粉モノには目が無い。
それも安っぽいモノほど大好きだったりする。
だから今でもお好み焼きの屋台を見ると、いてもたってもいられなくなったりする。
反町の駅前に、婆ちゃん二人がやっている屋台のお好み焼き屋があった。
(最近は開いている所を見ていない)
鉄板に薄く解いた小麦粉を伸ばし、キャベツ・天かす・紅生姜・桜エビ等を散らし、
その上にもう一回小麦粉をかけひっくり返して焼く。
焼けたらまたひっくり返してソースを塗って青のりを振ればできあがり・・・
の一番安いお好み焼きが、未だに私にとっての大好物だったりする。
卵を入れたら、黄身のモロモロ感と白身の味がお好み焼きの味を邪魔してしまうから、
見た目は豪華で美味しそうに見える卵入りすらオーダーしない・・・・
という私にとって、若い頃初めて入ったお好み焼き屋はもう許し難い程の失望を与えてくれる場所でもあった。
「豚玉とか烏賊玉とかあるけど、どれがオススメ?」
「こちらが当店自慢スペシャルで、具がいっぱい入ったオススメ品です」
「え・・と、焼くのはここで?」
「はい、この鉄板です」
ふ〜ん、いちいちテーブルで焼いてくれるのかな・・・・
まぁ、自分で焼いてもいいんだけど、具はどうやって出てくるのだろう・・・・
(この時点で、小麦粉と具は別々に出ると思っていた)
「お待たせしました〜スペシャルで〜す」
お〜い、具だけ持ってきてどうすんだよ〜?
(ボールにたっぷり入った具を見て、
そのボールの底に解き小麦粉がある事が想像できないでいた)
「え・・・と、どうやって焼けば・・・」
「先に一番上の肉を鉄板で焼いて、その間にスプーンでよ〜く混ぜて
焼けた肉の上にあけてお焼きください。
油はこちらでひいて、ソースは甘いのがコッチ、辛いのがコッチですのでお好みでどうぞ」
えっ・・・混ぜる?
混ぜるってもしかして・・・・
と悩んでいるうちに店員は行ってしまった。
スプーンでボールの具を押し分けててみると、確かに底の方にはタネが入っている。
それもかなり少量に見える。
生卵と小麦粉の量が同じか?と思う程に見えるが、この店はこういう流儀らしい。
「郷に入らば郷に従え」という言葉もあるのだから・・と言われた通りに混ぜてみた。
肉が焼ける良い匂いが漂いだした頃、混ぜてドロドロになった具の固まりを肉の上にあける。
これは違う・・・
こんなモノ、お好み焼きじゃない・・・・
こんな事なら、先に小麦粉だけ流しちゃってから具を上にのせた方がまだましかも・・・
いや・・・そうしたら具の上にもう一回かけるタネが無いじゃないか・・・
それじゃ小麦粉の香ばしさが楽しめないからダメじゃん(;_;)
こんもりとした、具も小麦粉も卵も混ざり合った「お好み焼き」と言われる物体は、
一度は入ってみたい・・と思い込んで飛び込んだ勇気に水をかけるようなモノに見える。
果たして出来上がって食べてみても、ソースと青のりとマヨネーズに味付けられた
何かの焼き物といった味しかしない。(それまでマヨネーズなんてかけた事も無かった)
こんなモノ、お好み焼きじゃねぇぇぇぇ!
と怒る程では無いにしても、私の中では「お好み焼き」ではない粉モノの一つとして
カテゴライズされるべき食べ物だと考えた。
自分で焼くためには、具を全部混ぜてしまった方が仕上がりが一定するのは解るが、
小麦粉の香ばしさや具の美味しさ等は、このレシピでは感じにくい。
だからその後は、自分で焼くタイプのお好み焼きに高い金を払う感情は盛り上がる事はなかった。
「ねぇ、お好み焼き食べに行かない?」
「行かない」
「え〜どうしてぇ? 粉モノ好きじゃん、アンタ」
「あの屋台の安っちぃのが好きなんであって、自分で焼くヤツは好きじゃない」
「大阪のヤツはちゃんと店で焼いてくれるんだよ?」
「え? それ美味い? 大阪のお好み焼きって、本場もん??」
「あ〜食べた事無いんだ〜」
「・・・・無い・・」
「じゃ行こう〜」
無理矢理連れて行かれたのは「ぼてじゅう」という名前の大阪風お好み焼きのチェーン店だった。
鉄板の前に座り、店の人が手際よく焼いてくれるスタイルはそれだけでも楽しい。
ビールを飲みながら、目の前で焼けたばかりのお好み焼きを摘むと、
具をごちゃ混ぜにしているはずなのに何故か美味しく感じるのだった。
自分で焼かない・・という事と、大阪風という事が食欲のアンテナをくすぐったのは事実だが、
そこで食べた「モダン焼き」を初めとする大阪風お好み焼きは、違う食べ物としてのお好み焼きの
スタンダードの地位に登りつめたのは言うまでもない。
無性に粉モノが食べたくなると、今は反町のお好み焼きも出す飲み屋で広島風をオーダーする。
ソバを入れたお好み焼きを考えると広島風の方が好きになるのだが、
小麦粉の少なさから粉モノと呼んでもいいのやら・・・(^_^;)
関西人は粉モノに対しては中々の拘りがある・・・と感じているが、
お好みに関しては広島人も負けていないらしく、
「マヨネーズなんて広島じゃ使わないよ!」某店で怒られた事もある。
何故広島風が好きか・・と言えば、その作り方。
薄くタネを伸ばし、山盛りのキャベツをのせ、モロモロの具をのせたらまたタネをかけてひっくり返す。
(店によっては重しをのせて圧力をかける事も。 もちろんここにソバも入れる)
焼き上がったらひっくり返し、卵を薄く焼いて具の方からその上に・・・。
要は小麦粉と卵のサンドイッチ状態となるのだが、
作ってもらう好きなタイプのお好み焼きとしては贅沢かつ美味しい、理想的なモノなのだ。
で、贅沢を言えば、タネの量が多めのしっかりとしたタイプが良いのだが、
そういうお好み焼きを出す店が実はある。
「かたつむり」
0467-23-2528
鎌倉市材木座5-8-19
材木座海岸の前を走る道沿いにあるこの店は、アットホームな雰囲気と海辺のお洒落な店造りが素敵だが、
出す料理はしっかり広島風お好み焼き。
抜群な味ではない・・・と言うか、お好み焼きってソースが命だったりするから「おたふくソース」の味は
ある意味どこでも同じ味付けになってしまうのだが、美味しいと感じさせるから腕がいいのだろう。
海岸の道からは入れないため、辿り着くにはコツがいる。
(店が見えてるから探せば大丈夫:但し、駐車スペースは期待できない)
海を見ながらビールと、目の前で焼いてもらったお好み焼きが抜群・・・・・で、
たまに無性に行きたくなる店の一つと言えるのだが・・・・
いや・・・
実は、お好み焼きが食べたくなったのさ
今日は反町の「宮地亭」でも行く事にしよう(^_^;)
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