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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

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その店は、中華街の外れにひっそり存在していた。

昼間はまったく・・と言っていいほど目につかず、
夜、ちょっとだけライトアップしている事によって、はじめて店があるんだ・・と理解できる。

一軒屋を改造したような店で、しかも歩行者しか通れない通路に入り口かあるため、
車で前を通ってもまず気がつかない。

いや、その歩行者通路から見ても、何の店だか(店なのかどうかは明らかに表札と違う看板があるから解るだけ)
理解不能で、窓すら存在しない怪しさ振りまき過ぎなのだ。

で、こんな店を見落とすワケはなく、当然の如く突撃したのは去年の事だった。


恐る恐る引き戸を開けると、カウンターとテーブル席×2がある料理屋のよう。
目につかない料理屋なら、隠れ家として使える・・とその時点で嬉しくなる。

店の内部には常連とおぼしき中年の男女が数人居て、一見のこちらは角のテーブル席へ案内された。

初めての時はコースを頼む・・・という原則に則り、3600円のコースとオーダーする・・・

料理3品と食事という構成のそれは見た目とは裏腹に砂糖を使いすぎのべったりと濃い味付けで、
店の造りとはそぐわない品の無い物に思えた。

見れば料理人は、50代を越えた感じの眼鏡オヤジ。

年季の入った料理人ならこんな味付けをするワケはなく
ひょっとしたら脱サラか?・・とさえ感じる。

ただ、その時点でダメは出したくなかった。
何故なら、店が凄く良いのだ。

だから、6ヶ月ほど様子を見て、もう一度行って判断しようと思った。


「北東南西・NEWS」
 横浜市中区山下町106


今日、友人達と連れだって、その店に行ってみた。

実はもっと早く行きたかったのだが、暮から正月にかけて1ヶ月近く休んでいて、
行くタイミングを逸していたのだ。

料理屋が1ヶ月休める・・という事は、
板前が居なくなったか商売しなくてもやっていける余裕があるかのどっちかだ。

と言うか、そのまま閉めちゃうのかな・・とさえ思っていたのだが、
今日現在営業しているよう・・ではある。


中に入ると、19時だというのに客は誰もいない。
こっちは3人なので、以前座ったテーブル席を占領する事にした。

あれ?
板前が替わってるぞ??

やっぱり、内部で何かあった・・かな?

私とは同年代に見える板前と、
いかにも慣れていない店員が一人で切り盛りしているようだ。


メニューを見ると変わっていないが、今日の参加者一人はまったくの下戸。
飲んべえの二人は肴を頼み、下戸は定食(2000円)をオーダーする事にした。

しかしこの店は、料理店なのに日本酒はお仕着せの地酒しかなく、
板前に尋ねても「新潟の純米酒で・・」としか言わない。

仕方なく飲んべえは冷酒を、下戸は日本茶をオーダーするのだが、
ここが、この店のウィークポイントである事も変わっていないらしい。

この店は、茶藝館として有名な「三希堂」の系列店で、中国茶はそれなりに揃っている。
器も中国茶器然とした物が多く使われ、日本酒も朱泥の湯飲みで出されるのだが、
どうにも和食には合わないように感じてしまう。


「牛肉の土佐造り」1200円
「冷や奴」500円
「天麩羅盛り合わせ」1000円
「筍の炊き合わせ」800円
「おひたし」500円
「夜定食」2000円(小鉢×2 香の物 主菜(魚煮付)ご飯 汁物)

お通しとして出たのは酢味噌のかかった小魚(酢〆)と野菜。
味は前より格段に良くなったのだが、それでも変なバランスを感じる。

日本酒は純米酒だと言うが、アル添香強めに感じる普通の酒で、
小さめの湯飲みになみなみと注がれても量の少なさは疑いようもない。

「三奇堂」もコストパフォーマンスの悪さが気になる店だから、経営方針によるものだろうが、
良い物を高く売るにはそのレベルに問題を感じるのは事実だ。


出てきた肴を食べると、以前より随分マトモになっている。
コレなら、使えるかも知れない・・・

料金に見合った味に近くなった気がする程度の味だが、
この店自体が持つ隠れ家的ポジションを考えれば、納得できるもの。

やっぱり待って良かったかも知れない(^_^)


