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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

ストレスの原因

「ちょっと聞いてよ」

「お・・?
 何か声が険しいぞ??」

「もうやってらんなくてさ」

「穏やかじゃないねぇ・・・・
 じゃ、デートでもするか?」

「何かさ、美味しいモノ食べに行こ」


突然かかってきた電話の向こうで、やり場のない苛立ちに震えた彼女の顔が思い浮かんだ。
深夜なのに・・・・と文句を言いそうになったが、折角の電話だ。

しかも、滅多にグチらない彼女がいきなり「ぐちモード」。
お付き合いいたしましょう・・・


「ウチの課って顧客に山ほどのメールを出すんだけど、不景気でバイトを雇えないから、
 人海戦術でこなしてるのよ。 でも、5000に近い数を1日でやらなきゃいけなくて
 隣のセクション若手をその時だけ借りるのね。」

「ありがちだね。 ウチでも部を越えた協力はよくやるよ。」

「総務部長がカメラ担いでロケ行ったりするしね」

「それはそれで楽しいけどね」

「で、私の仲間がちょっと使えないヤツで毎回問題起こすのよ。」

「綺麗な女の子ばっかり連れてきちゃう・・とか?」

「それだけ上手く立ち回れれば問題なんて起きないわ」

「・・・・使えないヤツ・・・でしたね」

「ソイツが本来やらなきゃいけない仕事なのに『僕、コレをやらなきゃいけないんで
 やっといてください』と応援部隊に言っただけで別の仕事始めちゃったのよ。」

「あらら。 『やっといて症候群?』」


他人の気持ちを考える事は、社会を支える人間関係の基本だ。
ところが、自らのエラーをカバーするために保身に走る身勝手な人は多い。

見え透いた嘘をついたり小手先だけ誤魔化そう・・としても、
上から見ていると「頭隠して尻隠さず」にしか見えなかったりするのだが、
本人にとってはその場で責任転嫁できれば楽になる・・と考える。

でも、それはしかたない。
誰だって自分が一番大切で、物事は主観的に見えるのが自然で、
客観的視点は意識しない限り持てないからだ。


「それがさ、前日からやっておけば済んでるはずの仕事なのに、
 皆の前で『パチンコ行く〜』とか喚いて定時で帰っちゃってんの、昨日。
 それを応援部隊も知ってるから、険悪な雰囲気になるわよねぇ」

「なるほど」

「封をしたりするだけの仕事ならまだいいのかも知れないけど、
 客先によって入れる中身が変わってくるから、ヤツの指示が無いとわかんない事もあるわけ。
 でもヤツは指示もしないで『やっといて』でしょ・・・・」

「そういうのって、指示書を作るとか入れる物別に資料を揃えとく、とかしないわけ?」

「普通はするでしょ。
 でもヤツはいつも土壇場まで仕事をしないで、当日にパニックを起こすわけよ。」

「毎回かい?」

「ある程度皆知ってる事で慣れてはいるんだけど、今回は特に酷かったのよ。」

「それがそのゲッソリとした顔の理由?」

「マダマダ序の口」


マジですか?
今日のグチは長引きそうですね・・・・

久々に「ビスコンティ」で「マルゲリータ」を頼んだのに、
焼き上がったピッツァより彼女の話は熱かった。


彼女は仕切屋だが管理職ではない。
実力があるから、仲間達が頼ったり慕ったりするようだが、凄いのは人心掌握術。

ダメな上司が間抜けな事をしても、隠れてカバーしてしまうのは朝飯前で、
気難しい上司は笑顔で落とし、トラブッた仲間は食い物で釣る。


「ヤツは『応援で来ている人間のせいだ』と言い切ったのよ」

「自分のミスを他人のせいにしたって事?」

「そうよ。 だから現場レベルでの空気は最悪になっちゃって・・・・」

「奴らの前でそう言ったの?」


応援部隊が記憶を元に作業を進めていると、そこにたまたま係長が通りかかったのだが、
その時、資料が足りなくなる・・・というトラブルが起きていたらしい。

で、応援部隊はその対応を係長に相談し、
係長は「資料が何故足りないのか?」とヤツに尋ねたのだが・・・


「平然と『俺はちゃんと用意した。足りないワケは無い。
 誰かが無くしたんだ』と言ったのね。
 でも、足りない数は1・2枚のレベルじゃない。
 100枚単位で足りないから、明らかに準備を忘れてるわけ。」

