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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

中華街のはずれで大陸を感じた

中華街から少しはずれた場所に、夜だけ営業している怪しい店がある。

アルミサッシのような入り口から見える店内は、何だかガランとして店であるかもわからない。
が、板を張っただけの棚に紹興酒の瓶がのっているので、どうやら飲食店である事が知れる。

この店の前を通る度にその怪しさに退き結局入る事は無かったのだが、
先週たまたま徘徊していると、赤地に黄文字でできた電飾看板がついている。

他に飲食店のある通りじゃないためその光る看板が妙に気になって行ってみると、
なんとその狭い店は満員だった。

これは、可能性がある。
試すべきだ。

しかし・・・・
厨房らしき場所が見当たらない・・・・

しばし眺めていたが店の人らしき人間は居ず、
国籍不明のような人達が料理をじっと待っているだけのままなので、
その日のうちに味の確認をする気にはなれなかった。


今日は、ちょっとばかり重い集会があった。
来期の収入が大幅に下がるので、給料をカットするための集会だ。

する事は変わらないのに給料だけが下がるのはこの不景気で仕方のない事だと解っていても、
やっぱり感情的には納得しきれない想いがある。

で、仕事する気力も失せて徘徊に出かけると、あの怪しげな店が目に入った。
これも何かの縁さ・・・と調査してみる事にする。


「天龍菜館」
 045-664-0179
 横浜市中区山下町232
 17:00〜23:00

ビルの壁に無理矢理造り付けたようなガレージ。
その中には6人掛けのテーブルが二つだけ。
厨房なのか解らないが、壁にある入り口の奥には何やらガラクタが散乱しているように見える。

そして私が行った時客は誰も居ず、店番をしているオヤジさんが一人、新聞を読んでいた。

「こんばんわ〜」と店に入ると、
おや、客が来たよ・・・珍しい・・・といった感じでオヤジが動いた。

壁にはメニューが貼ってあり、何故か呼び鈴も付いている。
(申し訳ありませんが、御用の方は押してください、と書いてある)


「いいですか?」

「はいどうぞ」

「じゃぁ・・・・」


とあらためてメニューを見ると、そそられる物が書いてある。

田七と鶏の薬膳スープ
冬虫夏草入り薬膳スープ
羊肉鍋
海老と豆腐の煮物
空心菜の炒め物
貝柱入り焼売

中華饅頭
なんと生馬麺まである・・・

しかも全般的に安い・・・が、それらをこなせそうな厨房は見えない。
ま、書いてあるだからどうにかなるだろ・・・・と


「海老豆腐(800円)と・・・」


とオーダーするとオジサンは、


「あぁ・・海老ね・・・うん買ってくるからできる」

と答えた。

ちょっと待て、
今、オジサン買ってくるって言わなかったか??

ま、気にしないで続きを頼む事にした。

「青菜の牡蠣油炒め」500円
「海老炒飯」600円
「焼売」300円(1個150円)


「焼売、2個でいいのね」

「いいよ」

「ちょっと待っててね」


と言うとオヤジは、
お茶を湯飲みで出してから外へ出ていってしまった。

ポツンと取り残されて、する事が無くてお茶を飲む。

おっ・・・マトモなポーレイだ。


しかし、ガレージだから寒い。
思い出してみれば、オヤジも防寒用のジャンパーを着ていた。

店だから・・と脱いだN-3を膝掛けにするが、思いっ切り寒い・・・・・(;_;)


壁代わりのシャッターの向こうで階段を下りる音がして、
ガラガラッという音ともに焼売を持ったオヤジが入ってきた。

ビニールパックに入った焼売を奥へ持っていき皿にのせて帰ってくると、
そのまま店の外にある蒸かし器に入れ、ガスに火をつける。

歩道で調理かい?
この店の厨房って何処なんだよ・・・・・


しかし、こんな事で驚いてはいけなかった。

ガスに火を点けたオヤジは、そのまま店前にあった自転車に乗って消え失せてしまったのだ。

またもや、誰も居ない店にポツン・・・である。
寒さが厳しくなってきたので膝掛けをやめて、ちゃんと着込む事にする。

大丈夫なのかな・・・・・


やがて外の蒸し器から蒸気が噴き出し、少なくとも焼売は食べられそうな予感はしても、
オヤジは何処へ行ったかわからないまま。

せめてビール位欲しいな・・・・・
と思っても、店には私以外誰も居ないのだ。
(知っていれば、自前でビールを持ってきたよ)


蒸かしすぎじゃないかな・・・・と心配しだした頃、
オヤジはパックに入った豆腐を持って帰ってきた。

やっぱり材料を買いに行ってたのね(^_^;)

なんとも大陸的な時間が流れる店だこと・・・・


まったく動じる事無くオヤジは辛子の小さい袋を出し、続いて焼売を出した。

大きめな焼売は、表面は蒸し過ぎの感があったが中は一部冷たく、
しかし美味しい・・という微妙なバランスがある。

腹が空いていたからお茶とともに食べていると、オヤジはまた消えている。

ポツンと取り残されるのは、この店の決まりなのだろうか?
厨房は相当遠い所にあるのだろう・・・か。

なんだか、大陸の広野に放り出されたような気分になってくる。


お茶もなくな、食べる物も無くなって退屈しだした頃、
オヤジがさっきと同じように外から入ってきた。

手には「海老炒飯」が・・・・


「叉焼サービスね」

「ありがとうございます」(もう来ないかと思ったよ)


パラパラしている炒め方なのに、ご飯は軟らかい。
塩が少し多目で、でも妙に美味い。(今度頼む事があったら、塩薄めと頼も)

そして、一緒に出してくれた清湯(スープ)が美味い。
スープが美味いって事は・・・・・


その後、置き去りにされては料理が出るのパターンが続く事2回。
そしてその料理は、日本的中華料理とは一線を引いた味で溢れていた。

厨房は2階で、料理人はオヤジだけ。
だから呼び鈴があって、置き去りにされるのだろう。

中国人向けの店でありながら一見の客も差別せず、
ペースを変えない辺りも大陸風。

常連になれば、間違いなく幸せな世界に行けると思う。
(問題は、常連なるまでコッチの根性が続くかどうか・・・だが)


だけどね、オヤジさん。
食器をもうちょっと出してよ。

勝手に出して良いなら、そう言ってよ。
1時間かかってお茶一杯じゃ、さすがに淋しいよ(;_;)

ま、コレも大陸風って事で許せるけどね(爆)

 
 
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