生活時間帯が恐ろしく変わってしまい、
それにつれて食生活が乱れきった。
その結果体調不良を起こし、少しだけ拒食症に陥った。
食欲がなくなっているわけではないが、
食べる気分が起きてこない。
で、食べるタイミングを外してしまう。
もっとも、忙しくて食べるタイミングを逃すと、
食べられる物はコンビニ物やファストフードの類になってしまうので、
相乗効果もあって食べる気分が失せていくのだ。
「お〜い、根つめてがんばってるけど、メシはどうすんだ?」
「大丈夫です。
お弁当買ってありますから・・・」
「・・・・そうなんだ」
「あ、良かったら食事に行ってください。
ココは私がいますから」
「ありがと・・・
じゃ、タイミング見てでるわ」
浦島太郎気分で必死に仕事を思い出していると、
それなりに孤独感に苛まれて辛いから、せめて食事位一緒にと思ったのに・・・
最近の若い奴は、マイペースだな・・・と半分感心し、半分呆れて、
今日も昼食(という名の最初の食事)を食べたのは3時を回っていた。
(もちろん、コンビニのサンドイッチ)
自分用のフォーマット作りやなんやらで実際の仕事は遅々として進まず、
苛つきながら環境造りに励むと、アッという間に夜になる。
昔乗っていた車両でできた事が、最新型のセーフティーデバイスだらけの車両ではできないように、
身に付いた技術のかなりの部分は使い物にならない事が解っていく。
そしてそのせいで、自分の無力さを再認識させられてしまう毎日。
身体より精神が疲れるようで、どこかドンヨリとして効率が悪い。
それなら・・・
どこか店が開いてるウチに帰って、まともな食事でもして気分を変えよう
そう考えた瞬間、会社の外へ飛び出していた。
どこか、食べるところはありませんかね〜?
と気に入りそうな店を物色するのだが、ちょっと時間が遅かったためか
気に入る店はみんな店仕舞。
もうちょっと早く見切りをつければよかったね・・と思って歩いていると、
「メロークラブ」の看板が見えた。
若い頃、お気に入りの店の一つだったソコは、
相変わらず営業を続けているようで嬉しくなる。
メシ食わずに飲み・・・か?
と苦笑いしつつ足を向けると、その手前に「味奈登庵」の看板が煌々と輝いている。
この蒸し暑さだと、モリをつるつるっと啜ってから一杯もいいな〜(^_^)
と思った瞬間、店に入っていた。
どんよりと疲れた顔をしたスーツ姿のオヤジが一人、
つまんなそうにダラダラと蕎麦を啜っているだけで他に客はいない・・・
でも、この場合の蕎麦は、飲む前のちょっとした腹ごしらえだからどうでも良いのだ。
「すいません、表の券売機で食券を買っていただけますか?」
「あ・・・と、ここは食券なんだ?」
「はい、お願いします。」
いいじゃん、堅い事言うなよ・・なんて言わず、表に出て券売機を見る。
あっ・・と、しまった
ここもモリ一杯300円の店だった(^_^;)
まっいいか(爆)
と気を持ち直して300円で食券を買う。
今時、一食300円ですますのは常識よ。
牛丼なんて280円だぜ。
要は、その後が楽しめればいいんだよ・・・
と、ちょっと空しい言い訳を自分にしながら食券を出すと、
まったくやる気のない顔をした店員が鍋に麺を突っ込んだ。
生麺をこの値段で出すのは、少し無理があるよなぁ・・・と思いながら待っていると、
スーツオヤジが「はぁ・・・」と大きく溜息をつく。
途端に、そのやりきれない気分をそっくりもらってしまったような気分になり、
コッチ思わず溜息をつきそうになってしまった。
じっと観察してみると、安売りのスーツに皺だらけになったシャツ、
そしてその安っぽさにコーディネートされたような半分横を向いたネクタイの柄は、
恐ろしく地味で「みすぼらしい」を通り越した情けなさが漂っている。
値段の安い店が嫌いな理由の一つがココにある。
安くたってちゃんとした食事なんだから、楽しそうに食べればちっとは美味しく感じられるものなのに、
そんな店しか行けない自分を自らバカにしているような客が多く居がちなのが、こんな店の傾向なのだ。
あ〜あ、
ここまで惨めったらしい空気に満ちているんだったら、
ビールでも飲んじまえばよかったぜ・・・・
結局、店の外に出た途端、そのみすぼらしさからとにかく離れたくなり、
10数年ぶりになりそうだった「メロークラブ」への突撃は中止となった。
教訓:安い店に入る時は食べる事のみに集中し、
廻りの人間観察は決してしてはいけない。
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