美味い蕎麦ってどんな物だろう・・・・
蕎麦屋の蕎麦は生だから、やっぱり格段の美味さがある。
そしてそれは、その店ならではの汁の味によってまた、大きく膨らまされる物でもある。
子供の頃、蕎麦屋の前を通ると香る独特の汁や天麩羅の匂いが好きで、
大人になったら蕎麦屋で蕎麦を腹一杯食べてみたい・・・といつも想像ばかりしていた。
当時、外食なんてする事は希有で「蕎麦なんて高くて勿体ない」という親の意見で、
蕎麦屋で食べる事はとうとう無かったのだが、ある時お客が来て出前を取る事になった。
伸びるからダメ・・という事で取ってもらえたのは饂飩。
色々な具がのっていたから多分「おかめうどん」だったと思うが、
その汁の美味さと薬味のネギの美味さには感動した。
自宅で乾麺の蕎麦や饂飩玉を買ってきて食べる際にのせる長葱は、何故か辛くて美味しくない。
だからその長葱が何故そんなに美味しいのか理解に苦しんだ。
(種類が違う・・・・と、蕎麦屋の息子に教えてもらったのは中学の頃)
世に数多くの名店がある・・はずだが、実は蕎麦の本当に美味しい店が私には解らない。
これぞ美味い蕎麦・・・という明確な味の分析が、私の中にはできていないのだ。
蕎麦の香り、歯応え、汁の味・・・・。
その中に秀でて凄い物があれば、これさえあれば美味しい・・と位置づけできる。
しかし、あるレベルまでいっていれば、どこの蕎麦も美味しく感じられてしまう・・・のだ。
で、ある時、本当の江戸前の蕎麦が食べたくなって、老舗へ行ってみる事にした。
老舗と言えば、藪蕎麦・・・・という事位は知っていても、その元祖が何処か・・・なんて知らなかった頃、
上野の「藪そば」へ飛び込んでみた事がある。(明治25年から続く老舗ではあるが・・・)
その店は所謂二八蕎麦(蕎麦粉8ツナギ2)で、汁は落語に出てくる程辛い物ではなく、
確かに香りは良い・・・と感じるけど、だから何?・・・と言いたくなる程度の味だった。
勿論、このレベルの蕎麦屋がそうそう無い事は知っているが、
わざわざ東京まで食いに行くまでの味でもない・・・と思う。
しかし、どうやら本家は他にあるらしい事がすぐ解った。
「神田 藪」(明治13年創業)「並木 藪」(大正2年分家)「池之端 藪」(昭和29年分家)である。
この中でもっとも汁が辛い・・と言われるのは
「並木 藪蕎麦」
03-3841-1340
東京都台東区雷門2−11−9
11:30〜19:00(木休)
浅草・雷門から歩いてすぐと聞いて、
辛くて汁を全部つけられない蕎麦を食べに出かけたのは言うまでもない。
(これで、落語のニュアンスもわかるのでは・・・と)
情緒ある店構えは少しばかり初心に厳しく見えるが、所詮は蕎麦屋。
一枚5000円なんて蕎麦が出るわけじゃないだろう・・・と中に入ると、小上がりに座卓が二列、
土間にはテーブル3卓のこじんまりとした店内には、客が相席で座って蕎麦を啜っていた。
私も相席で土間のテーブルに座り「ざる蕎麦」650円をオーダーする。
と目の前の親子が「ざるを十枚」とオーダーするではないか・・・・・・・
一人五枚ずつ食べる・・・のか?
ってそんなに食えるほど量が少ないのか、それとも大食らいなのか・・・
「お待たせしました〜」と出された「ざる蕎麦」を見て笑った。
ざるが逆さに使ってある・・・だけじゃなくて、量がかなり少ない。
これなら、蕎麦好きは五枚食うな・・・・
と思うが、相当に高い蕎麦だな・・・とも思った。
汁は辛い
これは、思いっ切り辛い
醤油のまま?・・・と疑いたくなる程の辛さだ。
確かにこれじゃぁ、ドップリ汁をつけたら食えたもんじゃない。
だから、先だけちょっとつけて食うんだな・・・と納得しながらも、食べにくいのに腹が立ってきた。
蕎麦猪口の下に汁を少しだけ入れて食えば、普通に蕎麦を猪口に突っ込んでも全部付かないで済む・・・
と気づいて、蕎麦猪口に1センチ位だけ汁を入れて食べてみた。
美味いかも・・・・
蕎麦についている水と汁が混ざって丁度良い辛さに調整され、
蕎麦らしい香りが強調されるようにも感じる。
なんだ、こうやって食えば普通に食えるじゃん(^_^)
と上機嫌で食べたのだが如何せん量が少ない。
それじゃぁ・・と「天ざる」1600円をオーダーしてみたら、幾分お湯で薄められた暖かい汁と
芝エビ4本+ししとうの天麩羅が別皿でサーブされた。
だから何?
されど藪??
天麩羅は普通の物。
汁はここでしか無い物。
蕎麦は抜群の美味しさ・・・ではない。
でもそれらのバランスや、浅草で食べる・・・というシチュエーションを考えれば、
たまには食べに来てもいいかなぁ・・と思う位。(次回は三枚食べよう)
「焼き海苔」650円なんて肴メニューもあったが、ここで酒を飲んじゃうには居心地が悪すぎる。
だから、酒を飲むなら「神谷バー」か「駒形どぜう」でも行った方が良さそうだ・・・・。
蕎麦の話を書いてたら、久々に浅草に行きたくなった。
食い物の街でもある浅草は、私にとっては遊園地みたいな物。
明日行く事にしよう〜と思いながら、
「桜庵」で「うざく」を肴に「久保田・千寿」のコップ酒を煽っている・・・俺。
やっぱり蕎麦好き・・・・みたいだな(爆)
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