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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

腐れ縁

「何をするにしても、3年待てなくちゃダメだよ」

「3年ですか?」

「そう、最初の一年は自力で生き延び、
 二年目はそれまでの積み重ねで生き延び、
 三年目でやっと今の自分の力が発揮できるようになるんだ。」

「厳しいですね。」

「そうだよ。
 会社だって個人営業だって、同じさ。
 今食えるのは今までの努力の結果で、来年喰うために今必死に走るんだろ?」

「来年・・・て言うか、再来年って言うか・・・」

「例えば、自分で事業を始めるとしたら、
 一年間200万で食いつなぐ感覚でいないとダメだぜ」

「200万か・・・・
 ま、贅沢しなきゃ、どうにかなる数字ですね」

「そして月に休むのは1〜2回位で動けば、
 3年後には辛うじて食っていけるようになれるかもな」


個人で会社をやっている先輩と酒を飲む。

今の職場がかかえる危機的状況を愚痴ると、そんな話になった。


「俺さ、『社長募集』って広告を出したいんだよ」

「そう言えば、子供には跡を継がせないって言ってましたね」

「会社の中に血縁者が居る会社は、ダメだな。
 俺は子供が可愛いから、絶対ロクな事にはならないって解ってるんだ」

「前、居た会社がそうだったんでしょ?」

「それもあるな・・・・
 でも、俺は、今持っているコネクションを誰かに引き継いでもらいたいし、
 その任せた奴も、ちゃんと次に繋ぐ事を考えてキッチリ会社をキープしてもらいたいんだよ」

「雇った社長もまた、次に繋ぐ事を考えて生きろ・・・と?」

「まぁ、責任感の問題だよ。
 四年の任期で自分が居る間だけ食っていければいい・・・なんて野郎はダメって事さ」


仕事ができる・・・という事は、全て後になって解る事。

今、これだけできています・・・というのは主観的な物で、
客観的評価は、第三者が後で下してくれるものなのだ。

目先の事だけを見て、場当たり的な判断でハンドリングすれば、
仕事は将来性を失ってどんどん先細っていくものだ。

だが、世の中には、今、コレだけのモノが欲しい・・・と思っている人間が多すぎるのだ。


「お前さ、会社が気にくわないからって、一時期の感情で辞めたりするなよ」

「何言ってんですか、急に。」

「まぁ、お前の事だから、無計画に辞めたりしないだろうけどな」

「私は『石橋を叩いて壊し、渡らないタイプ』ですよ? 知ってるでしょ??」

「無駄は嫌うがな」

「効率第一でしょ?」

「結果主義か・・・」

「自分で判断してダメなモノはダメとしてるだけです。
 その代わり、大丈夫な感触を感じれば、誰が何て言おうと実現させますけどね」

「いや、何かお前さ、タイミング計ってるようにも見えるからさ、
 こんな時期、嫌な事を背負わされたキッカケで先走るんじゃないかと思ってさ」

「あはは
 ナイナイ。無駄は嫌いなんです。
 当然、遠回りもね」

「その仕事の仕方で、よくケンカしたよなぁ・・・」

「仕事でケンカできないような人間は信用しませんから」

「だから、嫌われんだよ」

「相手が、見る目、無いだけですよ」


酔っぱらいは質が悪い。

ただでさえ失辣な二人の会話は、
ネットを挟んでボレーで打ち合うテニスのように勢いを増していく。

でも、最近は、こんな小気味よい会話を会社ではしていない。
そう気づいて、少し悲しくなる。

表面的に穏やかな関係は、決して本心を見せないやり方の具現でもあり、
物事のスピードを悪戯に下げるだけの環境にしか思えないのだ。


「最近、骨のある奴、減ったよなぁ」

「確かに・・・」

「ツマンナイだろ?」

「確かに・・・」

「んじゃ、飲み比べすっか?」

「もう、二人で1升7合なんてのみませんからね」

「あれは、飲みすぎだった」

「確かに・・・」


人と人との出会いは不思議だ。

自分の意志とは関係なしに、縁によって出会いが仕組まれている。
そしてその縁が本物なら、必ずどこかで一緒になるようにできているらしい。

転機を迎える時、何故か彼とは必ず絡んだ。

その事実が、
今こうやって歳を超えた付き合いを実現している。


「しかし、お前とは腐れ縁だよなぁ・・・」

「腐ってませんって」

「いや、お前が腐ってる時に限って、俺と会ってるだろ?」

 
 
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