「色々とお世話になっております」
と、あらためて挨拶されて赤い袋をもらった。
そうか・・・今日は「バレンタインデー」か(^_^;)
そう言えばこの時期コンビニからチョコレート専門店まで、
呆れるほどの販売合戦を行っているのも見慣れた風景になっているし、
高級で高価な物が飛ぶように売れていくのにも驚かなくなってきた。
(元町の「ゴディバ」なんて近寄りたくない感じがする)
特別な一個があれば充分と思う私には、当然の帰着か義理チョコすら集まらない。
「でね、おかしいなって気がついたのはスーツの匂いなのよ」
「匂い?」
「ウチのって甘いモノ食べないのに、チョコレートの匂いがするのよ」
「バレンタインデーだったら会社で貰ってもおかしくないじゃん」
「会社でもらったら、自慢げに見せるでしょ?
でもそういう匂いじゃない。高級なヤツ・・・なんだな。」
「考えすぎでしょ」
「こういうのはカマかけるとすぐ割れるのね。
ちょっとだけ意味ありげに見つめるだけでも、オドオドするからすぐ解る。」
「やましい気持がある・・と?」
「男って隠せるって思ってるのよね〜
でも、すぐ態度に出るから絶対わかる。」
「それを言ったら女もそうだよ。
態度を変えなくても、ちょっとした身体の反応が思いっ切り変わるよ」
「へぇ・・・・」
バレンタインの夜に聞かされる話じゃないと思うが、
ずっと疑っていた疑惑の証拠を握った彼女は、どうしてもその話をしたかったらしい。
悪い事と知りながら旦那の鞄を調べると、必要のないリボンが入っていたようだ。
「おかしいと思ってたのよ。
携帯のメールが一切保存されてないし、着信履歴も消えているし、
充電かける時はパスワード無しでは見れないようになってるのよ。」
「それって当たり前じゃ・・・ないの?
って言うか、夫婦と言えども他人の携帯は見ちゃダメだよ」
「何言ってるの。
やましい事が無ければ、何だって見られたって困らないはずよ?
絶対に見せないか、見ても解らないようにしてあるって、
見られたら困る内容があるからでしょ?」
「ちょっと違う・・・ような」
「違わない!」
「・・・そうですか」
自分の携帯なんて絶対見せられないな・・・
(疑われたらキリが無い)
「どうでもいい物集めるのが好きな人で、マッチだとかコースターだとかを持ってくる。
この間なんて『誕生日のプレゼントにどうしても欲しい』と言ってた
ヴィトンの財布を買ってあげたら、その箱とリボンを大事に取ってあるのよ。」
「それは、何となくわかる・・・」
「箱はちょっと豪華だから何かを入れるのにはいいかも知れないけど、
リボンなんて使い道ないじゃない?
ヤツは『この色が良いんだ』とか言ってるけど」
「確かに綺麗な色ではあるし、なんとなく捨てがたいってのもわかるんですけど・・・」
「じゃなくて、今回もそんな癖が出たって解ったのよ。
ウチに持ってこれないくらい良いチョコレートもらったんで、
帰り道に全部食べて箱は捨てたんだと思うのよ。
でも、リボンだけは思い出にって取っておいたんだ・・・・と思う。」
「わかんないじゃん。」
「そうだけど・・・・」
一箱数千円もするようなチョコレートを貰うなら、
一人だけからもらう事が一番幸せ・・・・って事らしい。
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