「関東のうどんなんて食えるか?
どうしたらあのドブのような汁を啜れるんだ?」
と、厳しく言い放つのは関西の人間に多い。
付け麺文化の関東と、汁麺文化の関西では汁の意味が違うのであって、
お吸い物のように汁を飲む関西の感覚で一刀両断するなよ・・・と思う。
太くて白い饂飩が汁で色濃く染まる様は確かに見苦しくは見えるが、
ずっとそれで生きてきた関東人としては「ドブ」とまで言わなくても・・・ねぇ(^_^;)
とは言え、美味しいモノが何でも揃う東京でも「讃岐うどん」のブームがきているらしく、
薄い汁に入ったうどんも随分簡単に食べられるようになったと聞く。
それでも横浜にはまだまだそんな波は弱いらしく、
気持ちよくサーフィンできるほどの店舗数は無いのが現実だ。
(元町にも讃岐うどん屋ができたが、論外の味で行く気にはなれない(-_-メ))
ちょっと疲れ気味だから、蕎麦か饂飩が食べたい・・・と思うのだが、
まともな蕎麦屋のクローズはかなり早い。
(20時に閉まるのは普通で、ちょっと長めに営業している所でも21時にはだいたい閉まるもの)
そして時計を見れば、すでに22時。
どうしても食いたきゃ、インスタント物に頼るしかないのかな・・・と思いつつ、
真剣にコンビニに飛び込むべきか、饂飩か蕎麦を置いてそうな飲み屋を探すか悩んでいた。
(飲み屋に行って飲まないわけは・・ないから逆効果・・か?(^_^;))
コンビニじゃあまりに寂しいので「其の弐」辺りでちょっとだけ摘むか・・と歩いていると、
「エラワンタイ」(タイ料理)の横に変な看板が出ているのが見えた。
粉屋重兵衛・・・・?
飲み屋??
まさかお好み焼き???
気になったら観察!
と店前まで行くと、なんと饂飩専門店らしい。
メニューが出ていて、意外にリーズナブルだと解るし、
営業が23時まで・・とあるから、まだ食べる事は可能のようだ。
「粉屋重兵衛」
045-323-0141
横浜市神奈川区鶴屋町1-3
11:50〜14:00 17:00〜23:00(LO 22:30)
入口のメニューを見る限り、安目の料金設定でごく普通の饂飩屋としか想像できないが、
この時間に饂飩を食わせるなら何でも許す・・・と店内に入って驚いた。
50人近く入れそうな広さに、寿司用カウンターみたいな席まであって、
そこそこの高級感をうまく演出している造りなのだ。
何故気がつかなかったのだろう・・・
いや、変な看板は目に入っていたのだが、
まさかこんな奥に、純和風な饂飩専門店がある・・と想像できなかっただけだ。
(2階の奥だから店内を覗く事は不可能に近い)
いつの間にこんな店ができたのか・・・・と思って尋ねてみると、
まだできて2ヶ月経っていないのだとか。
どうりで他に客がいないわけだ。
まだまだこの店は、多くの人に知られていないのだろう。
「ざるうどん」が580円で「釜揚げうどん」が600円。
「海老天うどん」でも980円と安すぎず高すぎずの微妙な設定。
店の造りからは想像できない安さだが、普通の蕎麦屋とあまり変わらないから、
軽く一杯やってシメに饂飩・・という事にしてみた。
「久保田・千寿」 700円
「鯛と五色野菜のサラダ」 980円
「お造り」を・・とも思ったが、聞けば「鯛の切り身と新鮮な野菜が楽しめるサラダがある」と言うので、
その切り身を食べてから判断すればいい・・・と勧められるままオーダーした。
すると、無人だったカウンターに板前が出現し、ちゃんと鯛の切り身を引きだした。
演出のために作られたカウンターのせいか、切りにくそうな姿勢で切っているのが気になる。
お通しの後ではソレは、想像以上のボリュームと
綺麗に薄く引かれて野菜の上に飾られた鯛の切り身が美しく、チョイスが間違っていない事を確信した。
切り身はまぁまぁで、野菜も良い。
千寿が700円とは少し高めだが、西口価格と思えば仕方ない・・・か。
軽く飲んでするするっといくには蕎麦が良いと、本当は思ってるが、
ココには饂飩しか存在しないのだから、ちゃんと向き合ってみよう(^_^)。
初めての蕎麦屋なら「もり」しかないが、饂飩屋でそれに相当するのは何なんだろう・・ね。
「ざる」や「釜上げ」がそれに相当しそうだが、
その基本自体をよく食べていないので、比べようがない(爆)
関西系の饂飩っぽく汁の薄い感じに見える写真をぼ〜っと見ながら悩んでいたら、
猛然と「きつねうどん」が食べたくなってきた。
しかし・・・・
その横に載っている「だましあいうどん」(650円)はもっと気になる。
もしかしたら、「桜庵」でよく食べる「むじなそば」に似た物じゃないだろうか??
*むじなそば:油揚げと天かすがのった「きつね」+「たぬき」的そば
拍子木に切った蒲鉾やとろわかめ等ものる「冷やしむじな」はなかなかの絶品
「あの・・・この『ばかしあい』って?」
「これは、きつねうどんに天かすを足した物です。」
ビンゴ!
天麩羅の状態と上げの炊き方の両方が解って、汁の味も楽しめるってこれしかないじゃん(^_^)
「お待たせしました」と持ってきた饂飩を見て、ヤッパリ・・と思った。
殆ど透き通るような汁は讃岐饂飩を思わせる感じで、カツオの香りが高く柔らかい、
どちらかと言えば甘ささえ感じさせる穏やかな美味しさをしっかり主張している。
そして饂飩は、しっかりとした腰があって食べ応えがあり、値段より美味しいと正直に思えた。
何だ?これ??
と思うほど厚い油揚げは、しっかりと甘く、しかし嫌味でない心地よさを持っていて、
天かすは多くの油を纏いながら美味しい・・と素直に感じさせる良さを見せる。
油も悪くないし、饂飩も値段のわりには素晴らしい。
こりゃ、随分と有り難い店を見つけてしまったかも知れない・・・つニヤニヤしてしまった。
今度は、天麩羅盛り合わせ(海老×2+魚+野菜:1500円)で一杯飲んで、
「釜揚げうどん」をスルスルッといく事にしようかな(爆)
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