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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

KOTOHOGI

気に入っている店へ誰かを連れていくのは楽しい・・・・
と同時に、不安も膨らむ。

何故なら、気に入っていれば入るほどその店への期待を煽るような話をするもので、
勿論自分自身もその味をとっても期待するわけなのだが、
当然「店が無くなっていたらどうしよう」とか「店に入れなかったらその後どうしよう」と考えるものだし、
自分が滅茶苦茶気に入っている味や雰囲気が連れに全然ヒットしなかったら・・とも思うのだ。


「たまには美味い焼鳥でも食わない?」

「オッいいねぇ」

「これがさ、美味いんだよ、ホント。
 値段は安い部類だと思うけど、味がいいから絶対安いって後で思うんだな」

「本格的って事?」

「そう、鳥料理店であって、焼鳥に力が入ってる感じで、
 酒が安いんだよ、ホント」


そう、こんな感じで、友人も自分も食べる気分を盛り上げつつ向かった店は「纜(ともづな)」
(反町では有名な鳥専門店)
今流行りの焼酎も、この店ではバカみたいに安い・・・と飲み心まで刺激しながらドアを開けた。

席が随分空いてるな・・・・と思いながら、こっちが3人だと指で合図すると・・・
「すいません、今は予約の席がいっぱいで、ご案内できません」ときた。

そう言われるまで、その店で食べられない・・と想像もしていなかった。
すっかり頭の中では焼鳥が飛んでいたのだ。

席が空きそうなのは2時間後くらい・・・と聞かされて、少しばかり途方にくれたが、
とぼとぼと駅方向に歩いていくうちに気がついた。

そうだ、あの店があったじゃないか(^_^)


「wine&chops KOTOHOGI」
 045-317-5517/045-319-0955
 横浜市神奈川区泉町14-1


時間が早いから、絶対空いているはずだ・・・と道の向こうを眺めると客は居ない。

よし!
コレでどうにか、美味しい食事にありつけるはずだ。

明日は頼まれの撮影があるため時間が読めないから、誕生日の前夜祭じゃないけど
Tシャツ発送の手伝いをしてくれた友人達とちょっと豪勢に食べる事にしたのだ。


「何かお飲みになりますか?」

「日本酒は何がありますか?」

「申し訳ありません。
 今日は、日本酒がございません」

「それでは生ビールで」


土曜の夕方。
道の向こう側にある「纜」は予約でいっぱいなのに、この店には客がいない。

どうしてだろうな・・・と悩みつつメニューを開けて気がついた。
メニューが変わってる・・・・と。


「鮪とアボガドの生春巻き」
「カンパチと野菜のサラダ」
「活・車海老のお造り」
「地鶏と新ジャガの焼き物」
「太巻KOTOHHOGI風」
「山芋と鰻のぶっかけ讃岐うどん」


いつもと変わらないような物をオーダーしたのだが、
ちょっとだけテイストが変わっている。

前は無理に和物を洋風にしている気がしたのだが、
今日の料理は和風の新しいスタイルを目指しているように見えるのだ。

味は、前に比べて迷いがなく、実験的な味もしないで美味しいと思える。
客が少ないおかげで、料理が出てこない・・・といった不手際も無い。

サラダは客席で丁寧に混ぜられ、生春巻きは相変わらず綺麗な盛り方で、
随分と進歩したように見えた。


「活・車海老でございます。
 こちらの頭は素揚げしておりますので、暖かいうちにお召し上がりください」

と出されたお造りは、綺麗に切り揃えられて美味しさを美しさの中に表現しようとしているようだ。

だが、懐石料理を出す店で使う瞬間的に表面を湯で絞め氷水で冷やす技を使っていないため、
身には活海老独特の固さが残り、その分味に影響しているのは否めない。

1500円で4尾のお造りだから、これ以上求めては可哀想か・・・とも思うが、
料理の方向性がシッカリした分、そういうところに目がいくのは仕方がない。
でも、歓迎すべき事実ではある。


バチバチッと油が跳ねる音を立てた鉄鍋が運ばれてくる。

鍋なんて頼んだっけ〜?と悩みながら見ていると、その熱々の鉄鍋の中には
地鶏と新ジャガに細かく切った玉葱を少量と皮が付いているニンニクが合わさり
生のローズマリーで香り付けされて、食欲をこれでもか・・と刺激する料理が出来上がりつつあったのだ。


「にんにくも〜らい!」

「こういうのって柔らかくて甘いんだよな・・・」

「ダメだよ、明日たくさんの人に会う人は。」

「一かけでいいから食べてぇ〜」


明日は知り合いの婚礼がある。

その全てを撮影して欲しい・・と言われているので、にんにくは食べられないと理解できるが、
ホクホクとした焼き上がりを見せるニンニクが美味しそうでたまらない。

地鶏もジャガイモの上手く火が通ってなかなか良い出来上がりを見せているが、
何故、鉄鍋で・・・・と考えていて気がついた。

これはダッチオーブンだ・・・と。

ローズマリーを使う理由もここにあって、今回の料理の中で唯一、洋を感じさせる料理だと言える。


以前この店は、スタンダードメニューに加えて、本日お薦めメニューが存在していた。

だが今日は、スタンダードメニューは無く、3月29日と日付の付いたメニューだけが出されていた。
それを見てメニューが変わったと感じたのだが、それには別の意味がある・・と解った。

無駄に品目を増やす事は、コストを上げるだけでなく、味の方向性もブレてしまいやすいのだ。

ワインを飲物のメインにしているクセに、料理は和テイストとイタリアンのごちゃ混ぜだった以前に比べ、
和テイストをしっかり全面に出し、仕入れ量を押さえて無駄を削って質を上げる。

そんな戦略が見える味は、私にとっては歓迎すべき方向であり、
友人達もその味に満足してくれた。


自分ができる事を、欲張りに幅広く見せるのはどうだろう・・・

一度にできる事は限られているのに全てができるように思わせるのは、
結果的に何も出来ない事態を招くモトだ。

ハッタリやホラで飾るよりはましだが、自らの限界を理解しないで派手に飾ると、
その実力を発揮できずに終わる事実だけが現実として認知されてしまうだろう。

だから「能ある鷹は爪を隠す」という言葉も生まれるわけで・・・


いずれにしろ、日本蕎麦でペペロンチーノを作るような愚行をやめて、
その日仕入れられたモノで料理を出すようにしたのは、正解だと思う。

次に訪れるのが、楽しみになった夜だった。

 
 
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