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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

目眩(3)

朝、目が覚めると、世界は回っていなかった。

しかし、酒に酔ったような状態で、すこぶる不快ではある。

医者に行った方が良さそうだ・・・。
しかし、朝の電車に揺られて行く元気は無い。
ましてこのフラフラした感じで、病院まで歩いていく勇気もない・・・。
(いつまた、あの症状が起きるか解らない)

近場の総合病院は2つ。

済生会神奈川県病院
けいゆう病院(旧 警友病院)

済生会は救急で運び込まれた経験があるが、施設は古く患者は多く、
骨折して激痛に耐えているのに廊下のベンチに2時間近く放置された記憶から、チョイスする気は起きない。
(随分昔の話。 今はどうだかわからないが、そういう形でお世話になりたくない)

じゃ、けいゆうか・・・と思うが、これまた桜木町からかなり歩く必要がある。

でもまぁ、駅前からタクシーに乗ってしまえばいいわけで、
医者嫌いの感情がそういう難癖を頭の中に投げかけているだけの事。

とにかく、そのまま拉致されてもいいように・・・とシャワーを浴び、
着替えをしてから会社に連絡をいれようとした。


「おはよう。 様子はどう?
 今、向かってるから・・・・
 病院へ連れていくから・・・・・」


突然鳴った携帯から友達の声。
ありがたい申し出に、甘えさせてもらう事にした。


「昨日、『医者行けよ』って言ったけど、
 その後歩けないヤツに行けって言うのは無責任だと思ってね・・・」


そういう考え方ができるって凄い事。
心配しても行動は控える人が普通で、本人からの依頼があってから動ける人だって少数なのだ。

ちょっと強引すぎるアプローチは私の性格を理解しての事だから、
感謝以外の気持なんてこれっぽっちもなかった。
(昨晩も「夜間救急センターへ連れて行く・・」と申し出てくれた友人がいたが、
 翌日の様子を見て通院するつもりだったので丁重に断っていた。)

受付カウンターで症状を説明すると、医師でも何でもない事務員が耳鼻科での受診を決めてくれた。

オイオイ・・・、何か重大なトラブルが起きている可能性がある患者の最初のアプローチを、
受付カウンターで決めてしまっていいのかい・・・・・?

と不安&不満を持ったが、でもここは総合病院。
何かマズイ事を見つければ、担当すべき専門家に引き渡されるだろう・・・・


何カ所かのカウンターを経由させられ、やっと耳鼻科にたどり着いたら、
待合いスペースのイスは満席となっていた。

こっちは歩くのも苦痛なので座りたかったのだが、先客達にどいてもらうわけにもいかない。

しばし、壁に寄りかかって順番を待っていたが、
呼ばれる患者達を見ていてある事に気がついた。

患者に大して複数の付き添いが居る・・・という事に。

老齢の男性患者に、その妻と家族が3人。
幼児の患者に母と祖母&祖父。

ウェイティング用のイスは10人分位しかないのに、そんなに座ってたら患者が座れねぇだろ(-_-メ)
と思う私にも、友人が一人付き添いで来ている・・・・・。

けいゆう病院は予約もコンピュータ管理で、そんなに待ち時間は無いように設定されているのだが、
こうやって初診(無予約)で入る患者もいるだろうから、その無神経さに少しばかり腹が立った。
(付き添いは一人で十分。 複数の場合はコーヒーショップとかで時間をつぶせよ!)


「はい、じゃこの指見て〜
 あぁ・・・目眩、ありますねぇ・・・・
 じゃ、ちょっと頭振りますよ〜」

医者は私の頭を持って、どっかの国の飲み屋よろしくブンブンと振り回す。
(酒飲んだ後、店の人が頭をガシガシと振り回してくれる国があるらしい。
 =少量の酒でも気持ちよく酔える???らしい)