酒量が増えて、肴もオーダーした物が順調に出され、
酔って良い調子になっている二人に対し、一人だけ不機嫌さを露にしだした下戸。

そう、奴のオーダーした定食は、何故かちっとも出てくる様子が無い。
幾ら何でもなぁ・・と気付いた頃、20代の女性二人連れが店内に入ってきた。

「おっしゃれ〜」「こんな店が有るなんて知らなかった〜」と二人は一通り騒ぎ、
そして下戸の頼んだ物と同じ「夜定食」をオーダーする・・・
と同時に、飲んべえが下戸に気遣ってこう叫んだ。


「すいません!
 定食、オーダー入ってますよね?」


こういう事ってタマにある。

飲んべえの集団に一人だけ飲まない奴が居ると、
そいつの食事は飲んでる連中の食事に合わされてしまって出てこないってパターンは、有りがちなのだ。


「大丈夫だよ。
 今、あの小娘達の料理にかかったから、一緒に作るはず。
 君らは気にしないで飲んでよ。」

「この肴、そこそこいけるぜ?
 ちょっと摘めば?」

「定食だから、食いきれないといけないしな・・・」


「筍の炊き合わせ」は筍と蕗を炊いた物だが、大きいわりにはえぐみも無く、
季節の味を楽しめて嬉しいし、「天麩羅盛り合わせ」はメゴチと野菜で量多目に出してくれた。


「これで衣がもっとサクサクしてればなぁ・・・」

「1000円の盛り合わせなんだから、文句言ってはダメでしょ」

「それにしても、蕎麦屋の衣みたいだよ?」

「専門店と比べるなって・・・」

「あれ?
 これで肴、終わりだよな?」


そう、肴5品が出そろってもまだ、下戸の頼んだ「夜定食」は出て来ないのだ。
女性客の方を見ればとっくに料理は出されていて、明らかに作っていない。

ムカッと来た。

下戸はお茶二杯で何も食わずに待っている。
しかも一度、出せと遠回しに声をかけた。


「夜定食はまだですか?
 ずっと待って居るのですが?」


と思わず口から出た。
すると慌てて板前が料理にかかる。

これから作るのかい?
すでに小一時間経っているんだぞ?


「何かさ、もう出たい気分だから、オーダー取り消して出る?」

「いや、今作ってるから、待とうよ」

「そうだな・・・」


こうなると、気分は悪い。

酒も終わりそうだが、冷えた二杯目のお茶を置きっぱなしにしている下戸が可哀想で、
飲んべえ組もじっと待つ事にした・・・・・が、なかなか料理が出来上がってこない。

もういいや・・という気分に三人がなりだした頃やっと、定食が出てきた。


何だこれ?

おひたしの小鉢と山芋の切った物の小鉢に漬け物が少々。
魚の煮付けはくたっとした感じで、それにご飯と味噌汁。

これだけで2000円かい?

どっかの定食屋の煮魚定食の方がまだマシじゃねぇの?
2000円の定食の小鉢なら、もうちょっと気を使えよ!!

結局下戸は、待たされ過ぎと怒りで食欲を無くし、
定食を半分も食う事ができなくなってしまった。

そうなるともう、この店に居る意味はない。
即座に勘定を頼むと、何と1万円オーバー・・・・

酒は二人で4杯飲んだが、量的にも味的にも大した金額とは考えられない。
だとしたらお通しが高かったのかも知れないが、それにしても高い・・・と思うのだ。


確かに店員は明らかに素人に見える。
だからこそ、食事を待っているぞ・・と解るように声をかけた。

料理の腕はまぁまぁな板前だから、二組しか客が居ない店にいて、
先にオーダーした客からオーダー確認が来たら、その意味位わかるはずだ。
解る奴だったら、お茶のお代わりをする時点で、料理を作るかどうか尋ねさせるはずだ。

なのに奴は、目の前の小娘達にだけ定食を作り、先客の我々を無視した。
そして「料理が遅れて申し訳ない」と、詫びの一言もない。


まぁ、気がつかないんだろう。
料理を一緒に食べさせよう・・と気を遣ったのかも知れない。

だが、カウンターで料理を出す店に居るなら、
客の考えを想像できなくてどうするんだ?

厨房の中でしか料理した事が無いのかもしれないが、
こっちは助け船を出しているんだぜ?


この店は久々に
「二度と行かない店リスト」に載る事だろう。

 
 
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