「で?」

「皆もヤツの言い逃れが始まった・・・と呆れ顔になったけど、資料なしじゃ仕事にならない。
 だから、係長に『後はヨロシク・・・』と言って手伝いをやめて戻っちゃったのよ。
 でも、その仕事は今日中にやらなきゃいけないじゃない?
 手伝える人間しかそこには居ないので、間に合わない可能性もでてきて・・・・
 係長がブチッ!と切れちゃったのよ。」

「俺でも切れるな。
 自分のケツを拭けないヤツは大嫌いだからな」


係長は「ヤツ」に何故資料が足りないかを問い質すのだが、パニックを起こしている人間は
いつ、何を、どうしたか・・だけしか、繰り返さなかったらしい。

資料のカウントを間違えた事を認めず、立ち会うべき仕事である事も理解せず、
今取りかかっている「既にできあがっていなければならない仕事」の事しか頭に無いらしい。

急遽係長によって他の仕事をやめてその仕事を手伝うように命令が出、
「ヤツ」も彼女も一緒になってその仕事にあたったようだが、
「ヤツ」を除く全員の冷たい視線を浴びても「ヤツ」は自分がとりかかっている仕事ばかり気にして
皆の邪魔にしかしならなかったようだ。


「で、係長がヤツに何故そっちの仕事を急いでいるか尋ねたのよ。
 皆はその理由がわかってたけど係長は知らなかったのね。」

「君が全部カバーしちゃってたんじゃないの?」

「まぁ、そういう事も無いわけじゃないけど、
 あんまり下を見る人じゃないのよ、係長。」

「そいつも『やっとけ症候群』?」

「あははは。
 そんな感じもあるけどどっちかと言えば・・・
 『何故こんな事ができないの?症候群』かなぁ・・・」


その手の人間の常套句は「私ができるんだから貴方にできないハズはない」。

優秀だけど客観視できない中間管理職がよく使う言葉で、
そんな管理職の下に居る人間は、仕事以外にその人間と付き合う事を避ける傾向がある。

特徴は「理想を語って実行に移せず」か・・・・・(^_^;)


とにかく仕事をどうにか終えた彼女等は、
翌日の段取りを決める打合せを始めたのだが・・・・


「係長がくどくどと細かく文句言い始めて、止まらないのよ。
 廻りもソレを聞かされているウチに不快になってくるでしょ。
 空気がどんどん重くなって、こっちもストレスが溜まってくるわけよ・・・」

「君がストレス・・・とはな」

「失礼ね〜
 でもさ、係長の言い方は凄かったのよ。
 ヤツに『今日、あなたはどんな仕事をしたのですか?』だよ。
 仕事していたのは見ていても、仕事自体を認めない・・・って言うか
 人格そのものを否定するような言い方だったのよ。」

「そこまで酷い言い方には聞こえませんが・・・」

「それだけじゃなくて
 『貴方は仕事ができないようですから、コレからは電話番だけをしてください』
 と言い切って席を立っちゃったのよ、打合せ中に。
 残された方はたまんないじゃん・・・それじゃ。」

「で、なだめて、仕切って、ストレス溜まって、出てきたわけね・・・」

「そう。
 疲れた。」

「お疲れさまでした。」

「でもね、コレくらいで疲れてたらやってられないけど・・・」

「けど・・・・ってまだあるの?」

「帰りに明日のスケジュール書いとこ・・・っとボードに行ったら、
 ヤツの場所に明日明後日休みって書いてあったのよ。」

「・・・・ってそれ、4連休取るために今回の騒動起こしたってわけ?」

「そう。
 仕事もマトモにできない、気配りもダメなバカをかばって遅くなってんのに、
 脳天気に連休取るつもりのヤツが先に帰ってるのよ〜
 何だか、気を使うの嫌になっちゃった。」


お疲れさまでした。
きっと貴方がいるから、廻りの皆が気持ちよく仕事できています。

でも一度、人の居ない所に気にくわないヤツを呼び出して、
キッチリと指導した方が良いと思います。

昔持った2枚刃でも携えて・・・・ね。

 
 
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