そのクラブがまだ伝説の物としか認識されていなかった頃、
運転試験場でそのエンブレムがプリントされたTシャツを着ているヤツがいた。
胸のワンポイントは素っ気なかったが、背中は非常に派手で注目を浴びている。
その意味が解らずに派手さに惹かれて見ている者や、
マンガで紹介された現物が綺麗な色に彩られている事に驚いている者がいて、
なんだかヤツの廻りだけ空気が違って見えていた。
今回、某若夢話のTシャツを作るにあたって、バックプリントをしっかりと目に残るサイズで・・・・
と考えたのは、その時感じた独特の空気を纏う楽しみがあっていいかな・・と思ったからだ。
A4版フルサイズで出来上がったデザインを友人の背中に貼り付けてみると、
なんだか小さい気がしてインパクトが今ひとつ足らない。
小さいなら大きくしちゃえ・・とB4に拡大すると派手過ぎる(^_^;)
で、115%の拡大に決まったのだが、そんな大きなサイズだとプリント代がかさんでしまう。
しかし、自分が着たい物を・・・というコンセプトで作るのだから妥協はできなかった。
「これ、お土産」
「へぇ・・・レイカーズのTシャツかぁ。
随分良い物だね。」
「うん、随分高かった」
NBA公式Tシャツを示すタグのついたロサンゼルス・レイカーズのTシャツは、
友人がロスへ旅行に行った時買ってきてくれた物。
Tシャツが好きでクラブのTシャツばかり着ていた私に、
たまには違う物を・・・と選んでくれたのだ。(いつも派手な背中じゃねぇ・・・と)
喜んでパッケージを開けて見てみると、
黒に紫やゴールドを合わせたレタリングが素晴らしく、
チームマークに至ってはちゃんとしたパッチが縫いつけてある優れもの。
その日本では見られないデザイン感覚は秀逸で、抜群のクオリティだから見せびらかしたいのだが・・・
そのサイズがデカかった(爆)
何たって、正真正銘のアメリカンサイズだ。
しかもバスケットスタイルでダラッと外へ出すように作られているから・・・
胸に位置するはずのエンブレムはお腹方向へ・・とシフトしてしまう(;_;)
結局、ジャケットの下にも着る事ができなくて、
部屋着専用となったのは言うまでもない。
気がつけば何年着ているか解らなくなったソレは、
今でも着るたびに素材の凄さを感じさせられる。
何が凄いか・・・と言えば、その厚さだ。
薄いスウェットと言っても良いくらいの厚さは、
洗濯を重ねた結果しっかり目が詰まって形崩れ皆無の固さを見せる。
そして日本では、未だにここまで厚いヘビーウェイトコットンのTシャツには出会えてないのだ。
「洗っても型くずれしないような厚い生地ってないの?」
「そこまで厚い生地は取り扱っていないけど、かなり厚い7オンスってのがあるよ」
「それでTシャツ作るってどう?」
「長袖は無いよ〜 色も白か黒しかない」
「黒Tシャツが欲しいから丁度良いや」
「マジ〜?
これってかなり厚いよ?」
何と言われても構わない。
私の頭の中には、レイカーズTシャツという基準があるのだから。
分厚い生地でしか味わえない感触こそが、その生地を求めるキッカケだったのだから。
結局、欲しい物が無かったら、自分で作ってしまう方が早い。
自分しか持っていない物とはは、自分で作り出すものなのかも知れない。
大事に乗るバイクに手を入れて改造する事も、同じ事。
そしてそれらは、ある意味凄く贅沢な事だと思う。
今日、The Shop のプロと最終デザイン打合せをしていて、
二人三脚的に出来上がったTシャツがすでに一人歩きしている事を感じていた。
その結論に向かう方向をズラさないように相談し版の元が出来上がった今、
何故か、最初にこの話を彼に持ちかけた日の事を思い出している。
ただ単に、厚い生地の黒Tシャツが欲しかったんだよなぁ・・・(^_^)
|