「あ〜来た来た」
「何だよ、それは」
「すっごい向こうから走ってくるの解ったよ。」
「あはは、うるさかった?」
「うるさいしブン回してるからわかるよ。
近づき方も派手だしね」
「寒いんだから、どっか店入って待ってればよかったじゃん」
「待ってたかったの」
「大珍樓別館」
045-661-0077
横浜市中区山下町151
月〜金 17:00〜02:00(L.O.01:15)
土・日・祝 12:00〜01:00(L.O.24:15)
無休
飽きもせずこの店に来るのは、深夜営業の店が少ないだけじゃない。
広東家郷料理が現地人向けの味付けで出る事が大きくて、
日本語が辛うじて通じる香港のような気分に浸れるからだ。
「麺、ダメだったみたいね?」
「あの麺じゃなかったよ。
でも、味が悪いわけじゃないよ。頼む?」
「今日は堡仔飯にしよ?」
いいっすね〜
気になってた炊き込みご飯は、食べたかったんだ。
青菜炒めと肉餅堡仔飯にピリ辛水餃子とビール・・・・
要は野菜と辛みスープに炊き込みご飯という食べ方だが、こんな物でもケッコウな量。
こっちはバイクだからビールをガバガバ飲むわけにいかないし、
夜中の12時にたくさん食べるのも気が進まない。
「珍しいじゃん。
何かあった?」
「あ、何か期待してる?」
「いや、別に・・・」
「今日、仕事でコッチに来てたのよ。
で、なかなか上がれなくてこんな時間よ」
つまんねぇ・・・・
あまりに平凡な理由すぎてツマラナイ
ま、一人で何か食べるよりは遙かにマシだけど、
こんな時間に久々のお誘いじゃ、期待も色々有らぁなぁ・・・・(^_^;)
ピリ辛とわざわざ名付けられた水餃子は、想像以上に唐辛子っぽい色のスープでありながら、
拍子抜けするほど穏やかな辛さで、スープとして飲んでも楽しい物だった。
点心としての評価は普通の味だが、スープの出来の良さで美味しく食べられる。
ニンニクの効いた青菜炒めと水餃子をつまみに飲むなら、これだけでもいいかも知れない。
だが、二人とも気になっているのは「中華風炊き込みご飯」だ。
香港で食べた時は、タイ米の独特の香りと素材からでる旨味がご飯に浸みて、
いくらでも食べられそうに感じるほど美味しかったが、ここの物はどうだろう・・・
土鍋でご飯を炊くのなら時間がかかるに決まっている。
だから、じっくり待つしかないのだが、その時間が長ければ長い程期待も膨れあがってしまうのだ。
日本だからロングライスは期待できないよなぁ・・・
鍋底の焦げくらいは楽しめるかなぁ・・・
肉餅と言えば中華風ハンバーグだが、ご飯の上にのってたら中華風ロコモコだよなぁ・・・
「あの・・・」
「うん?」
「何かつまんない事あった?」
「あはは。 それは毎日の事よ。 なんで?」
「なんか、心ココに有らずって感じだから」
「それは・・・」
鍋のご飯の上にデ〜ンとハンバーグがのって、その上に卵がのってたりして・・・
と中華風ロコモコの想像ををぼ〜っとしてただけ・・・なんて言いたくない(爆)
しかし、気が抜ける関係だからと言っても、
相当疲れた顔を見せてしまったのかな・・・と少しだけ自分を省みる。
針金で補強された柄付きの土鍋がアルコールランプの上にのってやってきた。
懐かしいなぁ・・・
香港で使ってる物と同じスタイルだ。
ウェイトレスが蓋を取る・・・と、
アレ?
なんか普通のご飯に見えるんですけど??
確かに具はのってるけど、中華ハンバーグっぽい物じゃない。
どうやら骨付き肉に見えるから、オーダー間違いしたらしい・・・・
「違うよなぁ・・・」
「これも美味しいそうだからいいじゃん。
値段一緒だし」
「そうだな」
こんな時だけは、あまり日本語を理解しない店員が有り難い。
彼女はマイペースでご飯の上にタレをかけ、ガシガシとかき混ぜ始めた。
でも、これって土鍋から炊いてないかもしれない。
って事は、お焦げは無いんだろうな・・・(ちょっと興醒め)
中国醤油と砂糖、何かの油が溶けたタレは、適度な甘さと濃厚なコクをご飯に与え、
ちょっと甘めの煎餅の様なテイストを見せる。
いくらでも食べられそうな味。
どっかで食べたような味。
「貴方って、食べてる時って幸せそうな顔するよねぇ・・・・」
「バイクに乗ってる時だってそうだぜ」
「あはは、信じない信じない。
絶対目を三角にして走ってるよ。」
「幸せなんだけどなぁ・・・」
他愛のない話をしながらの食事。
重くないリレーションが純粋に食事を楽しい物にして、
非日常的速度からの生還によって得た充実感に見合う時間だと錯覚できる。
こんな晩飯も、たまには良いかな・・・と言いたいなぁ
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