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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

杉本

「大磯に美味い鳥料理屋があるんだけど行かない?」

「何故大磯で鶏よ?
 魚料理だったらわかるが・・・」

「大磯ってほら、贅沢好きな人達が多いじゃん」

「確かになぁ・・・
 昔から金持ちの別荘が並ぶ、ちょっとした隠れ家的位置付けではあるな」

「『鴫立亭』って有名なケーキ屋もあるし、葉山と同じ様に美味い食い物が集まってるんだよ」

「そうか・・・
 せっかく西湘まで来てるんだから、君オススメの鶏料理、食って帰るか」


大磯が、東日本初の海水浴場として紹介されたのが明治18年。
横浜ー国府津間に鉄道が開通したのが明治20年。

徳川家をはじめとする旧公家や大名、三井・三菱をはじめとする財界人がこぞって別荘を建て、
山県有朋や伊藤博文、大隈重信、西園寺公望等の有名人も別荘を持った。

その後も、実業家や会社役員などが別荘を持ち、別荘建築においては貴重な文化遺産が今も多くあり、
その一部はレストランなどとして使われているのは有名でもある。

平塚で働く人間の夢ちとして、自宅は大磯に・・というのがあると聞く位、大磯のステイタスは高く、
事実、それなりのクラスが在住しているのも事実らしい。

金持ちが住んでいる場所には、彼等の舌を満足させる飲食店が存在するのは当然で、
大磯には美味しいモノがある・・・と噂には聞いていた。

だから、大磯で唯一の鶏料理屋・・・と聞けば、気にならないワケはないのだ。


「鶏料理 杉本」
 0463-61-0444
 神奈川県中郡大磯町大磯1186
 12:00〜14:00(LO13:30)
 17:00〜19:45(LO19:30) 
 月曜休


その店は、旅館にも見える古き良き時代の住宅の様で、
一見、何の店だかわからない感じが、高客単価を予想させて一見客を拒んでいる。

実際私も、友人の紹介が無ければ入らない・・と思ったが、
彼は「決して高い店じゃない」と言うのだ。


ガラガラッと引き戸を引いて店に入る。

三和土というべきか通路というべきかわからないストレートのコンクリ引きの土間を挟んで
両側には小上がりの座敷が並ぶ座敷だけの造り。
それぞれの部屋に仕切がない事が一見居酒屋にも見せて、気軽に食事を楽しめる事を予感させた。


「どうも〜
 ご無沙汰してます。」

「あら、いらっしゃい〜
 わざわざ遠くまですいませんね〜」

「いいえ〜
 ココの鶏が忘れられなくて、今日は友達を連れてきました。」

「それはそれは
 どうもありがとうごいざいます。」


店の人間と気軽に話をする事に長けている彼は、
こうやって色々な人間をココにつれてきているようだ。


「ここの鶏は、朝その日に使う分だけを仕入れて、無くなったら終わりの店なんだよ。
 特に名のある鶏は使ってないけど、その日潰した新鮮な肉しか使わないから、
 冷凍物のような独特の臭みが無くて美味いんだ。」

「へぇ〜
 じゃ、刺身もあるね?」

「当然」

「おすすめは?」

「最初だから、色々な物がセットになった鶏定食がいいと思うな。」

「じゃ、ソレにしよう」


かしわとレバーの焼鳥が一本ずつ
ささみの表面だけを軽く炙った刺身状の料理
香の物
唐揚げ
お吸い物
ご飯

といったセットで1150円

焼鳥はレバーがタレでかしわが塩と微妙に拘っていて、呑みたい気持を十二分に煽るのだ。

しかし、味は・・・抜群とは言い切れない。

でもそれは、決して美味しくないという意味ではなく、
日頃懇意にしている店のレベルが高すぎるから、そう感じてしまうだけの事だ。

刺身は新鮮で臭みを感じず、焼鳥は焼き方の巧さと鶏肉の良さが伝わってくる。

唐揚げはサクサクの熱々を楽しめ、ジューシーな肉は彼が絶賛するだけの事はある・・と思わせる
素晴らしさを見せてくれた。


「あのさ
 夜の営業時間が7時45分までって、何故だか知ってる?」

「この店ってさ、飲み屋じゃないんだよ。
 8時過ぎまで営業してると、どうしても呑む為に来る客が入ってしまうから、
 店主としてはその微妙な時間に切り上げて阻止したいんだってさ。」

「でもさ・・・
 こんなリーズナブルで美味しいモノを提供しておいて、
 酒を飲まさないってのは・・・どうなんだろ?」

「酒はあるよ」

「そうじゃなくってさ、
 やっぱり焼鳥とかあったら、呑みたいじゃんか」

「飲んべえはそういう店でやってねって事なんでしょ」


確かに、呑む事専門の客が入ると、店が荒れるのは理解できる。

そしてメニューを見れば、焼鳥のラインナップなんて見あたらないのも、
そんな気持の現れと理解した。


今、私の鶏料理の基準は、反町の「纜」。

ここは素晴らしい地鶏を、素晴らしい技術で料理するから、
「杉本」の料理が素晴らしくても材料で勝ってしまうのだ。

それはそれで不幸な事だが、実は「杉本」の料理が抜群でありすぎるために
材料の差が如実に感じられるだけの事。

そして次は、バイクでフラッと来てみよう・・と思う程、
魅力に溢れた鳥料理であるのも紛れもない事実だ。


サラッとバイクで流して、この店で鶏を楽しみ、
また湘南の風と戯れながら帰るのは楽しいだろうな〜・・・と思ったら、
R1からどうやってこの店に来るかを無意識に確認していた。


週末のランチに、大磯まで・・・・

梅雨の合間の晴れた日にやっているかも知れないね(^_^)

 
 
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