横浜には昔からアメ車が溢れてた。
そりゃそうだ。
昔は、米軍住宅が至る所にあった場所。
当然奴らの乗るアメ車が中区辺りにはゴロゴロいた。
日本で購入した物がYナンバーで、本国から持ち込んだ物がEナンバーだったが、
こっちから見れば英字が記された車は全部同じ米軍関係車両。
そしてこのナンバー付きの車と事故を起こすと、全部コッチが悪い扱いになるという噂があり、
事実、事故を起こしている現場から逃走するパトカーを何度も見た。
(日本の警察は手が出せなかったらしい)
そんな雰囲気の中、日本人も負けじとアメ車を転がしていたが、
当時よく目についたのはカマロ、トランザム、コルベット、ムスタング等のスポーティー車。
後部をグッと上げたスタイルで豪快に加速していく姿は、子供心に憧れを抱かせる物だった。
当たり前の事だが、当時の横浜人が皆アメ車に乗っていたわけじゃない。
エリアから流れてきた225/50-13なんてタイヤを無理矢理後ろにだけ装着したり、
反対に暴走族もどきで思いっ切りシャコタンにしたりして、カーライフを楽しんでいた。
ズンズン、ドスドスと響く低音。
ドロドロ・・・と響くV8サウンド。
道路脇にたむろすジャージ風のコスチュームを着た若者達が歓声を上げると、
走ってきたアメ車は曲に合わせて、フロントタイヤをポンポンと跳ね上げながら通過した。
最近、大黒埠頭を占領する一群の中にもこんな車達がいる。
凄く小さいタイヤを装着したフルサイズのアメ車は、油圧や水圧で車高を調整する装置を付けているようだ。
道路にたむろす若者達の車も同様な物らしく、後部をすりそうになるくらい下げて駐車していたりする。
こんな車、昔の横浜には居なかった。
MM21の道路は、こんなローライダー達と0-400スタートを繰り返すスポーティー車と、
トランクを開けて音楽を大音響にならす車がいる。
こんな集団が土曜の夜に居る事は知らなかった。
大黒埠頭パーキングエリアに入れないグループが、ここに集合しているのかも知れない。
いつの時代も、車は若者にとって宝物だ。
好きな形に改造したり、好きな所に走りに行ったり・・・・
天駆ける魔法の絨毯のように、世界を広げてくれる物だと思う。
そんな事を思いながら彼等を見ていると、乱暴な毎日だった若き日々が蘇り、
恐さを知らない若さが少しだけ眩しくも見えたりした。
しかしね・・・君達。
公道は、君達だけの物じゃない。
観光客も歩いているような場所で、ハンドルが効かないような走り方はどうなんだ?
歩道にフルサイズ車を停めるて騒ぐのは、楽しいのか?
一般路で無茶をすれば、それなりのペナルティが待っている。
事故を起こしたら、人生を狂わすぞ。
豊さを振りまいているような彼等を見て、
何故かちっとも贅沢に見えない事が、妙に不思議な夜だった。
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