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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

「新規開発する気はな〜い?」

「あるある、どこどこ?」

「伊勢佐木町なんだけど、ちっと恐い場所」

「へ?」

「最近彼処って、柄悪くて・・・」

「確かに。
 で、バカ除けに俺を使おう・・と?」

「ご馳走するから」

「乗った!」


大昔、伊勢ブラと称して伊勢佐木町を歩くのが粋だった事もあるこの街は、
観光客がすっかり失せて不思議な世界に変化しつつある。

近くに風俗営業を主とする地域があるのもそんな変化に拍車をかけるが、
アジア系外国人が多く住む事もあって、横浜らしい無国籍地区を形成しているのだ。

2丁目あたりから日ノ出町方向は韓国&タイ料理店が多く、日本語表記が一切無い店も多い。
腹をくくって飛び込めば本格的な料理が楽しめるのも事実だが、事情通と一緒に居ないと恐怖が先に立つ。

彼女がどこでどんな店を見つけたか知らないが、タイ料理だったら嫌だな・・・とは思った。
(下痢の原因を見つけても、本格的過ぎる料理には気が抜けないからね(^_^;))


「で、何を食べる?」

「和食」

「和食??」

「そう、ちょっと気になる店があるって、職場の人に聞いたのよ」

「まさか、山田屋じゃないだろね?」

「そんな名前じゃないよ。
 山田屋って?」

「よく通ったザ・ヨコの地下にある店の本店。
 有隣堂の裏の道沿いにあるんだ。 
 河豚が有名だけど・・・」

「これだけ暖かいと、もう河豚はないでしょ。
 それに鍋物、この時期食べたくなる??」


はいはい、なりません。

Tシャツにカットオフでズンズン歩くと汗ばむ季節。
そんな気候に鍋物は、誰も食べたくないだろう・・・と認めます。

車が通らなくなった伊勢佐木町にはストリートミュージシャンが多い。
「ゆず」がここから出た事もあってか、今日も若者達があちこちで歌声を上げる。

車が通らない分、テーブルも多く出せる・・とスターバックスも派手な営業を行い、
似たようなセミオープンカフェが、あちこちにと出店したいた。
(最近横浜では、セミオープンカフェが多くでき、気になる数店に何時行こうかと悩んでいる)

「たぶんこのビル・・・あ、大きな看板が出てるよ」

「お〜い、エクセレントビルかよ・・・」

「な〜に?」

「エクセレントって、飲み屋とか小さいスナックとかが多いってイメージ強くて・・・」
 
「そういうヤな感じだったら、入口で帰ればいいじゃない」


安っぽい店名表示板に「懐」の字を見つけ、2階には他の店舗が無い事も確認した。
大きいビルではないが、2階ワンフロアで営業するなら、それなりのクラスである事は想像できる。

そしてエレベータのドアが開いたら、ビルの外観からは想像のつかない落ち着いた空間が待っていた。


「カジュアル割烹 懐」
 045-262-1928
 横浜市中区長者町6-111 横浜エクセレントビル8 2階
 (月〜水) 17:00〜24:00
 (木〜土) 17:00〜29:00
  日曜休

暗い照明に効果的なダウンライト。
木を前面に出した調度は、穏やかな空気を演出している。

厨房前カウンター6席とカウンター風テーブル席が16席ほどあり、
さらに小上がりの部屋には4人テーブルが4つ以上ありそうに見えた。

 
丁寧な応対のウェイターに勧められたのは窓際の席だが、
窓には菱形に組まれた網状の鉄の衝立が設置され、外の様子は朧気ながらにしか見る事ができなかった。

でもそれが決して嫌味ではなく、かえって安心感を与えてくれる事が不思議で面白い。


「ジャコのハリハリサラダ」(ジャコ・大根・ハリハリ・豆腐)680円
「揚げ出し盛り合わせ」(豆腐・餅・胡麻豆腐)680円
「京味噌と茄子のピザ」750円
「牛ひれ西京焼」1000円


ハーフ&ハーフ(500円)で喉を潤しつつ、お互いの近況を話しているとサラダが出てきた。


「デカッ・・・」

「結構、量がありそう・・」

「大丈夫かな、結構頼んじゃったよ」


直径30センチ近い皿に山となったサラダは、
刺身のツマのように切られた大根がそのボリュームアップに功を奏しただけの事。

いつもお印ばかりのサラダに慣れているから、そのボリュームにちょっとばかりたじろいでしまったが、
値段から考える量が嬉しい誤算をする事は歓迎すべき事だと思った。


「揚げ出しの盛り合わせ」は胡麻豆腐の揚げ出しが面白く、
「牛ひれ西京焼」はそれなりの味だったのだが、「京味噌と茄子のピザ」には二人とも爆笑した。

長方形の平皿に8等分に切られて盛られたそのピザは、
台は恐ろしく薄く、輪切りにした茄子の上にチーズが溶けて見るからに美味しそう・・・

だが、一口食べると、八丁味噌の味がド〜ンと口の中に広がって・・・


「・・・・どう?」

「・・・・味噌田楽にチーズかけたみたい・・・」

「俺的には、これもアリ・・かなって思うけど」

「私的には・・・いただけないかな・・・」

「日本酒でも頂いて、流し込みますか」

「そうしますか。
 それと、お刺身頼まなかったから『海鮮ちらし』を一個取って分けて食べない?」

「そんなに食べられる・・の?」

「大丈夫でしょ、ここに大食らいが一人いるし」


「腰乃景虎 龍」グラス 450円
「八海山 吟醸」グラス 680円
「海鮮ちらし」 860円

ここの日本酒は、ワイングラスか合売りになるが、
お腹が苦しい状況ではグラス一杯が丁度良い感じだ。

「海鮮ちらし」は小丼にかなりの刺身が載り、味噌汁までつく豪華な物。
ただ、ご飯が少し固めで冷たいのが、唯一の欠点か・・・・(お茶漬け用に炊いたものだろう)

酒が切れたのを見て、店員がお茶を持ってくる。
食事を分けて食べる・・と気付けば、すぐ取り皿を持ってくる。
食事が終わる頃、サービスだ・・とデザートを持ってくる。

最近あまり感じられない気配りを感じさせる店だ・・と、素直に喜べる。


「ここ、当たりだったね」

「そうだね。
 久々に居心地の良い店だと思うよ。」

「普段、ドレくらい混んでるか・・が問題かしら」

「どうだろ、こんなクオリティの店を求める客が、この界隈に多く居るだろうか・・・」

「店員が良いって大事よね。
 味はちょっとな・・・て思う部分もあったけど、
 落ち着いてゆっくり食べられるって店、ここの所行ってなかったから、かなり満足。」

「でさ・・
 誰にこの店の事聞いたの?」

「貴方の知らない人よ」

「ふ〜ん・・・知らない人・・・ね」

「そう・・・関係ない人よ。」

「いつもだったら、俺の知らない人間の名字でも喋るのにね」

「酔っぱらっちゃったぁ・・・帰ろうよ」


どうや今宵も、一人きりで飲む事になりそうだ(^_^;)

 
 
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