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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

フラッシュバック

ちょっと時間ができたから、ひとっ走り行こう・・・

そう思ってバイクに跨る。

2サイクル90ccエンジンは、100キロに満たない車体を加速させるのには充分で、
白い煙を吐きながら小気味よいビートを奏でていた。

飯山温泉を通り過ぎると、道はいきなり田舎臭くなる。
と言うか、山道のようになる。

石切場を通り過ぎると、身体のどこかが接地するのでは・・・
と感じるほど倒さないと曲がれないワインディングが現れる。

タコメーターなんて物がついてないバイクではあるが、
性能の限界までを使い切るようにスロットルを開けると、
下手くそな自分がとても優雅に走っているように感じられた。

半原辺りまでの軽いツーリングは、往きと帰りで腕前が変わってしまうほど
ライディングテクニック向上に役立った。


今日は、つまらない役所での打合せの後、
厚木市七沢で別の話題の打合せがあった。

担当者と構成作家を乗せて車で走った厚木は、四半世紀前に走り回っていた頃の記憶を
リアルな感触と共に呼び起こす程、変わらない姿を見せていたのだ。

若い頃、よく走り回った経験は、
ライディングの基礎として今も生きている。

ブラインドコーナーの処理も、狭い道での車両のよけ方も、
突然横風が襲う場所での重心移動も、それらを覚えた道を通るたびに思い出せる。

あぁ・・・こんなに覚えている事があったんだ・・・と
ステアリングを握りながら一人、ニヤついてしまう。


一度覚えた事は、すぐ思い出せるよ・・・

新しい、でも古巣でもある職場に行った時、
馴染みのある面々が口を揃えて言ってくれる言葉。

それは、一緒に仕事した時、その仕事をキチンとしてきた証拠だ・・・と
自分勝手に良い方向で捉えるようにしている。

そしてそれは、少しずつ制作の仕事の比率を増やすたび、実際に仕事をするたび、
実感として自分の中に蘇ってくる。


あぁ、このコーナーで曲がり損ねて、
たまたま前から走ってきた救急車と正面衝突しそうになったっけ・・・

どうしてこんな緩いコーナーでそうなっちゃったんだろ・・・?

あぁ、そうか・・・
バイクを倒す事が怖かったんだっけ・・・

スリップダウンを恐れても、正面衝突したら意味がない・・・と身体が納得してから、
どこまで倒したらスリップするか攻められるようになれたっけ


他人より早く走りたい。
自分で惚れ込むような走りをしたい。

そんな風に感じて走るようになってからもう27年が過ぎた。

そしてまだ、私はバイクに乗っていられる。


「来た道と違う方向に走るけど、それで駅に向かえるの?」

「大丈夫。
  実はコッチの方が近道。
  ここら辺は庭だから心配いらないですよ。」

「へぇ・・そうなんだ。
  ナビが付いてるみたいだね」

「神奈川県内の道は、大概知ってますよ。
  でも厚木は特別。
  バイクでも車でも走り回った練習コースなんですよ」

「でもさ、どう考えても山へ向かってるよ・・・ね?」

「だから、このトンネルを抜けるといきなり市街地になりますって」

「・・・本当だ」


心配した番組担当者は、まだ私の本性を知らない。
でも、知る必要もない。

便利な人間ナビと思ってくれればいいし、
どうでも良い雑学を知っているヤツだと思ってくれてもいい。

そう・・・
知識や経験を誇る意味なんてない。

それらは全て、自分が生きていくための道具でしかないのだから。

 
 
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