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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

クリスマスディナー

「ちょっと聞いてください」

「どうした?
 何かトラブルか?」

「違います。
 昨日、彼氏とデートしたんですけど・・・・」

「ほ〜・・・一応、デートしたのね?
 滅茶苦茶混んでた・・とか?
 料理が高くて美味しくなかった・・とか?」

「それもあるんですけど・・・」


イブの夜にやっとの事でデートに漕ぎ着けたのに、その客層が最悪だったと彼女は言う。
マンウォッチングが好きな私としては、興味津々で話を聞いた。


彼氏が予約を取ったのは某ホテルの鉄板焼きレストラン。
客単価は1万円を超える店なのだが、イブの夜に予約を取るのは大変だと想像できる。

彼女は何処へ連れて行かれるかを聞かされていず、ただ時間だけ空けておけ・・と言われていた。
その予約時刻は夜の9時であり、待ち合わせは8時に駅で・・・という事だった。


「なんでこんなに混んでる駅で待ち合わせるのかな・・・・と思ったんですよ。
 でも、リボンでデコレーションされた紙袋を持った彼が現れた時、
 その姿が妙に可愛くて、そして先にプレゼントがある・・・と見せられると嬉しくて・・」

「プレゼントって、店で交換するんじゃないんだ・・・ 最近」

「いや、その人ちょっと変わってる人なんで、当たり前のクリスマスが嫌いなだけだと思うんです。」

「ふ〜ん ノロケね」

「違いますよ〜」


彼は、人混みのごった返す中で彼女にプレゼントを渡し、
「メリークリスマス」とだけ彼女に言った。

勿論、彼女もプレゼントを持ってきていたし、交換するつもりでいたのだが、
ここで?と驚く間も無い演出に、スキを突かれて素直に喜んでしまったようだ。

プレゼントを貰ったらすぐ開けてみたい・・・・
そう思う彼女に彼は言った。

「明らかにプレゼントと解る袋を持って歩くって、ちょっとだけ嬉しくない?」

彼は、店の中で交換するのは恥ずかしい・・・とも言ったようだが、
その恥ずかしがりの性格を知っている彼女としては、
そんな袋を持った自分と歩く事だけでも十分だと感じたのだろう。

最初に彼女が連れてかれたのはバーだった。


「そこでプレゼントを見たんだ?」

「えぇ。 時間的に客が少なかったので、落ち着いて見る事ができました。
 なんか雰囲気が良かったので、ここでこのまま飲んでてもいいかなぁ・・とも思ったんですけど」


そこはレストランがあるホテルのバーで、席が空き次第連絡が来るようになっているのだ。
で、彼女等は一杯の食前酒をバーで楽しんだ後、レストランに向かった。
 

「そのレストランには、もう若いカップルがいっぱいで、
 予約しなければ絶対座れないって、よく解りました。」

「高かったろ〜?」

「クリスマス特別メニューで、ステーキのコースが1万円から・・なんですよ」

「ホテルの鉄板焼きじゃそんなもんよ。
 彼氏も奮発したわけだ。」

「でも・・、何だか勿体なくて一番安い1万円のコースにしました。」

「どんな内容?」

「本当に食べる事、好きなんですね・・・
 前菜と帆立のバター焼きにステーキがついて、最後にデザートでした」

「普通・・だね。 ちょっと高い・・かな。」

「帆立はどうでも良かったんですけど、それしか無くて。」


だからクリスマスには、そういう店には行きたくない。
日頃から高いのに、余計なモノを加えてさらに高い値段で商売する。
そしてそれでも、客は溢れかえる位に集まってしまう・・・・。


「回りを見たら、どう見ても20代前半のカップルばかり。
 そして頼むモノを見てたら、1万5千円のコースを頼んでいるんですよ。」

「まぁ、ここ一番の勝負をかけてる男の子としては、一番安いメニューは有り得ないだろうな。
 よく君の彼氏がソレにしなかったね?」

「そのコースは、前菜にフォアグラのソテー、伊勢エビの半身のソテーがついて
 その上ステーキとガーリックライス・・・・。
 そんなに食べたらデブっちゃうし、フォアグラのソテーは好きじゃないんですよ。
 だから、食べない料理に高いお金は必要ないって思いました。」

