「自分ばっかり美味しい物食べてズルイ〜」
「時間取ってくれれば、一緒に食べられるんだよ?」
「だって、ホントッに、忙しいんだってば!」
「じゃぁ、しょうがないじゃん」
「だから、余計に腹が立つ・・・の」
「そんな事言われてもなぁ・・・
今は、バイクにも乗れないから、食べる事だけが楽しみなんだよ〜」
「それはそうでしょう・・・けど、面白くありませんね」
「いいじゃん、俺の場合は『飲む・食う・走る』なんだから。
女遊びに金使ってるわけじゃないぜ」
「う〜 「打つ」と「買う」のが無いのは認めるけど・・・面白くない!」
「じゃ、飯でも食べませんか〜?
珠江飯店の海老づくしでも〜??」
「時間できました」
「あれ?
そういう事?」
「そうよ〜 だから電話したんでしょ」
「珠江飯店」
045-681-4136
横浜市中区山下町164
11:30〜21:30(LO21:00)
第3火休
東京に住む彼女にとって、横浜は近くて遠い街。
抜群の海老料理がある・・と言っても、営業時間内に辿り着くには
物理的問題を解決しなくてはならない。
この珠江飯店は、20時過ぎに入ればどうにかできる店の一つ。
だから彼女が、残業無しで会社を飛び出せばどうにかなるのだが、
今時そんな勤務態度が通用するのは、窓口業務を担当する公務員位じゃないだろうか?
「あれ・・やっぱり。
海老料理が多くでるから、そうかと思った」
「どうも〜。
さすがマネージャー、オーダーの傾向で客の顔が浮かぶんだね」
「こんな変な頼み方するお客さん、少ないですよ。」
「そんなに海老ばかり食べに来てるんですか〜?」
「エ〜、それはもう〜」
<本日のオーダー>
「車海老のチリソース煮」(6個)2100円
「車海老揚サウザンアイランド風味」(6個)2400円
「青菜の炒め物」1500円
「鶏肉の唐揚げ」1800円
「え〜と、これに点心は?」
「そんなに食べられません。
とにかくこのサウザンアイランド風味と海老チリさえあれば、
後はビールで十分です。」
「で、どうして『鶏唐』なの?」
「鶏も大〜好き」
「そうだっけ・・・?
でも、何となく足りなくなるような気がしてるんですけど・・・」
「どっちにしてもこの後飲む・・・でしょ?
そのために車置いてきたん・・・だよね??」
「もちろん、いつもの量は頂きたいっと」
久々に会えたのに、会った瞬間から離れていた時間を忘れてしまう。
同じ様な感覚を持って、同じ様に物事を見て感じるられる二人だから
一緒にいる事に違和感が起きないのかも知れない。
仕事のグチも今の状況報告も無く、二人は料理を楽しむ事に没頭した。
「あ・・やっぱりそうする?」
「うん?」
「鶏の唐揚げ」用に甘酢あんが出されたが、どうせ甘酸っぱいなら・・と
残っているサウザンアイランドソースをつけてみたら、彼女がニヤッと笑ってそう言った。
「それにこのチリソースも合わせたら美味しいと思う。
玉葱のシャリシャリ感と唐辛子のピリピリが合うと思わない?」
私は、唐揚げの上にチリソースをかけ、その上からサウザンアイランドソースをかけてみた。
美味い!
あ・・・・でも、ちょっとマヨネーズ味が立つ・・
でも、コレ・・・病みつきになる味かも知れない・・・
「ね、ね、美味しいでしょ〜
ね、正解でしょ〜」
「あ・・・・美味・・」
食べ物が合う事は、付き合っていく上で重要な事。
味の趣味だけじゃなくて、食べ方や気の使い方も問われるから、
その人間の生き方や育ち方を判断する上でも、食事の席を一緒にする事は大事だと思う。
自分の育ち方が上品ではないから、マナーだとか気の使い方は大人になってから覚えた事。
そして色々な所で食べる事で、シチュエーション別のパターンを作り上げただけ。
でも、基本は「如何に美味しく食べるか」であり、
一緒に食事をする人を不快にさせない事でもある・・と考えている。
相手が完璧なマナーで食事をする人なら、それに合わせないと不快にさせるし、
自由に何も気にしないで食べる人なら、こっちも略式で気兼ねなしに食べる方いい。
相手が料理を楽しめれば、私も美味しく食べられる・・のは、経験から得た常識だ。
「東京から来るのは大変だよね?」
「そうね。
でも、貴方と食べる物は美味しいからね」
「美味しい店を知っているから?」
「美味しい食べ方を知っているから」
「食べ方だけ?」
「何を言わせたいの?」
「食べ方だけ?」
「好きだからよ・・・
貴方と食べる時間がね。」
どうやら私のリレーションは、「食べ物ツナガリ」って事らしい(^_^;)
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