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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

ロブロイ

「ロブロイ」と言えば18世紀のスコットランド に実在した伝説的英雄の名だから、
バーにその名を冠する場合、少なくともスコッチは充実しているだろう・・と想像できる。

過去には「ロブロイ」という名のブレンデッドウィスキーが存在し、
「マンハッタン」のベースをスコッチにしたカクテルも「ロブロイ」と言うから、
反町にその名を持つ店を見つけた時は、思わずガッツポーズをしたくらい嬉しかった。

何故なら当時、ウィスキーはバーボンブームで廃れっきりの状態で、
何処へ行ってもまともなスコッチが揃わない事が多かったからだ。


「・・・例えば、飲食店に行く時ドコでその店の良し悪しを決めるんですか?」

「俺の場合?」

「えぇ」

「そうだね・・・
 一番は『コストパフォーマンス』だね」

「そうなんですか?
 味とかが一番だと思いましたが」

「基本は、コストだよ。
 客単価が1000円の店と10000円の店を比べるわけにいかないだろ?
 要は、客単価によって我慢できるレベルがあって、
 それを超えるか超えないかで、大筋を判断しちゃうって事なのさ」

「確かに、そうですね。」

「で、次に空気・・・かな」

「空気・・・ですか?」

「居心地の良さとか、雰囲気とか・・・そうか、ちょっと抽象的だね。
 簡単に見分けるなら、トイレの状態を見るんだな」

「綺麗さ? ですか?」

「トイレってさ、その店が狙う客層は内装で解り、
 その清潔さで実際に来てる客層がわかるのさ。」

「え?」

「店の内装に関わるコンセプトは、最も狭くて個人的な空間になるトイレには端的に現れるモノ。
 そして清潔さは、清掃サイクルの問題もあるが、使う人間によって大きく変化するモノ。
 つまり、トイレが汚い場合はそういう客ばかりが集ってるって事なのさ。」

「なるほど」

「誰かが次に使う場所を、その人のために汚さないように使う気遣いができていれば、
 店の中で傍若無人に振る舞ったりできるわけがないだろ?
 そういう気遣いのできない店には、あまり居たくないんだよ。」


「RobRoy」に通いだして、もうドレくらいになるだろう・・・

気がつけば「何時からだっけ?」と自分でも悩む位時間だけは過ぎ去ったが、
その空気は私的に良い方向へ変化し、私にとっての終着店として位置づけているのは周知の事実。

なのに、この店の事をちゃんと紹介した事がないのは
「大事にしている店ほど隠したい症候群」があるからだろうか(^_^;)


「あまりに入りにくいってお客さんが多いので、
 入口のサングラスを上半分だけ外してみたんですよ」

「なるほど、それで外から見ても、店内が明るく見えるんだね。」

「ホントは、あまり色々な客に来て欲しくないんですけど・・」

「へぇ  何故?」

「所謂『スナック』と勘違いする人とか、いきなり『酎ハイ!』とか叫ぶ人とかは、ちょっと・・」


「RobRoy」は、10人も入ればいっぱいになる店。
なのに、驚く量の酒が揃い、終売となった珍しいボトルでさえさりげなく置いてある。

色々なモルトを飲める店が珍しい時から店名に恥じない品揃えを誇っていたからこそ、
この店を大切にする気持になれたのだが、それはマスターが言うような客が来ない事も大きいと思う。


私が店を選ぶ基準は、

(1)基本的にフードが美味しい
(2)客層が良い
(3)望むモノが揃う
(4)店員と話ができる

という点を満たす事だが、そんな条件を満たす店はなかなか無いのが現実だ。
(勿論大前提は、コストパフォーマンスだけどね)


「今日さ・・・
 日曜なのに開いてるから、ビックリして思わず入っちゃったよ」

「あはは
 やっぱり不景気で、客入りの波が大き過ぎるんですよ。
 だから、給料日後の日曜は必ず開ける事にしたんです。」

「個人的には混むのは嫌だけど、ここが無くなるのはもっと辛いから
 給料日後の日曜は、忘れなかったら来る事にしよう」

「酔いつぶれなかったら・・でしょ?」

「で、エドラダワーの次はどうしよう?」

「最小のポットスチルの次ですから最大へ行きますか?」

「う・・・ん、それも良いけど、もうちょっとピーティーな方向がいいな・・」


酒場では酒の話。
料理屋では料理の話。

本来は、それだけが許される会話だと思う。
(店の造りの問題はあるが)

バーテンダーと1対1のような状態ならどんな話をしても良いが、
他人のグチや仲間内だけの盛り上がりを聞かされるのは、不愉快にしかならないはず。

だが、「RobRoy」には、そんな酒場にありがちな喧噪があまり無い。


「桜エビのピザ食べません?」

「俺の基本は・・・」

「ガーリック・オニオン・ツナ・ハラペーニョですよね?
 でも、期限限定で入った桜エビが美味しいんですよ。
 久々に自分で作って感動しました。」

「解りました。
 お願いします。」


そうだ、マスターは勧め上手でもあったんだ(爆)

 
 
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