「え〜と、歩けなかったら入院して点滴ですねぇ・・・・
 どっちにしても頭の写真撮って、聴力検査してから判断しましょう。
 ・・・と歩けます・・よね?」

「えぇ・・・ゆっくりなら」


ストレス性の耳鳴り&目眩と診断され、脳血管障害やメニエール等の心配は杞憂に終わった。


「2週間分薬をだしますので、薬を飲んで安静にしていてください。」

「え・・・と、してはいけない事とか・・はありますか?」

「会社は休めたら・・・休んだ方が良いですけど、無理なんですよね?」

「えぇ・・・」

「無理しないように。 睡眠不足には気を付けて。
 それとお酒は飲んでも良いですよ。」

「へ?」

「お酒に影響を受ける薬ではないですから・・・」


そう言って医師はニコッと笑った。

心療内科が出すような薬ではない・・という事と、ストレスをこれ以上ためないように・・・
というメッセージが、その笑顔にはこめられていた。


目眩、耳鳴り、難聴等をストレスから誘発する人は多いと聞いているが、
その日もスーツを着たサラリーマンが、私とほぼ同じ様な症状で受診しているのを見て納得する。

意志でコントロールしくなると、身体がこうやってブレーキを踏むんだろうな・・・・と考えた。


目眩がしても、身体は何ともないから腹は空く。

で、友人へのお礼も含めるつもりで、今や幻と化しつつある「ハングリータイガー」に行こうと提案した。


「ハングリータイガー・保土ヶ谷店」
 045-333-7023
 横浜市保土ヶ谷区星川3−23−13
 11:00〜23:00

昭和44年9月に一号店としてオープンしたこの店の他、
相鉄ジョイナスと青葉台の3店舗だけになってしまったハングリータイガーは、
O-157と狂牛病のダブルパンチによる被害を被り「北前そば高田屋」「暖中」(中華)「とり鉄」(焼鳥)
等の事業展開をしている(株)タスコシステムの傘下に入ったのは去年の事だった。

火をあまり通さない調理法のために起きた起きたトラブルの結果、
きっちり中まで火が通ったものしか出さなくなってから味は激変してから、
大手のFC店舗運営会社の経営となるまでにはそう時間はかからなかったように記憶している。

それでも、あの鉄板で仕上げるハンバーグの匂いや脂とソ−スの飛び跳ねる音は、
何ヶ月に一回かの割合で無性に味わいたくなるものなのだ。
(だから「ブロンズパロット」のハンバーグにも感激した)


横浜新道からよく見える場所に建っていながら、辿り着きにくい店としても有名だった一号店。
数が激減してしまってもそこに有り続けている事に気づいてから、一度は訪れよう・・と思っていた。

こんな日にしか、行くのに少しばかり時間を必要とする店には行けない・・・という事で、彼もすぐ同意。

相変わらずの音と匂いが充満する店内へ、よろつく足を引きずりながら飛び込んだ。


フィレステーキ&ハンバーグのデイナーセット 3050円
(ハンバーグ&フィレステーキ スープ サラダ ライス コーヒー)


久々に訪れたのだから、どこまで変化したのか知りたいじゃないか。
だから、ステーキとハンバーグの両方を味わえるセットを二人してオーダーした(^_^;)


サービスは一切変わっていない。
焼けた鉄板の上で跳ねる脂をナプキンで避けるのも昔のまま。
ジュワ〜という音と匂いも相変わらずで、二人して思わずニンマリ・・・
 
もう一年以上、これを味わっていなかったのだから、もう我慢できそうにない(爆)

何時までも跳ね続ける脂に少し苛立ちつつハンバーグに切れ目を入れる・・と、
確かに中までしっかり火が入っている・・・。

じゃ、ステーキは?
まさかステーキもウェルダンで焼かれているのか??

と思ってナイフを入れると、さすがにこっちはミディアム位の焼き方になっていた。


「懐かしいな〜」

「やっぱ、この味だよな〜」


二人して、忘れかけていた味の記憶を取り戻し、
いつもならオーバーカロリーだろう・・・と尻込みするような量を、
あっさりと食べ尽くしてしまった。

やっぱり、昔のように半生の方が美味いよなぁ・・・・と正直思う。

でも、やっぱりここの味は、ここでしか無いモノのように感じた。


店の窓から、色づいた木々と曇りがちな空が見えた。
それを見ていて、不思議な感触に襲われた。

どっかで、こんな風景・・・・いや、こんな空気を見た事がある・・・・


「なんかさぁ・・・、いつもと違うように見えるだよね」

「それって、状態(身体の)が違うから、そう感じるんじゃない?」

「そうだと思うけど、見ている所が違うみたいだ・・・」


そうだ・・・・
随分昔に、足の骨を折って2ヶ月近く休んだ時、
こんな風景を見ていたような気がする・・・・・


嫌でも、仕事をする事ができなくて、外にも出る事が難しくて、
家の窓から外を見て考え事をしていた時、
こんな風に空気を見つめていた事を、思い出す。

こんな見方が随分前にできていたのに、それすら忘れかけていたんだ・・・・と気づいて、
かなりのストレスに追いまくられていた事を理解した。


「一生懸命って言い聞かせて、自分の心削って頑張って、
 その結果、身体を壊してしまったら意味ないね・・・・・」

「現場離れて長すぎるんじゃない?」

「そうだね・・・ 今まで最長でも2年半が、同一セクションで働いた長さだから、
 6年を超える内勤は色々な意味で厳しいや・・・ね」

「現場、帰ってきなよ」

「帰れないよ」

「んじゃ、ケツまくってさ(^_^)」


オイオイ、まだそこまで無責任になれないよ・・・・
と、勝手に責任感じる事もないのかなぁ・・・・・


色々な走り方を考え、コース取りを見直す時期が来たようにも思う。

変な看板背負って、自ら望まない走り方で意地を張るのもバカらしい。

看板は確かにありがたいものであって、有名で力あるモノならその恩恵も大きいが、
その看板を守るために自らを傷つける事も、その大きさ強さに比例して返ってくる。

ちょっとばかり望まない立場や仕事に浸りすぎた・・・と正直思うから、
身体が強引にブレーキをかける事になったのだろう。

 
 
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