「見栄張りたかったんじゃないの? 回りに対して」

「いいえ、彼はそんなに裕福じゃないし、プレゼントでも無理してるの解ってたから・・・」

「いい彼女だ。
 でも、いいクリスマスじゃん。
 ノロケたいの・・かな?」

「ま・・・それもあるんですけど、許せねぇって思ったのは隣に座ったカップルなんですよ。」


相当に混んでいたその日、店に入ってから30分程待たされた彼女等は、
隣のカップルが食事を終了し入れ替わった新たなカップルと共に料理が開始になった・・と言う。

混んでる時にはよくある事だが、それなら最初から9時半スタートとしとけよ・・・と
言ってしまうかも知れない私にとっても、特別な日だから・・と彼女を慰めた。

「席に座るなりウェイターを捕まえてシャンパンをオーダー。
 こっちは忙しそうだ・・と大人しくオーダーしてくれるのを待ってたのに・・と
 それだけでも腹が立つのですが、そのシャンパンが出る前に小娘が煙草です。」

「鉄板前で?」

「はい。 換気扇が強力なのでそんなに匂いは気にならないけど、シャンパン前に煙草かい?
 って、それだけでも非常識だな・・・と。でもって、奴らもやっぱり15000円のコースを
 オーダーしたんですが、前菜が出ても小娘は一つだけ摘んで、また煙草。
 シャンパンも一口だけで放りっぱなし・・・」

「彼氏は?」

「彼氏はガツガツ犬食いしてました。」

「彼女が食が進まないのを気にしないの?」

「お腹減ってたみたいで・・・・。 9時半まで食べずにいればそうですよ。
 で、全然口をつけない前菜を脇に寄せ、次にフォアグラが出たんですがまた口をつけない」

「彼氏は犬食い?」

「あはは、その通り。 彼女は煙草で彼氏はガツガツ・・・・ この女、食べる気あるのか?
 って感じで、それだけでも何か不快。 で、その後シャンパンを下げさせて頼んだのが・・」

「何?」

「コーラ」

「へ?」

「最初はダイエットしてるのかな・・・とも思ったんですよ。
 アルコールに弱いのかな・・・とも。 
 でも、コーラですよ、コーラ!
 そして煙草吸って・・・・。
 コーラ飲みながら煙草吸いたいなら、レストランに来るなって感じです。」

「ちなみにどんな格好してた?」

「彼氏は普通のカジュアルっぽい感じでしたが、彼女は両肩モロだしのドレスに
 安っぽいショールで、化粧ベタベタの嫌な感じです。」

「それで腹立ってるの?」

「えぇ・・・ って言うか、その女が高飛車な口調で彼氏をなじったり、
 こっちの料理みて鼻で笑ったりするんで、何だかバカらしくなってきて・・・」

「しかし可哀想だねぇ、その彼氏。
 15000円のコース二つにシャンパンだぁ?
 当然プレゼント有りぃ〜の、ひょっとしたらお泊まり有りぃ〜で、
 それだけでもスゴイ出費だよなぁ・・・・。
 で、料理を食ってもくれないんじゃ、悲しくならないかなぁ・・・」

「でも、その彼氏は、美味しそうに食事して楽しそうでしたよ。」

「はぁ・・・。
 ま、その女は、クリスマスの日に高級な店で高い料理を食べる事が大事で、
 その彼氏であろうと誰であろうと構わなかったんじゃないか?
 自分が作ってくれる人に対して凄く失礼な事をしてる事も、
 食事を誘ってくれた人に対して何の気を使わない事にも平気なんだろう。
 だから、回りで食事をしている似たようなカップル達なんかに気は使えないし、
 今が一番高い時期だ・・とふんぞり返って恥かいているんだろうよ。」

「なんか、せっかくのクリスマスディナーを台無しにされたみたい・・で」

「良いことなかった?」

「いいえぇ・・・」


なんだ、結局ノロケか(-_-;)

 
 
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