「ねぇ、どう?」
「ちょっとシャドーが派手じゃない?」
「おかしい?」
「う・・ん、派手かなぁって程度」
「そ、・・・そんなもんか」
「どうしてそんなに派手にしたの?」
「目が腫れちゃったからよ」
「どうしたの?」
「アナタのせいじゃない。」
「あっ・・・ゴメン・・・眠れなかったんだ」
「ねぇ、そろそろ考えてくれない?」
「解ってる」
「いつも同じ答えね」
「しょうがないだろ。
順番って物があるんだから・・・」
「そうね、アナタの言う事はいつも正しいわ。
でも、解ってても、耐えられない日はあるのよ。」
ガ〜っとやかましく音を立てるエアコン。
ヒンヤリとし過ぎた風が、部屋をすっかり凍らせているようだ。
「あたし寒いと寝られないの。 ど〜しても。」
「だからいつも我慢して窓開けて耐えてるだろ?
でも、俺だって蒸し暑いとダメなんだよ。
だから、早番の時だけはかけさせてもらってんじゃん」
「だから、もうちょっとコントロールの効く新しいの買って!ってば!!」
「わかった。 努力するから、もうちょっと待って。」
久々に蒸し暑くてエアコンをかけ、湿気が取れた頃には外が凄く冷えていた。
前の住人が取り付けたオフィス用のエアコンは、
すきま風がガンガン流れる我が家でも呆れる程に冷やしてくれる。
暑い夏は、エアコンをガンガンにかけて布団にくるまって寝るのが一番好きだが、
そんな寝方をすると同室する女性は必ずと言っていいほど、冷えすぎだと怒るのが不思議だ。
で、結局今は、一人で寝る事が一番楽だと思っている。
(感情的には寂しいけど)
「寒み〜んだよ! 誰だ? 温度を13度とかに設定したのは?」
「それは・・・」
我が会社のオフィスでは人一倍暑がりのスタッフが、
外回りから帰ってくるとエアコンの温度設定を黙って最低に変えるのだ。
そしてオフィスがすっかり冷えて非難の声が上がる時は、その犯人は居ない事が多い。
皆が彼の方を向いた時、やっぱり彼は外へ飛び出した後だった。
でも、無理もない・・・と思う。
蒸し暑さの中、ネクタイを絞めてジャケットを着て走り回っているからだ。
毎日窓を背にしながらネクタイを絞めていると、
私も蒸し暑い日は彼ほどではなくてもエアコンに頼る。
と言うか、エアコンの中に居る方が好きだったりするので、彼の気持ちは良くわかるのだ。
しかし、女性陣にとってはエアコンの風は辛いようで、
室内用に軽い上着を着たり、膝掛けを用意したり・・・と申し訳ない努力をさせてもいる。
ただ、彼女達は「寒くてタマラン」と文句は言わない。
人一倍汗かきの彼が、人一倍駆けずり回っている事を皆も知っているから、
「やられた・・」とボヤキながらも、何となく許してしまっているのが現状だ。
実際問題、ネクタイを締め形状記憶Yシャツなんて着ていれば、暑いのは当たり前。
そして都市部はエアコンの排気でヒートアイランド化し、スーツ姿はおおよそ夏向きではない。
ちょっと蒸し暑くなっただけでこんなに暑く感じるのだから、
今から夏の心配を真剣にしてしまうのも無理はない・・・か。
もう少しエアコンの温度設定を上げよう・・という声もでるが、
そういう声を上げる人間はエアコンの吹き出し口に近い場所に座っていたり、
あまり外に出ない仕事をしている事が多い。
だから、世の中がネクタイ姿をビジネスに求めているうちは、
外回りの人間を優先すべきだ・・・と私は思っている。
横浜市の市庁舎は、夏期、エアコンの設定温度を28度と高くし、
ネクタイレスを推奨するやり方を去年行った。
一番堅いと言われている役所がそういうスタイルを取る時代、
そろそろビジネスシーンでもネクタイレスを考える時期が来ているように思う。
原発問題で電力不足が予測される今年、エアコンをあまり使えなくなる事は想像できるから、
社会的に真夏のネクタイレス運動が起きないかな・・・・とつい願ったりするのだが(^_^;)
|