サイト内検索
AND OR
Photo Essay
Text Essay
Desktop Gallery
Guestbook
Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

金のピアス

「恋は奪い合うモノ、だけど愛は与えるモノ」と、誰かが言っていた。

それは心の話、気持の話・・・

そんな誰でも気付きそうな原則は、
その出会いが素晴らしい程、心の通いが確かな程、
持て余すほど大きく揺れる心に振り回されて見えなくなる。


「ねぇ・・・、私のどこが好き?」

「どこだろう・・
 目が好き・・
 声も好き・・
 考え方も好きだし、食べ物の趣味も好きだし・・
 身体の相性もいいし・・・
 って、何だよ、いきなり?」

「ちょっと訊きたくなった。」

「なんで?」

「何か、隠してない?」

「・・・何を??」

「昨日の夕方・・・
 残業だってメールくれたのに、
 違う場所で貴方を見たのよ。」

「・・・・」

「私一人きりでうちで食事じゃ寂しいから、
 久々に食べにいったのよ・・・クイーンズまで」

「あ・・・・」


仕事上の付き合いしかなかった彼女を、
一人きりの週末が寂しくてドライブに誘った事がキッカケだった。

一緒にいて、楽な事。
感じ方が、同じ方向だ・・という事。

些細な出来事に、同時に同じ反応をし、
何かの問題には、同じ答えを出す事に気がつく。

そして、二人で一緒に居る事が、一番幸せな事に同時に気がついた。


「何故彼処に居たか、言えないの?」

「・・・」

「仕事だと偽って、何をしてたの?」

「仕事してたよ」

「貴方の仕事に、あの場所は必要ないでしょ」

「仕事してたよ。
 俺がそう言ってるんだから、信じろよ」

「ふ・・・ん、小さい紙袋持って・・ね」


恋は、いつか冷める。
しかし、換わりに愛が育ってくる。

そして愛は、見返りを求めず与えるモノ・・・


「バレちゃ・・・しょうがないか。
 嘘ついてゴメンね。」

「やっぱり嘘だったんだ・・・
 やっぱり・・・」

「え?」

「貴方をクイーンズで見かけたって人が居たの。
 その人、貴方も知ってる人よ。
 でも、私は貴方のメールを見てたからおかしいなって思ったの。
 だから『そんなわけあるはずない』って言ったのよ。
 きっと見間違いだって・・・ 
 でも、貴方の格好って、絶対見間違えない格好だから・・・・」

「で、試してみたんだ・・・・」

「嘘なんてつかないって信じてたから、
 嘘なんて・・・・・」

「何もしてないよ、買い物だけ。
 すぐ会社に戻って仕事してた。」

「嘘ついた・・・・」

「だから、ゴメン。
 嘘ついてゴメン。」

「もう、イイ!
 嘘つき嫌い!!」

「ごめんなさい」

「ちょっと離れよう・・・・」

「え?
 ちょっと待ってよ、なんで??」

「当たり前でしょ、嘘つきなんかと一緒にいれない」

「・・・あのさ」

「ティファニーの袋なんか持って、ニヤニヤしながら歩いてないでよ」

「あのさ」

「誰にあげたか知らないけど、私に隠れて買うものなんて・・・」

「あのねぇ」

「もういい
 もう・・・・・」

「解ったよ。
 好きにすれば?」

「何、その言い方?」

「ねぇ、本当に忘れたの?」

「何を?」

「明日」

「何?」

「5月10日」

「・・・」

「僕らが、二人で一緒に歩こうって決めた日だよ」

「・・・・・・」

「君がずっと欲しがってたモノ・・・・何だったっけ?」

「え??????」

「一日早いけどいいや、取ってくるから待っててね」


まだ給料も安かった頃、二人で稼いでもあまり贅沢ができなくても一緒に何かをしているだけで幸せで、
出会った頃のワクワクした気持が冷えても、さらに相手を深く好きになっていく毎日を過ごしていた。

彼女は、どこかで冷えていく自分の気持ちに虞を抱き、
一緒に居られない時間を極力短くしようともがいていたが、
私は、冷静になればなるほど好きな部分が見えてくる事に喜びと幸せを感じていた。

だから「足りない・・」と訴える彼女の気持ちを満たすために、
できる事を効率よく最大限にできるように努力をするのだが、
彼女から見ればその冷静さに、さらに不安な気分が膨れてしまったらしい。


「プレゼントって思いがけない方が嬉しいでしょ?
 そして、本当に欲しかったモノだったら、もっと嬉しいんじゃない?」

「金の・・・ピアス」

「そう、眺めて溜息ついてたヤツ・・・」

「・・・私の・・だったの?」

「そう。
 驚かしたかったから、黙っていただけだよ。
 仕事してるってメール打って買い物に行ったのは確かに嘘だったけど・・・」

「ありがとう・・・」

「ねぇ、きいていい?」

「・・・なぁに?」

「俺のドコが好き?」

「・・全部」

「良いとこばっかじゃないぜ?
 嘘もつくし、だらしないし・・・・」

「良いとこも悪いとこもひっくるめて全部好き」

「信じられない事も?」

「・・・・意地悪」


良いところも悪いところも好きって、なかなか言えない。
でも、とらえどころのない感情は、時としてそういう表現を使わせる。

大事なのは愛情。

お互いが与えあう関係ができてやっと、
パートナーと言える関係になる。

でも、寂しいとつい、与えずに欲しがってしまうのは、何故なんだろうね・・・・

 
 
サイト内の画像・テキスト等の無断利用・転載は禁じます。
Hisashi Wakao, a member of KENTAUROS all rights reserved. / Web design Shigeyuki Nakama
某若夢話は横浜飛天双○能を応援しています。