ちょっとした田舎道。
そのバイクは穏やかに走っていた。
天気が不順なため、レインギアを身に纏ってはいたが、
実にオーソドックスな乗り方が、危なげなさを演出している。
小さめの身体が、大きなバイクの中心に形良く座り、
コーナーには完全なリーンウィズで対応する。
ミニカウルが付いているせいか、レインギアがはためく事もなく、
少し濡れた路面に綺麗なラインを描いて走り抜けていく。
一つの完成された美さと言えばいいか・・・
何事も達人が行う所作は、無駄が無く簡単そうに見えて、
尚かつ美しい。
そんな事を感じさせるライディングに見惚れながら、
一人田舎道を走っていた。
メーターを見れば、制限速度の倍で走っている事に気づくが、
そのバイクの排気量を考えれば流している程度の事。
こちらは車だから、事も無げに追走できるが、
バイクだったらどうだろう・・・とふと考えたりする。
勿論、当たり前に追いついて、
当たり前に追い抜いていくのかも知れない。
そしてきっと、そのライディングの美しさには目もくれずに、
我が道を走りたいように走っているだろう。
気がつけば、空は尚更黒さを増し、
今にも雨が大粒で落ちてきそうだ。
そんな事に、車に乗りながら気付けるのも、
そのライダーに合わせた走りをしているから・・かも知れない。
自らの能力を過信し、
自らの尺度だけを信じるのは、
自主性の現れ・・・なんかじゃない。
単なる思い込みの為せる技であり、
世間知らずの証明のようなものだ。
自分のペースではない速度で走っても不快でなく
自分のペースでは見えない世界を知らされる。
そんな経験ができた事は、
きっとこれからの生き方に役立つだろう。
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