「つまんねぇ事さ」
「そうでもないだろ?」
「大した事じゃない。
ただ、風当たりは強いな・・・」
「そりゃしょうがない。
お前のやり方は派手でワガママだからな」
「そうだよなぁ・・・
俺のやり方でできるヤツはいないからな。」
人は誰でも得手不得手がある。
そして好き嫌いも当然ある。
だが必ずしもこの両方が一致するとは限らず、どちらかと言えば
好きな事が不得手で嫌いな事が得意だったりする事が多いように感じる。
得意な事が好きな人は天才なんだ・・と誰か言ってたが、
不得手な事が無い人こそ天才なんだと私は思うし、できるヤツは不得手な事でも
不得手のレベルが高すぎるんじゃないだろうか・・・とさえ思う。
「それってプライドか?」
「いや、仕事においてはあまりプライドって持たないな」
「へぇ、意外だ。
お前はプライドの固まりかと思ってた。」
「そういうのは、肩書きに固執して仕事を選ぶヤツの事を言うのさ。
俺は、基本的にどんな仕事もやってるだろ?」
「そう言われりゃ、そうか。」
「仕事なんてメシの種だし、金くれるやつはお客様だし、
媚びたりはしないけど、出来る仕事なのに客を選んだりはしないのさ。」
「まぁ、今までは仕事を選べるような立場じゃなかったしな」
人間誰でも欠点はある。
ただ、その欠点が目立つヤツと目立たないヤツが確かに居る。
集団に属して生きている時、
その集団の中で問題になりやすい欠点を持っていると大変だ。
ソイツは大きく嫌われ、
集団心理の中でスケープゴートにされやすくなるからだ。
「お前はさ、仕事におけるプライドって無いのか?」
「そりゃ、有るよ」
「例えば?」
「そうだな・・・仕事の出来・・・かな。
俺の姿がその仕事の中にあるかどうか・・・ってとこか」
「だから、嫌われるんだよ。」
「そうかな」
「そうだよ。
風当たりが強いって自分でも言ってたろ?」
「確かに」
「自分のやり方で、自分の仕上げ方で、自分らしさが溢れる仕事で、
その出来が良い物だったら、そういう事ができないヤツにはムカつくだけの事なのさ」
「良い出来ならいいじゃんか」
「その態度が気にくわねぇ・・って、皆思ってるのさ」
トラブルは嫌いだ。
だが、トラブルを切り抜ける事は好きかも知れない。
目の前にトラブルがいくつか揃うと、
ドレからやっつけてやるか・・と元気が出たりするのだ。
だから異動させられる時は、必ず何かしらトラブルを持っている現場に行かされる。
そしてそのトラブルが解消し、自分にとって楽で居心地が良くなった頃、次の場所に異動させられた。
「誰かに群れるのは好きじゃないさ。
だが、チームは凄く大事にするんだぜ?」
「野郎供には『嫉妬』という悪魔を飼っているヤツが多いのさ。
だから、自分に持てないモノを持っているヤツは、攻撃対象になるわけだ。」
「オイオイ、俺はそんなに他人が羨むモノなんて持ってないゼ?」
「普通の人間が普通にやっててトラブルになった事を、
お前は喜んで処理できるんだろ?
それだけでも妬みの対象になりやすいのに、さらに一匹狼を気取って迎合しないから・・・」
「皆で攻撃しても誰も悲しまない・・・・か」
「そうさ。
人間は卑しい動物で、弱いモノを虐めて喜ぶ性格を持っているのさ。
だから、多数で個体を攻撃するのは、基本的に快感を得やすいのさ。」
「で、俺みたいなヒネクレ者は、正面から受けて喧嘩しちまうから・・・」
「カワイクねぇ・・・と」
一匹狼の生き方は、自分にとって自然な事。
命のやり取りができるパートナーが居れば、後は何もいらない・・とさえ思う。
が、それは反社会的な考え方なのかもしれない・・・と、ヤツと話して感じた。
色々な社会をの中で生きている私は、それぞれの社会の中で一匹狼でいるのではない。
一匹狼でいるのは、金を稼ぐ社会においてのみだ・・・と理解している。
つまり、一匹狼でいなくてはいけない社会には、
命のやり取りができるような友人は存在しないって事なのだろう。
そしてそれは、どうやら唯一私が持っている「境界線」でもあるようだ。
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