない事も、結構あるんだぜ。
一見、大した事がないと思えても、それは長い経験によって必要とされているから、
こっちは黙々と行うのさ」
「そうじゃないんです。
明らかに無駄なんですよ・・・・」
経験という物は、どれだけ修羅場を潜ったか・・と言い換えられる物だろう。
そしてその修羅場を潜った回数だけ肝が太り、失敗しないための技を身につけ、
物事の予測がしやすくなるものだ。
その「経験」が少ない若者にとっては、回転の良い頭脳でどんどん想像をするだけに終始し、
解らない事でも判断できてしまう錯覚に陥るわけだ。
昔は、上下関係の中から「口答えの許されない空気」が存在していた。
「明日から来なくていいよ」と言える社会だった。
勿論それは今でも存在しているが、存在を信じているのは高齢者ばかりで、
若手中心の現場ではある意味、統制すらとれない現実もあったりするのだ。
色々調べていくとヤツと不平を漏らした直接の上司との間には
過去、感情問題が起きていた。
上司は、ヤツを育てるために厳しく言った・・・と言うが、
ヤツは意味無く虐められた・・と受け取っている。
その間に何があったか解らないが、想像すれば状況は理解できる。
要は、「超えてはいけない壁を超えてしまった」という事なのだ。
今の若者達は打たれ弱い。
生まれた時から何でも揃っている社会で育ち、
人間関係を充実するより成績を上げる事を大事と教えられ、
その点数の優劣だけで判断される社会がそのまま存在すると思い込んでいる。
だから社会に出ていきなり人間関係の難しさにブチ当たると、
順応するより先に拒絶するパターンに陥るのだろう。
「豚もおだてりゃ木に登る」という言葉があるが、
人を動かす一つのコツとして、そのやり方は昔から存在していた。
おだてる・・とまではいかなくとも、彼等の現状や感情を理解し認め、
仕事としてやって欲しい必要性を理解させ、稚拙でも頑張っている現実を褒めて、
一緒に動いている事を実感させる。
そして、お前は仲間なんだ・・・と、肌で解らせる事だ。
今、直接下についてくれてるヤツは、
以前より明るくなった・・・と周りから言われる。
客観的に言えばまだまだな部分が多い奴だし、
能力も若さがそのまま出ているレベルだ。
(私から見れば、子供のような年齢だし(^_^;))
でも、明るさが出るだけでも大した進歩だ。
そして、言わなくても動ける力を見せたりする・・・。
不平を漏らしたヤツはそれを見て「好き嫌いで動かれたらたまらねぇな」とボヤいたが、
好き嫌いで判断しているのはどっちだろう・・・・と思った。
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