一目会った時惹かれ合うのが男女の仲なら、
友人との出会いもまた、似たような感触がある。
同じ目線で物を語れる人間として、同じ感覚で物事を理解できる人間として、
お互いが尊重し合えると瞬時に感じ取れるものだったりする。
私は元々人見知りで、負けず嫌いで、意地っ張りの上に強引な性格だから、
心を開ける友人はそんなに多い方ではなかった。
「実はさ・・・
若手に生きの良いヤツがいるんだが、
その上にいるヤツとウマが合わなくてさ・・」
「へぇ・・・
そいつ、仕事は良くできるんだろ?」
「そうなんだよね。
仕事はできる・・と評判なんだけど、人間性に難があるって風評がね」
「たぶんさ・・・たぶんだけど、
ソイツの人間性が・・という話は、そいつの上司から聴いてないか?」
「そうだね。
ソイツと話しても、俺は変なヤツだとは思えないんだよ」
友人は選ぶ事ができるけど、会社の上司は選べない。
しかし、会社の中では、最初から同じ方向を向いている現実はある。
それぞれの要求する諸々の事は、会社の規律によって平均化され、
とりあえずそこに秩序が生まれて営業していけるのだ。
しかし、得てして能力に長けたヤツは、上司に自分以上のモノを求める。
上司は会社の規律で縛ろうとするが、部下は自分より優れていない上司には反発するだけとなり
そこに規律と能力の戦いが勃発するのだろう。
「町中を歩いているとさ。
特に女性なんだけど、同姓同士で歩いているのは似たようなタイプが多いだろ?」
「そうかな・・・」
「試しに見てみれば解るよ。
背格好だったり、洋服の趣味だったり、
とにかく似た者同士で歩いてるから。」
「へ〜
気がつかなかったなぁ・・・」
友達同士は、趣味主張が似ていて当然。
類は友を呼ぶ・・とのたとえ通り、同じような人間だからこそ友達になれる。
だから、職人芸を必要とされるような職場に於いては、
職位より能力がモノを言い、ともすれば言う事をきかない人間だらけが徒党を組む可能性もあるのだ。
だからこそ上に立つ者は、自らを磨かずには生き残れないのだが、
職制という圧力をカサに着て自己研鑽しない人間は、後を絶たない。
「しかし、付き合い長いよな〜」
「学校からだから、27年か・・・」
「変わんないよな、お前も。」
「まぁ、世間ズレして生きていくには今の環境は抜群だけど、
せっかく会社をコントロールしてやってたのに突然クビにされちまって、
ちっとばかりムカついてんのよ。」
「あははは。
そんなとこも変わってないな。
しかし、お前がいなくなったらその会社、すぐ倒れないか?」
「たぶん明日、まず第1弾のトラブルが起きるな。
ま、知ったこっちゃないけどな。」
「お前も、出る釘の一本みたいだから、
叩かずに引っこ抜かれるパターンに陥ったんだろ?」
「あはは。
叩かれたら、叩き返すって相手も知ってるからな。」
ヤツとは、初めて会った時から気を許せた。
自分にとってはとても珍しい事だが、
自分には無いモノをたくさん持っているにも関わらず、同じ目線を感じた。
色々なシーン一緒に過ごした学生時代の思い出だけで、
今までの付き合いがあるわけじゃない。
感じ方や方向性が似ていても、自分とは違う角度を持っているから、
お互いが意見を求めるのに適していたのだ・・・と、今は思う。
そして今日も、久々の再会を祝した酒を飲みながら、
1年に一回も会えない事を苦にするでもなく会話を楽しんでいられる。
「実はさ・・・
今日、結婚記念日なんだよ」
「おい、こんなトコにいていいのかよ?」
「しかたない事情があってわざわざ出てきたんだ。
そうでなきゃ、久々に皆を呼ぶとこだよ。」
「そうか・・・・
で、何年になる?」
「20年」
「恐れ入りました。
そんなに長く続いてるんだ・・・」
「お前も、身を固めたら?」
「この歳じゃ、自由気ままの方がいいよ。
それに相手してくれる女もそういないしな」
「どうだかな」
男と女は縁と相性。
どこかで縁が絡んでいれば、そういう事もあるかも知れない。
だが、友人とはもっと深い縁がある・・・とも思う。
何故なら、何の寄っかかり合いもない関係でいながら、
瞬間的に命のやりとりができる関係でもあったりするからだ。
人見知りでシャイな自分にも、
何故かこんな関係を持てる友人がソコソコいてくれる。
やはり、
長く生きていると、良い事もあるんだな・・・
と感じる夜だった。
結婚20周年おめでとう!
S&Y
|