その店は、1998年4月に老舗として名高い「華正楼」の系列として、華々しくデビューした。
お洒落な店作りと少量の料理・・といった女性客を狙うコンセプトは当たり、
ランチタイムは女性客が店の殆どを埋めていた。
美味い物を出す店には、女性客が多い・・・という経験則と物珍しさに負け、
私がこの店に飛び込んだのはまだ、オープンしてからそんなに時間が経っていない頃の事。
初めて入る店では、炒飯を食べる事にしている私は、
ランチメニューを無視して炒飯を頼んだのだが・・・・
水っぽく、ボケた味。
しかも1000円近いプライス・・・
「二度と来るか」と怒りを覚え、それ以来この店に入る事は無かった。
しかし・・・
後輩が「中華街の炒飯を全部食べる」なる荒行を始め、
食べ歩いた中で美味しい・・と感じた店リストにこの店の名前があげられると、
自分の記憶とのギャップが大きくて、気になって気になって仕方なくなった。
何故なら、その時点で既に60軒(中華街での店数)以上の店で炒飯を食べている人間が
「美味しい」と言っているのだ。
彼の情報は、確度が高くて当たり前。
そして彼は、食べる事が大好きな人間なのだ。
これを信じないワケにはいかない・・・・・
「桃花」
045-224-7777
横浜市中区山下町192-9
平日 11:30〜15:00 17:00〜23:00
休日 11:30〜23:00
だから復活の一品に、炒飯以外のオーダーは有り得ない。
記憶とのギャップを埋めるためにも、
この店の味を判断するためにも・・・
で、今日もまた、ランチメニューに目もくれず、
普通のメニューから「特式炒飯」(1200円:税別)をオーダーした。
それは、海老・貝柱・蟹を具に使った贅沢な一品。
もちろんベーシックな卵や焼豚等の具も入っている。
普通の五目炒飯(900円)でも良かったのだが、
クセの出やすい食材をどう合わせるかが気になったのだ。
「お待たせしました」
とサーブされた炒飯は、小綺麗な白いお皿にちょっと少な目に盛られていた。
少し少ないかな?
とは思うが、少なすぎる程ではない。
ランチタイムサービスで付けてくれたスープは、
卵白を綺麗に解いてフワフワに固めた具が浮く上品な物。
その二品は、絶妙な量と美しさを感じさせる秀逸さとバランスを持っていた。
なるほど・・・・
これなら女性客に受けるワケだ。
海老も蟹も綺麗に剥かれ、その形状から予め剥かれた汎用品では無い事が伺える。
干し貝柱もふんだんに入り、焼豚も負けていない・・・。
コレは期待できるぞ・・・とかぶりついたら、野菜のシャキシャキ感が襲う。
何だ?・・・と思ったら、細かく切った玉葱だった。
最初は、少し味気ないかな・・とも思ったが、海老も蟹も上手くバランスされている。
貝柱は、丁度良い程度に旨味を加え、焼豚もケンカしないで綺麗に調和している。
素っ気なさがだんだん美味くなっていくようで、食べていて楽しくなってしまった。
具をそれぞれの個性に合わせた大きさに整え、食感を失わない程度に加熱する。
パラパラになるまで加熱し続けたら、このハーモニーは出ないのかも知れない・・
と錯覚させる程度のシットリ感は、個人的には好きな部類に入る。
美味いじゃん・・・・
ハッキリ言って、別物だよ・・・
最初に食べた時は、「そんなに長くない店かな?」と正直思った。
なのに、この店は人気を保ち続け、もう少しで5年を経過する。
美味しくないのに人気があるのは綺麗な店だからか・・・?と、邪推しながらも不思議に思っていたが、
ちゃんと存続する理由があった・・・という事が解って、ある意味ホッとした。
本物が並ぶ街でも格好だけの店が繁盛するんじゃ、
これから先の食文化に希望が持てないから・・・ね(^_^;)
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