日曜のうちに引越を済ませ、最前線へと舞い戻る。
そして、忘れていた空気や感触を、徐々に肌に染み込ませていく・・・・
言葉の重さを理解して、多くを語れなかった職をに就いていた事は、
伝える言葉を紡ぐ仕事をする上では、逆に良かったのかもしれない。
貯まりに貯まった表現したい事は、押さえようとしてもこぼれてくる。
そして、もの凄いスピードで現場の感覚が蘇ってくる事を感じた。
「あれ?
あんまりにも風景に溶け込んでいるので、
来た事に気付かなかったよ」
「おや? 今日から?」
「なんか、そこに座ってるって、当たり前なのに不思議な感じですね」
懐かしい面々が、色々な形で声をかけてくれ、
昔同様に扱ってくれる事が伝わってくる。
だがそれは、引き継ぐ担当者以上のできを要求されている・・・
とも感じられ、無言のプレッシャーに感じて、少しだけブルーになった。
テレビの現場は、職人の集団。
百戦錬磨の達人達が、それぞれのパートをプライドを持って守っているから、
それが一つにまとまった時、大きな仕事として成り立つのだ。
だから、彼等を敵に回したら、絶対にいい仕事はできっこない。
そして演出を担当するディレクターは、
そんな厳しい彼等の要求を越える何かを常に見せつけないと認めてさえもらえないのだ。
トラブルもプロブレムも、揃えば揃うほど能力が発揮できる自分としては
(ギリギリにならないと何もできない・・・とも言えるが(^_^;))
自らを追い込んでいくやり方でしか、速成する術を知らないから胃が痛む。
いずれにしろ、めでたく初日は過ぎていく。
山ほどの問題を抱えたまま、原稿を書いているだけで終わる一日は、
表現できる喜びと、制限された表現しかできない悲しさに溢れてはいたが、
少なくとも会社全体を背負う重圧に比べたら天国のようだった。
|