今年も、旧暦の大晦日がやってきた。
横浜中華街では派手なイベントが催され、新暦の年越しにも負けない人出がある。
「カウントダウン」で年を越し、派手な中国獅子舞を見なくては新年が来ない気がするのは、
毎年のように年越しイベントを見ているだけではない。
香港によく出かけていたり中華街の中に会社があったりする事で、旧暦で動く社会に慣れていたり、
自分の運勢を見る時に、旧暦で作られている暦を使う事も多くあるからだろう。
中国の獅子舞は、獅子頭と前足を担当する人間と後ろ足と背中を担当する二人の人間で行う。
元は大陸から渡ってきた文化だから当然だが、日本も獅子舞も基本的には同じ形を取る。
ただ、口と瞼が大きく動くだけの獅子頭は日本のソレより大きくユーモラスに作られ、
胴衣も獅子頭と同色で装飾は派手になっていて、生きた獅子を模す舞に可愛さを加えてくれるのだ。
で、今日は久々に、間近でその獅子舞を撮影する事になった。
中華街で見られるのは「南方獅子」で、その動きはどこか武術的に見える。
獅子の舞い手に尋ねたところ、不意の暴力に対抗する時、無意識に獅子舞の型で受けてしまう・・とか。
通常の祝い事に舞われる獅子舞は日本のソレと似ているが、
2メートルの高さに立つ直径20センチの板の上を飛び舞う「高椿」(梅花椿)は特別のモノ。
「喜、怒、哀、楽、疑、驚、動、静」を表現し獅子の聖獣たる「神態」をかもし出す・・と言われるソレは、
東南アジアで世界規模の競技会が開かれるほどポピュラーであり難しいモノでもある。
中でも、獅子が後ろ足で立ち上がる姿は前足担当の人間を後ろ足担当が持ち上げて作る荒技で、
それを杭の上で行う事の難しさは素人でも簡単に想像がつく。
だからというワケでもないが、中華学院の校庭に最高で2メートルはある杭を並べた会場には、
今年も、地元の人間をはじめそれ以外にもたくさんの観客が押し寄せた。
まるで生き物のように見事に舞われた獅子舞は、
徐々に高くなっていく杭の上を、時には歩き時には跳ね、時には飛んで移動する。
前足役が飛んでいるうちに後足役がその下に飛んで入り、前足役を肩で受ける荒技を見せられて、
その動きの素晴らしさと滞空時間の長さに観客は驚きそして喝采する。
そして・・・・
一番端の一番高い杭の上で獅子はバランスを崩し、墜落した。
一斉に上がる悲鳴・・・
前足役の立場から見れば、4メートル近い高さから外もよく見えないまま落ちる・・・・
しかも落ちる場所には、何のクッション等も置かれていないのだ・・・・が、
同じチームのメンバーが身体を入れて彼等を必死で保護していた。
前足役が信じがたい跳躍で浮かび上がっている間に、後足役が彼を受け止めるように跳躍する。
ヨシ! 上手く乗った!
観客がそう思った瞬間、また崩れるように落ちてしまう・・・・
そして三度、彼等は一番高い杭から落ちた。
もういいよ・・・
そんなに足がフラついているじゃないか・・・
良くやったよお前等
危ないから、もう止めてくれ・・・
撮影をしながら、そう心の中で呟く。
しかし彼等は、踊りきる事を止めなかった。
一番高い杭の上で肩車したまま方向転換を終えた獅子は、そのまま別の杭に飛び、
そして見事にソレが成功した時、観客の中から安堵と感激と絶賛の拍手と歓声が巻き起こる。
今、コレを、死んでも成功させる・・という強い意志と、
何度失敗しても成功するまで頑張る意地と、
そして成功した時の感激は素晴らしい。
そして、最近色々な事を簡単に諦めていないかな・・・と、考えさせられた。
一年に一度の晴舞台。
新年を祝う特別の舞。
だから、絶対に成功させるんだ・・という頑張りを見られた事は、
今年も頑張って生き抜くぞ・・という力になってくれそうだ。
こいつぁ春から縁起が良いやぁ(^_^)
|