兼平で寿司を楽しんでからまだ2週間と言うのに、また寿司が食いたくなる。
カウンターで食べる楽しみを思い出したって事もあるが、
山田屋の後を探すツアーを続けている私としては、新しい出会いを求めるのは当然の事。
築地では遠すぎるし、小柴も酔っぱらって帰るには電車に乗る時間が長いと思う。
じゃ、もう少し横浜に近い所で無いのか?
と色々調べてみるのだが、魅力的な店は中々無い。
どうすっかなぁ・・・・
ダメもとで山田屋に泣きついてみるか・・・
でも、テーブル席で寿司食っても美味しくないしなぁ・・・
築地の鮪は凄かったなぁ・・・・
未だかつて食べた事の無い美味さだったよなぁ・・・
・・と考えだすと止まらない。
アレを超える物なんて存在しない(あのコストで・・だが)事はわかっているが、
どうしても頭から離れてくれそうにない味なのだからタチが悪い。
市場だから美味くて当たり前・・だよ・・な?
市場・・・・
市場なら横浜にもあるよな・・・・
もしかして??
我が家から歩いても行ける距離にある「横浜市中央卸売市場」
そこには築地まではいかないものの、野菜も魚もかなりの量が集まる大きな市場があった。
そしてその市場の片隅にある横浜市中央卸売市場関連事業者共同組合には中卸業者や食堂があって、
その中に老舗と言って良い歴史を誇る寿司屋が一軒入っている事がわかった。
「さがみや」
045-453-0166
横浜市神奈川区山内町1番地
7:00〜22:00(月〜土)
11:00〜21:00(月〜土)
土曜という事ですっかり暗くなっている市場に着くと、
ポツンと明かりを灯したその店があった。
予め連絡をしておいたから場所が解ったが、
知らない人間ではここに寿司屋が有るなんて思いつきそうもない。
土曜だけは予約を受け付けない・・との事で、席が空くまで待つつもりでいたが、
築地の様に外に行列ができているような事は無かった。
「こんばんは〜」
「いらっしゃい!」
2人の板前が大きな声で歓迎する。
狭めの店内20人は座れない感じのカウンターのみ(2階があるようだが)で
そこに、ほとんど満席の状態で先客が居たのには驚いた。
1000円 1500円 2000円のセット物の上には本日特選のネタ8カンで3000円の「特選山之内」と
さらに豪華な「HANAKO寿司」4800円のコースがある。
初めての店だから、いきなりお好みで・・とも考えたが、
3000円の特選8カンが気になっていた。
築地とどう違うか、見てみたい・・・という誘惑が、しぶとく残っているわけだ(^_^;)
中トロ
カンパチ
甘エビ
鰺
赤貝
帆立
雲丹
いくら
やっぱり最初に中トロか・・・と思いつつ食べてみると・・・
美味い!
築地には敵わないものの、かなり美味しいのだ。
じゃぁ・・と続けて食べていくと、どれもレベルが高いのがわかる。
雲丹やいくらは、ちょっと高級な店で食べるより美味しく、
ネタの良し悪しだけで言えば山田屋が負けそうなネタも揃っていた。
私に握ってくれたのは茶髪の鋭い目をした若者だったが、
その目つきが私の風体を興味深げに動いた事を見逃さなかった。
そう・・・
バイク乗り同士が交差点で顔を合わせた時のような目つきで・・・・
「この後にお薦めの物はありますか?」
「そうですね、今出した以外だと・・・
ミル貝、鰯・・・・あたりですかね」
「じゃ、一カンずつ」
勧めるだけの事はある。
とにかく新鮮な事が口の中に入れた瞬間に理解できるほど、
食感も味も素晴らしいものだった。
では・・・と少し意地悪をしかける。
「そちらの平目はどうですか?」
特選に入っていない平目を、敢えてオーダーしてみる。
「くれ・・」と言わずに「どうですか?」と尋ねたのは、
私の食べ方やオーダーの仕方を見て、彼が私を客としてどう判断したか知りたかったからだ。
「平目ですか・・・」
と彼は呟き、サクを手にとって二枚切り身を引き、
手にもってしばし眺めた後、こう言い放った。
「ダメだ」
よし!
わざわざ切ってまで見せるあたり、ちゃんと客として扱う気がある現れだ。
煮上がったばかりの穴子や表面をちょっとだけ炙った北寄貝、
コハダとガリを大葉で合わせた巻物等、随分楽しい握りを勧められるままに頬張った。
(くじらや桜肉など珍しいネタも勧められ、何十年ぶりにくじらを食べてみた)
山田屋に比べると切り身がかなり厚く、変わったネタが少ない感じはする。
醤油はカウンターにある刷毛で塗って食べるスタイルで、
上品とは無縁な感じがするあたりは市場の寿司屋ならではの物。
聞けばもう、120年の歴史があるこの店は、
知る人ぞ知る、名店と言ってもいいのかもしれない・・と正直思った。
腹が膨れるまで食べビールを一本飲み干しても、
6000円には届かなかったのは、最初に食べたセット物のお陰か?
でも、その味と量を考えると、
間違いなくリピーターになりたい店の一つとしてあげられる。
しかし・・・
市場には美味い食い物屋があるって、どうして最初から想像しなかったんだろうね?
|