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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

昔ながらの味

昔ながらの味・・・と聞けば、頑固に味を守っている・・といったイメージがあって、
きっと今にない美味しさがあるんじゃないか・・と想像させるモノ。

しかし、それが必ずしもそうでは無い事も、実はよく知っていたりする。

例えば、56年の歴史を誇る「センターグリル」の料理は、
確かにその時代の洋食はこうだったんだろ・・と想像させてくれる味を持っているが、
その半端じゃない量と昔ながらの味付けは、私にとっては素晴らしい・・とは言い難い。

その頃はこのスパイスや調味料しかなかったんだろうけど、今はもっと良くて安い物があるじゃないか・・・
と叫びたくなるような味付けをして「昔ながらの味」と言い切ってしまう飲食店は、横浜には多くあるように思う。

だから敢えて古そうな店に入ろうとする気はさらさら無く、
評判の高い名店であってもリサーチしてから突撃するのはもう、当たり前のクセになっていた。


「梅香亭」
 045-681-4870
 横浜市中区相生町1−1
 11:00〜21:00 日・祝休

一時、ハヤシライスがブームになった頃やたら紹介された横浜の古い洋食屋。
大正12年にオープンし、旅行好きの女将が取り仕切っているって事と、
5時間かけて作る「ハヤシライス」はあまりにも有名だった。

大正からの営業で、昔ながらの味付け・・・
これぞ洋食と言われても、何も進歩していないって事じゃないのか?

と勘ぐった私としては、自分の考え方に沿って、この店には行く事は一度もなかった・・・

が、今日あてにしていた店が「板前風邪のために休業」との札を出して閉まっていたので、
ついにこの店に入ってしまった。

確かに古い店構え。

よくぞこのままの形で生き長らえているものだ・・とさえ思う。(関内って場所で)
ばぁちゃんが頑張っているのか・・・と思い込んでいたのだが、出迎えたのはオヤジとオバサンだった。

どちらも手持ち無沙汰で店のソファーに座ってテレビを見てくつろいでいたのだが、
私の姿をみて慌てて立ち上がった。

こりゃ・・・ダメかも・・・
商売する気が無いのかも・・・・

客席に店の人が座っている店は、基本的に好きじゃない。
何時客が来ても良いような態勢ではないって事だから、料理やサービスにも期待できないと思うからだ。


店内は古いソファーが並び、テーブルは異様に小さくて居心地が悪い。
テレビからはNHKが流れ、石油ストーブが2個ついている。

メニューは張り紙だけらしく、品数も想像以上に少ない。

だが、こっちとしては評判高き「ハヤシライス」が食べられれば良いので、気にしない(^_^;)


「え〜と、ビール一本(大瓶650円)と野菜サラダ(450円)、
 それとハヤシライス(800円)をお願いします」

「はい。
 ・・・・・(厨房に向かって)サラダ!ハヤシ!それだけ!!」


それだけで悪かったネ

初めての店じゃ料理の量も解らないし、
それ以外になにか料理でも食べなきゃいけないって事でもないだろ(-_-メ)

少し磨りガラスのようになりつつあるコップと、ビールを出してくれたオヤジは
「こっちの席の方がテレビ、良く見えますよ」とほざいた。

俺は、飯を食いに来たの。
テレビ見に来たんじゃないんだよ・・・・


のっけから不機嫌になってしまったが、空腹は苛立ちを呼ぶもの。
まずはビールで気分を落ち着けよう・・・とグイグイ飲む。

しかし、一人で大瓶を飲むのは、何げに辛い・・・(飽きちゃうって事)


つまみ代わりに頼んだ「野菜サラダ」が出てきたが、ソレを見て驚いた。

キャベツと胡瓜とリンゴを、2×3センチほどの大きさに切り、
マヨネーズで和えてそこの上から「アジシオ」をかけてある。

化学調味料と塩化ナトリウムの結晶がカリカリして良い歯ごたえ・・・・なワケはない!

確かに、こうやって何にでも科学調味料をかける時代はあった。
頭が良くなる・・・という風評もあってかなり高価だった時代でも
半ば贅沢と感じつつ食卓でも調理場でもバンバン使われていたのを思い出すが、
これを「昔ながらの味」と言うのだろうか・・・

この時点で既に戦闘意欲を失っていたが、オーダーしてしまったのだから仕方ない。
あまりに有名な「ハヤシライス」の登場を心待ちにした。
多分、コレよりはマシだろう・・・・・と。

「お待たせしました〜」

普通のカレー皿より浅い皿に、脂身の多い薄い肉と玉葱がドッチャリのった「ハヤシライス」のご登場。

色は焦げ茶色でよく煮込まれている。
玉葱の甘さが出ているが、脂身が多いわりには脂っこくない。

酸っぱさが全面に出るでなくバランスが良い・・とも思えるが、
あの野菜サラダの後だからか、化学調味料の味が感じられてならない。

800円という単価は、その煮込み時間の分だと理解できても、
材料や技にどれだけ反映されているかは想像できない味・・・と言えばいいだろうか。

多分、昭和40年代にでも食べれば、凄く美味しいと感じたろう。

あの頃「ハヤシライス」と言えば、
酸っぱくて味が濃くてカレー粉を入れ忘れたカレーの様な物と思っていた。

多分、肉なんて牛を使うわけもなく、デミグラスソースだってどんな作り方をしていたか解らない。
だから当時この味なら、絶賛できたろう・・・と思うのだ。

しかし・・・・
何の進歩もなく(と言っても、昔からこの店で食べていたわけじゃないから解らないが)
もしくは時代の変化に追いつけずにいる事を良しとする感覚は、
接客態度や店内の調度等にしっかりと見て取れる。

皿を二つ並べたら精一杯の奥行きのテーブルは、沈むソファーには高すぎてしかも華奢。
これで料理を食べる事を「昔からこうですから」とそのままにしておく事は理解できない。

これじゃ「食べ終わったら、とっとと出て行け」と言っているように見えるわけで、
(たくさん料理を頼んでもテーブルにのせられない事も、そう感じさせる理由のひとつ)
客の立場としては不愉快になる人もいる・・・と思わせる。


もう一回食べに来る?
と尋ねられたら、かなり悩むだろう。

 
 
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