辛い物が食べたい・・という友達の誘いにのって、
久々に四川料理の店へ行く事になった。
だが、中華街には四川料理の店は少ない。
大概の店には麻婆豆腐(四川)や餃子(北京)はあるが、
四川料理店でも北京料理店でも無いのは周知の事実。
広東料理店の作るソレらはどこか町の中華料理店風で面白くなく、
味は良いけど何かが足りない・・・という感じに陥るのだ。
四川と言えば、辛み。
中国奥地の盆地に位置する四川では気候が厳しく、
産物が限られる関係から唐辛子や香辛料を効かせた料理が発達した。
一口に辛みと言っても色々で、
特徴的なものとしては唐辛子と山椒(花椒)だろう。
香り高くピリピリと辛く、そして身体が暖かくなる料理・・といったところか。
「中華街で四川料理と言ったらどこがあるの?」
「重慶飯店・華王飯店・謝謝・景徳鎮・・・あたりかな」
「この前言ってた華都飯店は?
辛そうな料理が多そうだったようだけど・・・」
「あそこは本来は北京料理店。
だけど、坦々麺はかなり本格的で美味しいよ」
「坦々麺には惹かれるけど、今日の気分は麻婆豆腐。」
「何故中華街で麻婆豆腐?」
「どこでも似たような味だからこそ、本格的で辛いのを食べたいんだけど」
ハイハイ、解りました。
では、元祖へご案内・・・といきましょう。
「重慶飯店本館」
045-641-8288
横浜市中区山下町164
11:30〜22:00(LO21:00)
無休
「重慶飯店は本館がいいんだ。」
「本館・別館・新館・・・ってヤツね?」
「そう。
日本の暖簾分けより派手に味が違うのが中華街風だけど、
実際、全然味が違うのは当たり前の事。
だから、同じ名前の違う店と考えて入らないと、大失敗する事もあるんだ。」
「へぇ・・・
そんなに違うの?」
「違うね〜
例えば『梅蘭』という独特な焼きそばを出す店も2店舗あるけど、
これがもう、同じ料理なのにどうしてこうも味が違う???
と思う程違ってるんだ。」
「どっちがお薦め?」
「市場通り店・・という名の本店ね。
昔本店だった店は新館のスタッフがやってて、騙される人も多くてね」
「そんなに違う?」
「俺は好きじゃないね、新館の方は。」
「重慶飯店は?」
「ここは本館。
ローズホテル内の新館はホテルテナントらしい料理だから、
本格的な物を望むアナタにはオススメできませ〜ん」
正直言えば、同じ系列の料理なのに高い・・・というのが許せない。
席料だと思っても、味も本館の方が上なので、納得がいなかないワケだ。
「麻婆豆腐」
「空芯菜の炒め物」
「上湯水餃」
「重慶炒飯」
唐辛子と山椒のハーモニーが素晴らしい(辛い?)「麻婆豆腐」は、
久々に食べると汗が出るほど辛く感じる。
「空芯菜の炒め物」はニンニクが上手く使われていて極普通の味ではあったが、
決して塩がきつくないあたりが、ここの料理の質を理解させる。
「重慶炒飯」は1000円という料金設定のワリには素晴らしく、
同發新館の「XO海鮮炒飯}(1300円)にも負けず劣らずの素晴らしい出来。
ピリ辛系の炒飯としては私的にはトップ3に入ると思っているが・・・
「もっと辛い麻婆豆腐が食べたいな・・・」
「あのね・・・
充分に辛いと思うんですけど・・・」
「昼食べた時の方が辛かったように思うけど?」
「あぁ・・・確かに」
ここのランチには必ず麻婆豆腐が用意されるが、
ランチ用に作るために思いっ切り山椒を効かすのだ。
多分作り方や材料が違う分を、香辛料で誤魔化すパターンだとは思うが、
辛い物好きにとってはアレくらいのキックが欲しくなってもおかしくない。
実際、辛い物好きの舌は強力で、
食べたら30分位ボ〜ッとしてしまう位辛いカレーを食べてもケロッとしてたりするから、
辛さの中の味については私より分解能が高いのだろう・・・(^_^;)
上湯とネーミングされるスープは澄んだ物で、
中華料理では清湯と並んでベーシックなスープ。
(清湯は茶色いスープ)
この中に餃子が浮いた「上湯水餃」はなかなかの出来で、
スープが塩辛くなくとても美味かった。
「ここのスープは塩辛くなくていいね」
「あれだけ唐辛子系の辛さを求めるアナタが、
ど〜して塩辛さは嫌いなんだか私には理解できません」
「え〜、そうかな。
ピリッとするのは大好きだけど、塩がきついのはダメなのよ。」
「塩をある程度効かさないと、辛みと塩辛さのバランスが取れないように思うけど?」
「い〜え、別物です。」
そうですか・・・
やっぱり唐辛子の味が解る人は、味覚の回路が違うらしい。
汗ばむ季節に、身体を暖め、
暑さを感じないように過ごすのは熱帯の智恵。
外に出ると少し湿度がきつい風が流れていたが、
気持、心地よく感じたのには驚いた。
汗をかいて身体をコントロールする事を否定するのが、現在のオフィス環境。
その環境に慣れきった自分には、辛さを欲する回路が薄れつつあるのが事実だが、
ほんのちょっとの事で気持ちよさ感じられるなら、敢えて辛い物&ノーエアコンの生活も楽しいかも知れない。
これから始まる、夏に向けて、
少しだけ自然回帰しよう・・という気持が湧くのが、
なんとなく嬉しく、なんとなく不思議に感じられた。
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