「あれ? 来れたの?」
「来ちゃ悪いか〜??」
「そういう意味じゃなくって〜」
「なんかやっと、落ち着いて飲めるって感じさ」
「どう?
新しい職場は?」
「なんか、思い出すのが大変でさ。
おまけに、ダストのせいか咳が止まんなくてさ」
「はい、アルコール消毒」
今月も、辛うじて壁の会を開催する事ができた。
が、デフォルトの3名が揃わず、私ともう一人のモルト馬鹿の二人のみ。
でも、この時間と空気を大事に思えば思うほど、また頑張ろう・・・と思えるもの
だと知っているから、無理をしてでもやってきたのだ。
いつもこの会に出て思うのは、
自らの努力と時間を費やして得た環境は心地よい・・・という事。
そしてそれが、自分にとっては本物の贅沢だ・・とわかっている事。
今までは、この時が楽しくて頑張ってきた。
この時間だけは、鎧を脱いで無防備になって、
諸々の荷物を全部下ろすためにひたすら時間と空気を酒で流し込んでいた。
それが今日は、下ろす荷物が無いままに、
ひたすら自分の牙を研ぐだけの毎日が楽しいんだと確認するように、
あまりに違う時の流れを楽しめていられる自分を見つけている。
「一度乗った自転車はいつでも乗れるもんだろ?」
「おいおい、自転車と仕事を一緒にするなよ。
これでも内心はビクビクさ。
でも、立場上、できませんって言えないから辛いのさ」
「あはは
君の場合は、ちゃんと日頃から備えていたから、
久々に見た古巣の変わり様に驚いているだけの事さ。」
「そうかな・・・」
「そのうち、前みたいに全部やっちまって嫌われるようになるのさ」
「そんな事しねぇよ。
制作現場は、共同作業場だ。
チーム意識なしじゃ、上手く動かないよ」
「おいおい、プロデューサーになったんじゃないんだろ?
ディレクターが作りたいものを強引に掲げなくちゃ、
誰もその方向に動いてくれないぜ?」
そう言えば、何台ものバイクと一緒に走る時、
一番前を走るのが好きだった。
全体の長さを計算しながら、でも好き勝手にコースを選び、
一番後ろのスピードを想像しながら速く走るのが好きだった。
全体をう一番後ろからサポートするような性格は全然持ち合わせていない・・・のに、
制作現場も総務でも、常に一番後ろから全体を見るように走り続けていたらしい。
「え?
今から飯食わないか?・・・だと??
おい、どーするよ?
俺の友達が飯付き合えって言うんだけど、
一緒に軽く食うだけの腹と根性は残ってるか?」
「あはは
制作になったら、いきなり制作タイムで電話が入るじゃん」
「・・・だなぁ
で、どうする?」
「カメラマンの俺に訊いてど〜する?
指示出す役はディレクターの仕事でしょ??」
会計を済ませ、携帯をポケットにねじ込み、
深夜営業のわりに美味い料理を出す店へヤツと向かう。
「飯の後にさ・・・
ロブで飲み直す?」
「まだ昼前だし・・?」(私は深夜0時を昼と呼ぶ)
「そ、2時位までだったら、余裕でしょ?」
どうやら、感覚は制作現場向きにシフトしてしまった・・・・って事らしい。
あぁ・・・
きっとまた・・・
睡眠不足の毎日が始まるんだなぁ・・・・
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