「あの・・・例の『さがみや』に行きたいんですけど・・」
「行けば」
「・・だから・・・」
「市場の中だよ。」
「そう言っちゃったら・・・・」
「自分一人じゃ行きにくい・・のね」
「えぇ・・・。
カウンターって慣れてない・・んですよ」
「じゃ、行こか」
ちょっと意地悪だったかな(^_^;)
この前、教育対象としてノミネートしたばかりだから、
自分としても時間を置かずに行きたかったところ。
つまり「渡りに舟」の誘いだったのだ(笑)
土曜日の予約は受け付けないがウィークデイなら予約した方が良い・・
と店に言われていたので、早速電話をしてみると大正解。
二つしか席が空いてないほどの繁盛で、その人気の度合いがあらためて理解できた。
「さがみや」
045-453-0166
横浜市神奈川区山内町1番地
7:00〜22:00(月〜土)
11:00〜21:00(月〜土)
「こんなとこ、連れて来られなきゃ入れませんよ」
「やっぱり・・・」
「普通、警備員室がある門をくぐるなんて有り得ないじゃないですか。
平気な顔して入ってくからついていけましたけど・・・」
「ま、そうかもね。
長く生きてると人間、図々しくなれるのよ」
店に入ると、前回と同様の客の入り。
今日の客はサラリーマンが多く、家族連れが多かった前回とは違った雰囲気が流れている。
勿論、飲み屋のママ+上客のカップル的も居て、しっかり胡散臭い香りを振りまいてくれる。
「あの『特選・・・』を頼めばいいんですか?」
「イヤ・・・、今日は最初からお好みでいってみよう」
「どうしてですか?」
「前回の切り方を見てたら、良いネタでもセット物とお好みでは違う事がわかったのさ。
既に顔を売ってるから、同じ様なモノを頼んだ方が得だと思うんだよ」
料理屋では、顔を覚えてもらう事が大切。
特に寿司屋の様に、目の前で客の顔を見ながら料理のさじ加減をする店は、
板前に好かれるだけでコストパフォーマンスが格段に良くなる傾向がある。
既に茶髪の若い板前とはアイコンタクトが交わされ、
座った席の前に立つベテラン板前も、私の風体を思い出したようだ。
ならば、この期において私の単価を奴らに決めさせてしまおう(^_^)
中トロ
甘エビ
カンパチ
平目
アジ
玉子
赤身
穴子
鯖
鰹
コハダと大葉、ガリの手巻き
雲丹
帆立
トロタク(トロとたくあん)の手巻き
烏賊
中トロ(と言う名の大トロ)
飯蛸
やはりここの中トロは素晴らしい。
口の中に入れた瞬間、バターにも似た脂がす〜っと溶け、
何とも言えない美味さが広がるのだ。
「何ですか・・・これ?」
「どうだ。 このトロ食ったら、ちょっと鮪の概念変わるだろ?」
「参りました。」
彼が築地へ行っていない事を知っていたから、いきなり中トロを食べさせた。
築地のトロは別格だが、ソレを知っていても美味しいと思える絶品を、
知らない人間が食ったら間違いなく脱帽する・・と計算したからだ。
うめぇ〜と連発しだした私と彼を見て、板前が調子にのる。
で、最後の方は頼みもしないのに握るようになってきた。
さすがは市場の寿司屋。
ネタは素晴らしく、切り身の厚みも充分で(厚すぎない程度に分厚い)
たらふく食べるむきにはピッタリの店だ。
ネタの良さだけで言えば山田屋を忘れられる実力がある・・と言っても過言ではなく、
これにあの山田屋のような日本料理独特の技術と季節料理があったら言うことはない。
「早く来てくれれば、車海老や牡丹海老あたりが、運が良ければあるんですよ」
「この店って甘エビしか置かないのかと思いましたよ」
「さすがにこの時間では、ネタが随分終わってしまうので・・」
そうか・・・
海老や蝦蛄がここで見られないのは、早いうちに売れてしまうって事なのか・・・
ま、とにかく顔はなんとなく覚えてもらえた・・・と思っていい。
ならば後は、勝手に出しても勘定が固定するように、
食べ方を教え込ませれば完了だ。
お勘定を・・・と頼んだら、二人でビール一本飲んで、
1万1千円をちょっと超える位。
え?安い・・・と目を疑った。
が、計算的には一人5000円+ビール代といった感じだから、
客単価5000円と決めつけたような勘定だとも思える。
もしかして・・・・
既に私は、5000円の客として見られたって事だろうか??
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