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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

SAKURA

「最近忙しくて、マトモな食事してないんだ。
 どっか夜遅くても、美味しく食べられる場所知らない?」

「遅くって言っても限度があるんですけど?」

「そうね。
 じゃ、会議が延びなければ21時過ぎに上がるから、それ位の時間で・・」

「中華街はもう、ダメな時間だよ。
 関内辺りは?」

「いいね。
 最近関内は行ってないから・・・」

「じゃ、そういう事にしよう。
 21時過ぎには関内に着くようにするよ」


人間、激務でマトモな食事ができないと、
絶対気持が荒んでくる。

朝はコンビニ、昼は出前、夜もコンビニ・・となると、
食事は餌に変化して、もっとも動物的欲求の一つを満たすだけの作業にしかならないからだ。

そういえばなんとなく疲れてささくれ立った声質だったな・・と思いつつ、
今晩はドコで食べるか思案するのだが、今ひとつピンと来る所が無い。

こんな日は、新規開発しかないのかなぁ・・・(^_^;)


「VINOTECA SAKURA」
 045-650-5450
 横浜市中区太田町4-47
 18:00〜25:30(DINER TIME)
 25:30〜29:00(BAR TIME)


馬車道の脇にあるこの店は、以前「朝まで営業する、マトモなイタリアンが食べられる店」として
一部に宣伝され探していた店だが、なんとなくタイミングが合わなくて今日まで訪れる事は無かった。

21時過ぎ・・と彼女が言っても、どうせ21時なんかには終わらない事は知っている。

だから「朝までやってる・・」という宣伝文句を思い出し、ここに入ろうと考えた。


「ちょっといいじゃん」

「お洒落な入口だよね」

「加湿器付きのワインセラーがお出迎え・・・ね」


店前のメニューにコース(4500円)やアラカルトメニューが出ていなければ、
ちょっとしたワインバーとしか見えない感じの入口を入ると・・・

あれ?
ここのどこがイタリアンレストラン??

テーブル席はあるものの、店の奥には大きなカウンター(8人掛け)が設置され、
しっかりとしたバックバーにはイタリアンワインから日本酒まで、綺麗に並べられている。


「こりゃ、そのまんま・・だね」

「想像以上に、客層が若い・・ね」

「だな・・・・ ハズレ・・かな?」

「食べて判断しよ。
 コンビニよりは絶対ましだから」

「そりゃそうだ、比べちゃ可哀想・・・さ」


メニューを見ると、殆ど1000円以上のプライスが付き、
飲物もイタリアのワインが多くしかも良いお値段が付いている。

「カトルフーケ」がプロデュースする「リケッチャ・セレーナ」にも似た、
ちょっとゴージャスで価格設定も高めなのに、何故か若者が集う店のように感じる。


「ハーブのグリーンサラダ」
「ペペロンチーノ」
「カボチャのニョッキ」
「沖縄産寿豚と野菜の炙り焼き」


「ペペロンチーノ」はメニューに無かったのだが、有るのは当然だよね?・・とオーダーしてみた。
(初めての店ではその応対も含めて判断できる好材料)

すると、店側はほんのちょっとだけ間を持ち、そして当然・・という顔をして「できます」と答えたが、
その瞬間から私達二人の言動に注意を払うようになった。

そりゃそうだ。
揃いも揃って口やかましそうな二人が、一見のクセにメニュー外の物をオーダーするのだ。
しかも、店員の動きや調度などにも色々と意見交換したりしているから・・・・


「グリーンサラダ」はハーブとイチゴを散らしたサラダで、爽やかな中にイチゴの甘みと酸味が生きていた。
が、量は少な目で、少しばかり不満が残る。

「ペペロンチーノ」は生バジルを細かく切って散らし、ガーリックも小さく刻んだスタイルだった。
塩味はソースに付けてパスタは1.6ミリを使用していたが、そのワリには美味しくまとまっている。
(「キハチ・イタリアン」と同様な美味しさで、外で食べる物としては良い部類)


「これなら、許せるね」

「ウン。
 このレベルなら良い・・かな」

「客層が若いのが不思議だよ・・・」

「結構客単価が高そうなのにね」

「まぁ、飲み屋街の傍だから、こういうタイプに客も集まるのかな」


珍しいと思うのは、一つの料理を完璧に二人分に分けて出してくれる事。
一々取り皿を出して客に分けさせるより、最初から二つになっている方が食べやすくて嬉しい。

しかし・・・
一品当たりの量が少ない。


「カボチャのニョッキ」はゴルゴンゾーラソースは美味しかったが、
何故カボチャなのかは理解できない味だった。

そして、セカンドとしてオーダーした肉料理「沖縄産寿豚と野菜の炙り焼き」は、
じっくり遠火で時間をかけて焼かれ、そろそろ出来上がってくれ・・と言いたくなった頃出てきた。


「スペアリブ・・だね」

「上手く火が回っているけど、なんで君の方に骨が行ってるの?」

「ほら、一応男だから、ゴツイ骨はコッチでしょ」

「骨にこびりついた部分が美味しいのに」

「どうぞ、お持ちください」

「どういたしまして」


「塩が、上質な岩塩だ・・」と呟くと、店員がピクッと反応する。

あぁ・・やっぱり聞き耳立ててるな。
こういう客は珍しいのか、それとも一見の客の反応が気になるのかな・・・

まぁ、客の反応を気にしない店だったら、こんな客単価ではすぐ潰れるだろう・・けど(^_^;)


ちょっと大きめな声を上げる若者達の一段が滞在す気を削ぐから、
悪戦苦闘して骨の隙間の肉を食べ上げたらすぐ、勘定を頼む事にする。

こういった店の場合はテーブルチャージが多いのだが、
どうやらこの店は入口でするらしい。

では・・・とワザと銀色のカードを出し、
カットオフ&ジーンズ姿とのギャップを演出してみた。


「お味の方は、如何でしたか?」

「美味しかったですよ」

「ありがとうございます。」


店の外まで出てきて見送ってくれた彼が最後に尋ねたのは、
やっぱり店の味の事だった。


「どう? あの店」

「う・・・ん、客層しだいかな」

「でも、ちょっと高いな。
 ビール+グラスワイン一杯だけしか飲んでないのに、二人で9009円だよ。」

「一品一品がそれぞれ高いからしょうがないけど、
 ちょっとサービス料のせすぎって感じはするね。」

「『サービスです』と言って出したパンも値段に入ってたりしてね」

「次、来る気になる?」

「微妙、だね」


さすがは「食い道楽お姉様」。
美味しいだけでは、ダメって事らしい(^_^;)

 
 
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