寒くなってくると食べたくなってくる物の一つに「どじょう」がある。
鰻より庶民的な食べ物として昔は生きたまま魚屋で売ってたりした物だが、
最近はとんとその姿を見ないようになった。
どっかの家でどじょう鍋をやろう・・と買ってきたら、子供(私の友達)が
「可哀想だから殺さないで」と頼んだあげく金魚と同居した・・・という話は、
ゴロゴロと転がっているような時代だったのが懐かしい。
我が家でも、豆腐と泥鰌を同時に煮る鍋を親が企画した事があった。
(熱さに泥鰌が豆腐の中に潜り込んだまま煮えてしまうのだとか)
何故泥鰌?
何故そんな食べ方??
と問い正せば、先輩に食べさせてもらったソレが美味しかった・・・
という単純な記憶から、どうしても食べたくなったらしい。
単純に煮込んでしまう泥鰌鍋でもいいはずだが、親はそういう変な食べ物を良く知っていた。
例えば「マムシ飯」
研いだ米と水とマムシを釜にに入れ、穴の空いた蓋(マムシは通過できない大きさ)をし炊く。
するとマムシは熱さから逃れようとその穴から顔を出すが抜けられず煮えてしまう。
炊きあがったら、その頭グイッと引っ張ると身だけご飯の上に落ちて完成する・・・・
多分、凄く泥鰌が安い時があって、豆腐だけの鍋よりも・・・と親は考えたのだろうが、
それにしても残酷に見える料理法を敢えて行う気になった理由は簡単だ。
泥鰌を裂く技術と根性が無いだけの事だった・・・・・と。
蛇も泥鰌も食べたくない・・・と子供心に思ったから、猛反対したのは当然の事。
結局泥鰌は水槽行きで、鍋はただの湯豆腐となった事を覚えてる。
今は、専門店や和食系の店でしか食べるチャンスが無いから、
そういう意味では高級な食材となっているのだろう。
(鰯も今や高級魚となっているから、常識はどんどん塗り替えられるモノらしい)
「駒形どぜう」
03-3842-4001
台東区駒形1-7-12
11:00〜21:00
休 12/31・1/1
「座りがよろしいですか? それともテーブル?」
「座りで・・・」
座り・・・と言われたのにはワケがある。
この店は、大広間に板を渡し、その板をテーブル代わりに座るスタイルで席につくのだ。
この庶民的なスタイルが妙に好きで、食べにくさなんて気にしない。
しかしどかっと座らなきゃいけないので、スカートの女性には辛いかも知れない。
「お二階の座りが空きましたがいかがですか?」
二階なんて行った事がないぞ・・・という事で興味半分に承諾。
入り口脇の階段を上ってみると、広い座敷と小さい座敷が何部屋かありそうだ。
しかし・・・・
座り・・と言ってもちゃぶ台になっている。
しかもコンロまでセットされて・・・。
「どじょうなべ」1400円
「柳川」1200円
「ささがきごぼう」250円
「どじょう汁」300円
「ビール」(アサヒ)580円
「生酒」(大関:300ml)650円
薄い鉄鍋に酔った泥鰌を甘味噌仕立ての味噌汁で煮込んだもの並べた「どじょうなべ」。
これに「ささがきごぼう」と薬味の長葱をのせてコトコトと煮込みつつ食べるのが私流。
(普通は長葱だけで食べるようだが・・・)
「ささがきごぼう」の上に開いた泥鰌をのせ専用の土鍋で煮込み、卵でとじた「柳川」。
これは、山椒をかけて食べるのが普通だが、ついでに私は七味もかけて食べる。
どっちも生きた泥鰌に酒をかけて酔わし、臭みを取ってあるせいで上品な味になる。
(酒をかけると骨が柔らかくなる・・とも言われている)
割り下は甘めだが、これで煮た長葱やゴボウがまた美味しいのだ・・・・
うめぇ・・・・
二年ぶりに食べたどぜう(駒形どぜうの造語)は鰻より淡泊で、
しっかり甘味噌や割り下の味を纏いながらも軽い感じがした。
酒が進む事・・・(^_^;)
薬味の長葱とゴボウを足しながら、泥鰌よりソッチばっかり摘みつつ酒を飲む。
大関なんて酒を飲むのも久しぶりだが、この下町っぽさにはピッタリかもしれない。
木の箱にいっぱい入った長葱を殆ど食べ尽くす勢いで煮ながら、
杯を傾けていて何となくしっくりこない事に気がついた。
そうか・・・
下の座りだったら炭火でコトコトと煮込むから、
こんなに割り下を足す事はないんだなぁ・・・
(泥鰌の味より割り下の味が勝ってしまう)
それに、酔っぱらいが居心地の良さに長居して、
アッチでもコッチでも転倒したりしてうるさい・・・・と(爆)
1801年(徳川11代将軍の時代:享和元年)からの歴史を誇る江戸情緒を楽しむには、
座敷に胡座をかいて座り、床に近い高さから食すのがやっぱり良いと思うし、
ガスによる加熱より炭火であった方が炭の焼ける匂いなどもあってやっぱり良い。
早く食べたいのと興味半分で二階にあがって初めてわかった事だが、
長居のしにくいスタイルもまた、江戸スタイルだ・・・と知った。
浅草寺でお参りをしたら「並木藪」で「ざる」を一枚ひっかけ、
「駒形どぜう」で「どじょうなべ」をつまみに酒を飲んで、
それで足りなければ「神谷バー」で「電気ブラン」を楽しむせっかちなコース。
それは私流の「浅草の楽しみ方」の一つ。
(早い・美味い・安いの三拍子は大好きだ(爆)
時間をかけるのならもう一店食べ物屋を入れて間に寄席を挟むのも良い)
共通するのは、長居無用でハシゴ必至といったスタイル。
色々な味をちょっとずつ楽しみたい人間としては、
一個あたりの量が少なくて安い方がありがたいのだ。
満足して帰る道すがら見つけたのは「まぐろ人」という立ち食い回転寿司屋。
立ち食い・・という事は珍しいが、本来の江戸前的食い方を考えれば理想的。
ここまでセッカチに江戸っぽさで楽しむなら、仕上げに2・3個摘むのも粋ってモノ。
しかし、いつでも「食べる事」が最重要関心事になってしまうのは、
喜ぶべきなんだろうか・・・、それとも悲しむべきなんだろうか・・・(爆)
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